「AEDを女性に使うとセクハラになる!」「胸毛は電極パッドで毟り取る!」「映画のようにAEDを使えば生き返る!」「使うには資格が必要だ!」といった誤解が多いのがAEDという機器。
今回の記事は、そんなよくある間違いに答えます。
1. AEDでいう成人は20歳以上を指す
誤解です。
AEDは対象の年齢によって、体に貼る電極パッドやモードを切り替えて使いますが、成人用パッドや成人用モードの対象は小学生以上を指し、0歳~およそ6歳未満の未就学児には小児用パッドや小児用モードを使います。
また、小学生なのか未就学児なのか判断に迷った場合は、成人用を使います。未就学児に対して、小児用のモードやパッドがない場合は、成人用を使っても問題ありません。
AEDと年齢については、「倒れた人の年齢で心肺蘇生の方法は違う」年齢別の対応表作りましたの記事で詳しく解説しています。
2. 妊婦へはAEDを使用してはいけない
誤解です。
妊婦にも使用できます。お腹の赤ちゃんを心配して、ためらってしまうかもしれませんが、妊婦の心臓がけいれん(心室細動など)していた場合、AEDによる電気ショックが必要です。
妊婦が心停止しているということは、赤ちゃんへの酸素供給も止まっている可能性が考えられるので、妊婦にAEDを使用することは胎児の救命にも繋がります。
3. 胸毛が濃い場合、予備用の電極パッドのシートで剥ぎ取る
誤解です。
胸毛は剃りましょう。もしかしたら、講習などで聞いたことがあるかもしれませんが、これは予備の電極パッドが入っている前提で話しています。しかし、実際のところ予備がないAEDも多いです。
電極パッドは一度限りの使い捨てです。一度貼ったら粘着性は弱まりますし、一個しかない電極パッドをダメにしてしまうと電気ショックができません。
また、電極パッドは除毛することを目的に作られていませんから、脱毛剤のように脱毛できるものではないことを覚えておきましょう。
こちらも販売店などによりますが、AEDにはレスキューセット(または、救急セット)と呼ばれる救命に必要な最低限のキットが入っている場合があります。この中にはカミソリが入っていますので、カミソリで除毛しましょう。
レスキューセットの詳しい内容については、AEDのレスキューセットって何? AEDの付属品を知ろう。の記事で解説しています。
4. どんな心停止でも、AEDは有効である
誤解です。
心停止には4種類あり、そのうちの2種類でしかAEDは有効ではありません。電気ショックが有効な2種類は心室細動と心室頻拍です。
簡単にいうと、心臓がけいれんしている時にAEDが有効です。完全に止まった心臓にはAEDの電気ショックは流れません。(「電気ショックは不要です」と音声が流れるのでその後は胸骨圧迫などの心肺蘇生は続けましょう)
非医療従事者が、電気ショックの必要性の有無を判断することは、非常に困難なので、AEDの指示に従って判断します。
AEDは、「自動体外式除細動器」と呼ばれます。文字にすると分かりやすいですが、自動で判断して体の外から、けいれん(細動)を取り除く機械です。
AEDの心停止の適応については、AEDが適応可能な症状とは。心電図で見る4種類の心停止。の記事で詳しく解説しています。
5. AEDの使用には、資格や講習が必要である
誤解です。
資格は不要です。AEDを製造したり、販売したり、修理したりする業者には資格が必要ですが、使う人に資格はいりません。
医師や看護師だけが使えるものではなく、一般市民も使えます。
初めて使用する人でも使えるようにAEDは音声でガイダンスしてくれますが、よりスムーズに使えるように、消防署などの救命講習を受けておくことをおすすめします。
6. AEDのメンテナンスはすごく面倒だ
思っているほどではありません。
「医療機器だし難しそう」「なんとなく怖い」といったイメージを持つかもしれませんが、メンテナンスの内容は簡単で、日常点検と期限管理です。
AEDにはセルフテスト機能が付いていて、1日に1回「どこか壊れていないかな?」とAED自身がチェックしています。この結果がランプや液晶に表示されるのでその確認が日常点検です。
AEDの電極パッドやバッテリーには期限があるので、それらの期限を確認するのが期限管理になります。
最近のAEDは、期限管理の機能もついていますし、少し古いAEDであっても期限管理のタグがAEDに括りつけてありますので、その期限を確認して交換するだけです。これらをサポートしてくれる機能や、販売店もありますので購入の際に気になった場合は相談しましょう。
AEDのメンテナンスについては、厚生労働省よりお願いが呼びかけられています。詳細は、厚生労働省ホームページ内のAEDを点検しましょう!をご確認ください。
7. AEDは屋外に設置できる
誤解です。
AEDは暑さ・寒さに弱いです。特に寒さに弱く、現行(2019年11月現在)のAEDで保管適正温度は通常0度 ~ 50度の範囲が一般的で、氷点下に強いAEDでも-5度が最高対応幅です。
そのため、屋外に設置を考えている場合は、AEDを外気温から守るための工夫が必要で、屋外用の収納ケースなどに入れて保管する必要があります。
AEDの屋外への設置については、【屋外設置】AEDを屋外に設置するには。問題点と設置方法のまとめ。の記事で詳しく解説しています。
8. AEDを女性に使ってセクハラで訴えられた人がいる
デマです。
弁護士に調べてもらった限り、セクハラ(痴漢)で訴えられた人はいませんでした。セクハラというより、痴漢(強制わいせつ罪)になりますが、この罪にあたるかは性的意図があるかどうかが重要となります。救命目的で女性に触れるわけですから、強制わいせつとは認定されないというのが弁護士の見解です。
訴えられただけでも、個人としてデメリットになることが多いと思います。よりよい制度や正しい知識が広まっていくことを望みます。
この件に関しての弁護士へのインタビュー記事は【弁護士に聞いてみた】AEDを使ってセクハラになる可能性ってありますか?になります。ぜひ、あわせてお読みいただければと思います。
9. AEDはいつまでも使える
誤解です。
耐用期間(寿命)が機種ごとにあります。現在、耐用期間は7年、または8年の機種が多いですが、その期間を過ぎたらAEDを交換しましょう。
よく「消耗品を交換していれば、ずっと使えるんだよね? ここだけの話にするから教えてよ。」と聞かれますが、部品が経年劣化していくことを踏まえて耐用期間が決まっています。
どこかが壊れていた場合、いざという時に正常な除細動(電気ショック)が行えない可能性があります。AEDは命に関わる医療機器です。消耗品の期限管理と同様に、本体の耐用期間を過ぎたら廃棄しましょう。
AEDコムでは、無料下取りをしてAEDを代理で廃棄しています。(※)買い換えをご検討の場合には、AEDコム販売サイトからお気軽にお問い合わせください。※医療機関・消防機関は下取りサービス対象外となります。
AEDの担当者の方は、あわせてAEDの管理・廃棄方法のまとめ。もしもあなたがAED担当者になったら? の記事もお読みいただけたらと思います。AEDの管理方法についても詳しく解説しています。
10. AEDの相場はおよそ50万円だ
誤解です。
今は昔ほど高くはありません。10年前くらいは、なかなかに高額でした。70万円くらいすると聞いたこともありましたが、最近の相場は20万~30万円です。
まだまだ安いとはいえませんが、この価格帯で耐用期間まで使うことができる機種や新しいサービスが出てきています。
また、楽天やamazonなどのECモールや、台数による割引やキャンペーンなども販売店によっては行っていますので、相談してみるのがいいでしょう。
まとめ
AEDをいざ使う、または設置しようとなったときには正しい知識をしっかりと確認しましょう。そうすることで、自信を持っていざという時にも行動できるようになるかと思います。
AEDに関して、「これはどうなの?」、「あれ? これって合ってる?」など質問や疑問に思うことがありましたら、調べてご回答いたしますので、こちらよりお問い合わせいただけたらと思います。
参考文献
- 「JRC蘇生ガイドライン2015」監修;一般社団法人日本蘇生協議会・発行:株式会社医学書院(2016年2月15日発行第1版第1刷)
- 「救急蘇生法の指針2015(市民用・解説編)」株式会社 へるす出版(2016年3月31日)
- 「AEDを点検しましょう!」厚生労働省(平成30年10月23日時点)