学校で心停止になった子ども232人を対象に、救急隊が到着する前に、AEDを使用された割合を調査したところ、小・中学校で男女の大きな差はなかったものの、男子高校生に比べて女子高生の使用割合が約30ポイント低い結果がでました。
研究グループは「女子高校生にAEDを使う際、一定の抵抗感があったのではないか?」という分析をしています。
このニュースがNHKで放送され、ネットでは、さまざまなコメントがあがっています。AEDガイドでも、女性に対するAEDの知識や配慮の記事については書いてきましたが、救命行為に訴訟リスクがないことが広まることを願って、ツイートや異性に関する配慮などをまとめてみました。
参照:女性だとAEDが使われない? 救命処置の男女差(NHK NWES WEB)、女性だとAEDが使われない? 救命処置の男女差(NHK生活情報ブログ)
みんなどう思ってる?
※否定的なツイートやコメントは本人が分からない形で掲載します。
女性へのAED使用をためらうの、当たり前の話なんだよな。
助けても訴訟されたりするリスクがあるなら、助けない方がはるかにノーリスクなんだよね。
手順を間違えたら訴えられる。
第三者が撮影して謎の社会的制裁くらう可能性がある。
非常に考えさせられるコメントです。非日常な状況、ましてや知らない人、さらに異性となると躊躇ってしまう気持ちは分かります。
性的意図がない場合、異性を助けて訴訟されることはありません。ただ、訴訟リスクがないにしても、他人を助けるメリットはないかもしれません。
時間を取られたり、面白がって、周りから見られるかもしれません。その場に倒れた人がいます。周りに貴方しかいなければ死んでしまうかもしれません。
でも、どうか人命を優先して欲しい。本記事は、手助けをしたいけど、ちょっと心配という方に向けて書いています。
1. AEDでセクハラはデマです。
AEDを使ってセクハラ(痴漢)はデマです。弁護士にインタビューした「【弁護士に聞いてみた】AEDを使ってセクハラになる可能性ってありますか?」の記事で詳しく書いています。
手順を間違えたら訴えられる?
悪意や重大な過失がなければ、まずありません。
民法はあえて「重大な」過失に限定していますから、単に使い方を間違えてしまっただけでは重大な過失にはあたらないというのが弁護士の見解です。
こちらも、「【弁護士に聞いてみた】AEDを使ってもし人が亡くなったら罪になりますか?」で詳しく書いています。
2. 躊躇わずにAEDと胸骨圧迫を。
心停止から1分間で、約7%-10%助かる可能性が下がります。さらに社会復帰率も下がります。
呼吸が正常でなければ、すぐに胸骨圧(心臓マッサージ)を始めて、AEDを使いましょう。とくに、胸骨圧迫は中断時間をなるべく最小にするように心がけましょう。
※HolmbergM:Effect of bystander cardiopulmonary resuscitation in out-of-hospital cardiac arrest patientsin Sweden.Rescusciation 2000:47(1):59-70より引用・改変
3. 周りの目が気になる。
周囲に助けを求め、救命行為をしていることを伝えましょう。
救命の手順では、いきなり服を脱がしたり、AEDを使用したりはしません。まずは声掛けをして、意識や呼吸の確認、大声で助けを呼んで、AEDの手配と119番通報です。
ポイントとして、119番通報をすると救急車の要請だけでなく、「助言や指導」を仰ぐことができます。
救命の流れについては、「【解説】一次救命処置の手順。心肺蘇生法ガイドライン2015版 」で詳しく書いています。
4. 助けを呼んで複数人で救助しましょう。
自分ができなくても助けを呼びましょう。119番通報やAEDを取りにいきましょう。
異性や知らない人の服を脱がす行為に、抵抗感はあると思います。でも、医療関係者が近くにいるかもしれません。手伝ってくれる女性がいるかもしれません。人垣を作ってくれるかもしれません。
また、一人で胸骨圧迫を続けるのは、非常に体力を消耗します。圧迫が弱くなったり、テンポが遅くなりますので、頻繁な交代(1-2分目安)で心肺蘇生を続けながら救急隊の到着を待ちましょう。
5. 女性への配慮を確認しよう。
動画の中で、AED財団の理事でもある京都大学の石見教授もおっしゃっていましたが、
- 電極パッドを貼るとき、服は全部脱がさなくても大丈夫です。
- ブラジャーを避ければ、取らなくて大丈夫です。(一部のAEDを除く:構造上、胸全体に貼る必要があるAEDがあります)
- 電極パッドを貼ったあと、服を掛けても大丈夫です。
そのほかにも、人垣を作ってプライバシーを守るなどできることがあります。
最後にその他のツイートを記載します。
前向きなツイートもいくつか掲載しておきます。
※ツイッターのサービス利用規約に則ってAPIを利用しています。転載させていただいたユーザー様、転載の削除、修正のご要望などありましたら、こちらまでご連絡ください。
男性が戸惑ってしまうのは分からなくもない。だからあえて声を上げようとおもいます。「私!!!女性ですが!!胸を見られるより!!!命が大事なので!倒れたら迷うことなくAED使っちゃってください!!服、破ってくれていいです!!」
同感の女性RTお願いします。
— クソ千彬🤪@マイクラ実況してる (@chiakithistle) May 6, 2019
AEDの講習を受けた際、講師の先生がわいせつ罪のデマについて触れて「ためらったら、その人は死ぬんです。ためらわないでください。」と話されて、自分の覚悟ができた思い出があります。AED講習は結構頻繁に開催されいるので、おすすめです。
— ひとだま (@montediofan) May 6, 2019
女性型のAED練習人形があればいいのに。乳房があるので、正直どこへパッドを貼っていいか悩むし、心臓マッサージもどこを押していいか分からない。
と同時に着衣人形でも訓練させて欲しいです。服を脱がす事に抵抗があるので。
— まめる (@4tune968) May 6, 2019
いやほんとAEDの講習は小さいうちからやろうよ。羞恥心みたいなのが少ないうちから始めれば大分ハードル下がる。
— あれるけあ (@achansan) May 7, 2019
救急車呼んでくれた人、胸骨圧迫してくれた人、AED探しに行って使ってくれた人など、助けてくれた人をきちんとねぎらって、守ってあげる社会にしましょうよ。
そういう社会を作りましょうよ。— たじ (@taji1972) May 7, 2019
まとめ
有事の際、ほとんどの人が初めて経験するであろう緊迫した状態で、どこまで異性への配慮ができるかは難しいと思います。ですから人命が第一です。ただ、AEDを使ってセクハラになるのはデマであること。救命行為には訴訟のリスクがない(性的意図や、悪意、重大な過失がなければない)ことを、みんなが知っていて、誰もが助け合える世の中になればと願っています。
最後に、救命現場を写真に撮る行為は、迷惑防止条例違反や肖像権の侵害にあたる可能性があります。やめましょう。ダメ絶対。
参照・参考文献
- 「救急蘇生法の指針2015(市民用・解説編)」株式会社 へるす出版(2016年3月31日)
- 「女性への使用に抵抗感? 京大調査」NHKニュース