厚生労働省の統計報告によると主な死因第2位が心臓病(心疾患)です(※)。その中でも急性心筋梗塞になった場合、3割から4割の人は心室細動を起こし、心臓突然死するといわれています。
心筋梗塞は映画やドラマで苦しみながら自分の胸をわし掴みにし倒れ込むような、いわゆる心臓発作といったイメージが分かりやすいかと思います。もし突然、胸をギュっと締め付けられる強い痛みを感じた場合は、すぐに救急車を呼び治療を受けましょう。当記事は心筋梗塞についてまとめています。
※参考:平成29年度人口動態統計特殊報告 平成27年都道府県別年齢調整死亡率の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/other/15sibou/dl/12.pdf
急な胸の痛みに不安を感じた方、この痛みってもしかして? と心配になられた方に、心筋梗塞がどんな病気か、前段階である狭心症にも触れながら、症状や原因などを分かりやすく書いています。
1. 心筋梗塞とは
「心筋梗塞」とは、心臓への血流が止まることで起きる病気です。具体的には、心臓に血液を送る「冠動脈」が完全に詰まってしまい、心筋に血液が供給されなくなります。
血液には栄養や酸素が含まれていますから、心筋に血液が供給されなくなることで、だんだんと心筋が壊死していき心筋梗塞になります。
筋肉は電気信号で動きますので、壊死すると電気信号が伝わらなくなり、心臓のポンプする動きが行われなくなり、死に至ります。
2. 心筋梗塞の症状
心筋梗塞をおこした時の特徴的な症状としては、「このまま死んでしまうのではないか?」と錯覚するような強い胸の痛みが突然起こり、それが長時間続く点です。
痛みの種類は、「胸が締め付けられる」、「胸が焼ける」、「ナイフで刺されたような」といった言葉で表現されるが多く、胸痛以外にもいくつかの症状があります。
心筋梗塞でみられる症状
- 放散痛(上腕・左肩・顎・背中などに拡散する痛み)
- 冷汗
- 嘔吐
- 意識消失
- 動悸
- 37℃台の発熱
- 倦怠感
- 呼吸困難
- 食欲不振
3. 心筋梗塞はどのようにして起きる?
心筋梗塞が起きる主な原因は「動脈硬化」です。
血管が硬くなることで柔軟性や弾力性が無くなり、コレステロールなどの脂質が血管内に貯まりやすくなります。貯まった脂質は、酸化や沈着、ドロドロになるなど形状を変えていき、やがて「プラーク」と呼ばれる丘が血管内にできます。
血管内がプラークによって狭くなった状態が「狭心症」です。そして、このプラークは破れやすく、破れた箇所から出血すると、血が固まり「血栓」となります。血栓が血流を完全に塞いでしまうと心筋梗塞になります。(図1参照)
図1. 急性心筋梗塞の発症メカニズム
狭心症という言葉が出てきました。心筋梗塞とどう違うのか次項で詳しく解説します。
4. 心筋梗塞は狭心症と何が違うの?
「心筋梗塞」=血管が詰まり、血液がストップしている。強い痛みが長く続く。
「狭心症」=血管が狭くなり、血液が流れにくくなっている。締め付けられる痛みが2、3分~15分程度。徐々に痛みが強くなるが、時間がたつと納まる。
どちらも心筋に十分な血液が行き渡らなくなり、引き起こされる心臓病です。痛みの場所は同じで胸部が多く、強度と持続時間が違います。心筋梗塞と狭心症のポイントを見て行きます。
4-1. 心筋梗塞の症状のポイント
- 心筋梗塞は「長く」「強い胸の痛み」
- 痛みが30分-数時間におよぶことも。
- 痛みの表現は様々で「ナイフで刺されたように焼き付く痛み」「このまま死ぬのではないかという不安感」など。
- 心筋梗塞の痛みは狭心症の薬(硝酸薬・ニトロ)を使っても治まらないのが特徴。
4-2. 狭心症の症状のポイント
- 「一時的」に「胸がギュッと締め付けられる」
- 痛みは数分-15分程度で治まります。
- その他の傷病は圧迫感、動悸、息苦しさ、しびれなど。痛みが徐々に強くなるのが特徴。
また、狭心症のタイプは主に3種類あります
安定・労作性狭心症
プラークが血液の通り道を狭くすることにより安定・労作性狭心症になります。坂道や階段を登ったり、心臓の動きが活発時に心臓への酸素供給が間に合わず、発作が起こります。
図2.労作性狭心症の発症メカニズム
冠れん縮性狭心症
安静時狭心症ともいわれますが、冠動脈がけいれんを起して一時的に血管が狭くなり、血液の流れが悪くなることで起こります。
不安定狭心症
プラークの表面が破れたり、破れやすくなると血栓ができやすい状態です。血栓が冠動脈をふさいでしまうと心筋梗塞になる危険性が高くなります。
不安定狭心症のように、狭心症から心筋梗塞に移行する場合があります。狭心症かもと思われる場合は、必ず病院に行き医師に相談しましょう。
図4. 不安定狭心症の発症メカニズム
狭心症と心筋梗塞における症状の違い「まとめ」
? | 狭心症 | 心筋梗塞 |
---|---|---|
痛み | 胸がギュッと締め付けられる。 | ナイフで刺されたように焼き付く痛み。このまま死ぬのではないかという不安感を感じる痛み。 |
痛みの持続時間 | 数分-15分。 | 30分-数時間に及ぶこともある。 |
薬の効力 | 硝酸薬にて緩和 | 硝酸薬・ニトロなど効果が無い |
5. 心筋梗塞になりやすい人は?心筋梗塞危険度チェック
血圧が高かったり、悪玉コレステロールが高く、善玉が少ない脂質異常症や、動脈硬化になっている場合は心筋梗塞への危険度が高くなります。急性心筋梗塞になりやすい人の項目を書きますので、いくつ当てはまるか数えてみてください。多くチェックが付いた場合は要注意です。
チェックが多い場合は、動脈硬化になりやすく、狭心症や心筋梗塞の危険度も高くなります。心筋梗塞は、心停止の危険性もある怖い病気です。
まとめ
今回の記事は、心筋梗塞の症状を狭心症との違いと合わせてまとめました。一般的に心臓発作と呼ばれる心筋梗塞は、男性の方がなりやすく、女性の2倍以上も高い確率で発症するといわれています。
心筋梗塞がどんな病気か知り、前段階である狭心症やそれに伴う症状、原因を知ることで少しでも心臓突然死の予防につながればと思います。
参考文献
- 「ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン(2013年改訂版)」日本循環器学会
- 「虚血性心疾患の一次予防ガイドライン(2012年改訂版)」日本循環器学会
- 「専門医のための循環器病学」医学書院(2014年4月発行)
- 「今日の循環器疾患治療指針(第3版)」医学書院(2013年1月発行)
- 「病気がみえる vol.2 循環器 第4版」メディックメディア(2017年3月発行)
- 「狭心症:診断と治療の進歩」日本内科学会雑誌第86巻第2号(1997年2月10日)
注意事項
本コンテンツの掲載情報は、医師の診断に代わるものではありません。症状や治療に関しては、必ず主治医の診断を受けてください。