突然ですが、窒息しそうになったことはないですか?
筆者は、中学時代の給食中に一度あります。それは、配膳中に友人にそそのかされてこんにゃくをつまみ食いした時のこと……。焦って飲み込んだせいで喉に詰まり、全く息ができなくなりました。大事には至りませんでしたが、いまだに鮮明に覚えています。
さて、今回の記事は気道に異物が入って、窒息した場合の応急処置についてです。
本記事の要点
溺死・酸欠・誤飲など窒息にも色々ありますが、本記事は、「気道異物により窒息」した場合の応急処置についてまとめています。異物により気道が塞がった状態は、心肺蘇生法を行う状況と同様に緊急性が高いです。いざという時のために本記事を確認して有事に備えましょう。
1. 窒息に気付くために重要なサイン
気道が完全に詰まることで、息ができなくなり、窒息した状態になります。窒息した状態が長ければ、死に至ります。
窒息した場合には、すみやかに応急処置を行わなければなりませんが、応急処置の第一歩は窒息だと気づくことです。
1-1. 異物による窒息を確認するポイント
いち早く窒息状態であるかの確認をするためのポイントです。
- 顔色がよくない
- 苦しそうな顔
- 声が出せない
- 息ができない
- チョークサインがある
チョークサインについては、次で解説します。
1-2. 窒息のサイン「チョークサイン」とは
気道異物によって窒息した場合に、人間が自然に行うサインがあります。それが「チョークサイン」と呼ばれる窒息のサインです。
喉に手を当てるこの行為は、異物が詰まって息ができなくなったことを示します。万国共通の分かりやすいポーズです。万が一、自身の喉が詰まった場合も、このチョークサインを行うことによって、周囲の人に伝えることができます。
2. 気道異物による窒息の対応手順
では、窒息をした人を見かけた緊急時、応急処置としてどのような行動を取ればよいのでしょうか。その流れについて、見ていきましょう。
2-1. 声を掛けて窒息者の意識を確認する
気道異物による窒息が疑われる場合は、声掛けを行いましょう。端的に分かりやすく「喉が詰まっていますか?」と声掛けをします。
「息ができないの?」といった声掛けでも問題はないですが、気道に異物が入ったのか、それ以外の窒息か判断するためにも、「何かが喉に詰まった?」という聞き方がいいと思います。
うなずく、声が出ないなどの確認が出来た場合は、気道異物による窒息の応急処置を始めます。
2-2. 助けを呼んで119番通報する
窒息の可能性が高い場合、大きな声で助けを呼び、119番通報と念のため、AEDを持ってくるように周囲の人に依頼しましょう。
そして、意識の確認をします。意識がある場合とない場合で対応方法が異なってきます。前述の声掛けで意識の確認がある程度できているはずです。
119番通報をためらってはいけません。
もし異物が取れても、咳が続くような場合や、他にも異物がある場合、意識がない場合など119番通報をためらわずに行いましょう。
2-3. 窒息者の意識がある場合の応急処置
身体の内側から異物が出せるように「咳をする」ように指示します。声が出るなど大きな咳が出せる場合は、それを続けように促し、気道異物除去を行います。
気道異物除去法には2つの方法があります。
- 腹部突き上げ法(ハイムリック法)
- 背部叩打法
この腹部突き上げ法と背部叩打法のどちらを先に行うという優先順位はありません。どちらかの方法をくり返し、それでもダメな場合は、もう片方を試し異物が取れるまで繰り返します。
ただし、明らかに妊娠している妊婦や肥満者に対しては、腹部突き上げ法ではなく、背部叩打法を行いましょう。※1
※1. JRC蘇生ガイドライン2015では、「現時点では、肥満や妊婦の気道異物についての特異的な治療に関するエビデンスはない。」という記述がありますが、「救急蘇生法の指針2015市民用・解説編」では背部叩打法を推奨しているため、こちらの記述を参考にし記載しています。
2-3-1. 腹部突き上げ法のやり方
- 窒息者の後ろに回り、腰の辺りに手を回します。
- どちらかの手でおへその位置を確認します。
- もう片方の手で、握り拳をつくり、親指側を窒息者のおへその上、みぞおちよりは十分に下のあたりに当てます。
- おへそを確認した手で、握りこぶしを作った手を握ります。
- すばやく手前上方に向かって圧迫するように突き上げます。
救急隊員に伝えよう
内蔵が損傷している可能性があるため、腹部突き上げ法を行った場合はその旨を救急隊員に伝えるか、病院での診察を促しましょう。
2-3-2. 背部叩打法のやり方
窒息者の背中を後方から、手のひらの手首に近い固い部分(手掌基部)で叩きましょう。叩く位置は、左右の肩甲骨の間あたりを叩く力は強めです。
2-4. 窒息者の意識が無い場合の応急処置
窒息者の意識が無い場合には、心停止と判断し、心肺蘇生法を実施します。心肺蘇生を実施している際に、異物が見えたら手で取り除きましょう。
見えない場合は、やみくもに口の中に手を入れて探さず、心肺蘇生による、胸骨圧迫やAEDの使用を優先しましょう。これは、見えない位置にある異物をさらに奥に押し込んでしまう可能性があるためです。
心肺蘇生法の詳細については、記載すると長くなりますのでここでは割愛させていただきます。「【解説】一次救命処置の手順。心肺蘇生法ガイドライン2015版」 の記事に心肺蘇生法の一連の流れを解説していますので、あわせてお読みいただければと思います。
異物を探すために、胸骨圧迫を長い間中断してはいけません。
10秒以上胸骨圧迫を中断してはいけません。胸骨圧迫とAEDを使用しましょう。
3. 窒息は防ぐことができる
ここが一番大事です。窒息を防ぐためには、窒息する状況を想定し、作らないようにしましょう。
たとえば、飲み込む力が弱い乳幼児やご高齢の方には窒息事故が起こらないように、喉に詰まりやすい食べ物を避けたり、細かく小さくしたりするなどの対応をしましょう。
お年寄りによくある窒息しやすい食べ物は、お餅・お団子・ぶどう・ごはん・お寿司などです。小さい子はピーナッツ・ミニトマト・ブドウのほか、液状の食べ物などがあります。小さい子の手の届くところには、口におさまるような小物を置かないよう注意しましょう。
また、以下のような行動から、食べ物がのどに詰まる可能性がありますので避けましょう。
- 歩きながら食べる
- 放り投げて口に入れて食べる
- 寝たまま食べる
- 食べ物で遊ぶ
- 車や電車など揺れる場所で食べる
まとめ
喉に異物が詰まった時の応急処置をまとめてみました。一次救命処置と同様に、最初の声掛けが大事です。様子がおかしい人がいたら率先して声を掛けてあげてください。
また、気道異物による窒息は、ある程度予防することができますので、なるべく気道を塞ぐような食べ物、食べ方を避けて生活したいものですね。
参考文献
- 「救急蘇生法の指針2015(市民用・解説編)」株式会社 へるす出版(2016年3月31日)
- 「JRC蘇生ガイドライン2015 第1章 一次救命処置(BLS)」一般社団法人 日本蘇生協議会