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【解説】新型コロナウイルス流行中の一次救命手順

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新型コロナウイルス感染症が流行中に、人が倒れた場合の心肺蘇生法の指針が厚生労働省から発表されました。

AEDガイドでは、国際コンセンサスの解説記事を書きましたが、具体的にどんな手順で行えばいいのか、一般市民による心肺蘇生の手順と変更点をイラスト付きで分かりやすく紹介します。

1.前提の考え方

  • 新型コロナウイルス感染症が流行している状況においては、すべての傷病者(倒れている人)に感染の疑いがあるとして対応する。
  • 成人の傷病者に対しては、胸骨圧迫とAEDのみで、人工呼吸を行わない。
  • 小児の傷病者に対しては、人工呼吸を行う技術と意思がある場合には実施する。

成人で人工呼吸を省く理由、小児には行う理由については、新型コロナウイルス流行中の心肺蘇生法で注意すべきことは?をご覧ください。

2.コロナウイルス流行中の心肺蘇生手順

1)反応(意識)を確認する。
※顔を近づけすぎない

反応(意識)を確認する。

ポイント

車の往来などがないか、身の回りに危険がないかなど周囲の安全を確認してから、傷病者(倒れている人)に近寄ります。両肩の鎖骨辺りを叩きながら、「大丈夫ですか?」など大きな声で呼びかけます。

この時、倒れている人の顔にあまり近づき過ぎないようにします。

変更点

顔をあまり近づけないようにする。

2)119番通報とAEDの手配
※変更なし

119番通報

周囲の人に「人が倒れています。誰か来てください」と声を掛け、「あなたは119番通報をして救急車を呼んでください」、「あなたはAEDを持ってきてください」と指示を出します。

このとき、頼んでいる人を指で指し、明確に『あなたに頼んでいる』ことが分かるようにしましょう。さらに、119番通報とAEDを持ってくる人は別の人を指名します。

一人の場合は、自分で119番通報をしましょう。

ポイント

口頭指導を受けましょう

119番通報をすると、口頭指導が受けられます。

119番通報すると「火事ですか?救急ですか?」とまず聞かれます。そのあと、場所、何が起きたのか、名前と連絡先を聞かれます。

このとき、電話口で指導を仰ぐことができますので、手順が分からない場合などはどうしたらいいか聞きましょう。

3)呼吸の確認、分からなければ胸骨圧迫
※顔を近づけすぎない

呼吸の確認

傷病者が正常な呼吸をしているか確認します。呼吸の確認は傷病者の胸やお腹が上下に上がっているかどうか、動きを確認します。

この時、倒れている人の顔にあまり近づき過ぎないようにし、胸やお腹の動きが止まっていれば、呼吸が止まっていると判断します。

ポイント

口が動いていても、呼吸が止まっている場合があります。「死戦期呼吸」という心停止後に見られる、しゃくりあげるような呼吸で、これは正常な呼吸ではありません。

なるべく早く胸骨圧迫を行いたいため、10秒以上、呼吸の観察をしないようにして、判断に迷ったらただちに胸骨圧迫を開始します。

変更点

顔をあまり近づけないようにする。

4)胸骨圧迫
※開始前にハンカチやタオルなどを鼻と口にかぶせる

ガーゼを鼻と口に被せる

傷病者を仰向きに寝かせます。そして、胸骨圧迫を行う前にタオル、ハンカチ、マスクや衣服などで傷病者の鼻と口にかぶせます。

これは、エアロゾル(空気中に浮遊している微小な粒子)が飛散を防止するためです。仰向きに寝かせた傷病者の横に膝をつき、胸骨圧迫を開始します。

成人の場合

胸骨圧迫

片方の手の付け根を胸(胸骨の下半分)に置き、もう片方の手を重ねて指を交互に組みます。肘をまっすぐに伸ばし、手の付け根に体重をかけて圧迫します。

一回圧迫したら、胸が完全に元の位置に戻るように圧迫を解除します。そしてまた圧迫します。

小児の場合

両腕または片腕で圧迫をします。乳児の場合は、二本指(中指と薬指)で圧迫します。

胸骨圧迫のポイント

A. 押す深さ
胸が約5cm沈むように圧迫する。(小児や乳児は、胸の約3分の1の深さ)
B. 押すテンポ
1分間に100回~120回(小児や乳児も同じテンポ)
C. 解除(除圧)
毎回、圧迫したらしっかりと(完全に)胸を元の位置に戻す。ただし、押す深さが浅くならないように注意する。
D. 絶え間なく
AEDを使う際や人工呼吸の際など胸骨圧迫を中断する時間が生じるが、中断は最小限にする(10秒以下)。心肺蘇生を行っている時間の6割は胸骨圧迫の時間となるようにする。
E. 確認しあう
しっかりと押せているか、テンポが遅くなったり早くなったりしていないか確認する。バイスタンダーが複数人いれば、お互いに注意し合い確認する。
F. 交代する
胸骨圧迫は体力を使います。胸骨圧迫の質(深さやリズムなど)を低下させないために、複数人いる場合にはバイスタンダー同士で胸骨圧迫を1~2分ごとに交代しながら行う。

変更点

胸骨圧迫を開始する前に、エアロゾルが飛散しないように衣類やマスクなどで鼻と口をかぶせる。

5)AEDを使う
※変更なし

AEDを使う

頼んだAEDが到着したら、AEDを使います。AEDは電源を入れると音声のガイダンスが流れますので、ガイダンスに従います。(AEDにはコロナウイルスの感染対策のガイダンスは含まれていません。)

AEDの使い方の手順

  1. 電源を入れる
  2. 電極パッドを貼りつける
  3. AEDが自動で電気ショックの要否判断をする
  4. 電気ショックのボタンを押す
  5. すぐに胸骨圧迫を再開(電気ショックの有無に関わらない)

AED使用時のポイント

1度貼った電極パッドは救急隊員が到着するまで剥がさない。

AEDの電気ショックでエアロゾルが発生することは非常に低いと考えられています。躊躇せず使いましょう。

6)胸骨圧迫(と人工呼吸※)とAEDの繰り返しと観察
※成人は人工呼吸を行わない

胸骨圧迫とAEDの繰り返し

ポイント

救急隊員が到着するまで胸骨圧迫とAEDを繰り返し行い、意識が戻る、呼びかけに応じるなどの仕草が見られない限り、繰り返します。

意識が戻ったら、回復体位にし救急車の到着を待ちます。

成人の場合は、人工呼吸を行いません。小児の場合は行う技術と意思がある場合に行います。感染の危険性を感じるなどためらうような場合は胸骨圧迫のみ行います。

変更点

成人の場合は、救命講習を受けて人工呼吸を行う技術があれば通常行いますが、コロナウイルス感染症が流行中は、行う意思と技術があっても人工呼吸は実施しません。(小児の場合は、その技術と意思があれば行う。)

7)救急隊員に引継ぎ後
※手と顔の洗浄

ポイント

救急隊員が来たら状況を説明し、引き継ぎます。この後、手と顔を石鹸などで十分に洗います。傷病者の顔と口にかぶせたハンカチや衣類などは直接手で触れないようにして廃棄します。

3.新型コロナウイルス流行中の一次救命処置のおさらい

手順のおさらいです。

  1. 顔を近づけすぎないように、反応を確認する。
  2. 応援を呼び、119番通報とAEDの手配をする。
  3. 119番では通信指令員に指示を仰ぐ。
  4. 顔を近づけすぎないように、呼吸の確認をする。迷ったらすぐに胸骨圧迫を開始。
  5. 胸骨圧迫は強く、早く、戻して、絶え間なく
  6. AEDを使う。
  7. 人工呼吸ができる場合でも成人では行わない。(小児は技術と意思があり、ためらうことがなければ実施する)
  8. 胸骨圧迫とAEDを繰り返す。

※厚生労働省から出された今回の指針は、新しい知見や感染の広がりなどによって変更される場合があります。

参考サイト・参考文献

  • 新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた市民による救急蘇生法について(指針)(一般財団法人日本救急医療財団 心肺蘇生法委員会)

※引用元サイトの掲載が終了しているため、当記事を作成した2020年当時の引用・参考元URLを記載致します。(https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000632828.pdf)

この記事を書いた人

清水 岳

清水 岳

株式会社クオリティー AED事業部 部長 : AEDコム・AEDガイド責任者、AED+心肺蘇生法指導者、高度管理医療機器販売・貸与管理者、防災士、上級救命講習修了。 専門店AEDコムを運営し、日本全国に年間2,000台を販売、導入企業数は14,000社を突破。心肺蘇生ガイドライン、AEDの機器に精通している。

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コメント(4件)

  • aed より:

    市民用としては、
    胸骨圧迫の深さについて、強く「約5センチ」のみの記述が、より正確なような気がしますが如何でしょうか。

    • 清水 岳 清水 岳 より:

      aedさん コメントありがとうございます。
      たしかに!そうですね。「約5㎝」のみが適当ですね。
      記述が元がガイドライン2015の変更点の記事から持ってきたのでそのままでした。ありがとうございます!

  • Junko-Chiba より:

    有資格者です。
    変更点の確認をさせて頂きました。
    お知らせをありがとうございます。
    感謝です。

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