AEDを設置するならAEDの使い方に加えて、胸骨圧迫や人工呼吸ができるとより救命率が上がります。そんないざというときのために、胸骨圧迫や人工呼吸、AEDの使い方を教えてくれる救命講習。
実は、消防署以外でも講習を開催しているところがあるのです。今回は、一般的な消防署の救命講習から緊急対応が求められる方が受ける講習までさまざまな救命講習をご紹介します。
なお、この記事作成している2020年3月24日現在、消防署及び赤十字での救命講習は、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため中止となっているようです。その他の団体も含めて参加したい講習がある場合には事前に確認をすることをお薦めします。
1. 消防署の救命講習とは?
一般的な救命講習で、私たちが思いつくのは消防署の「救命講習」ではないでしょうか? 手軽に受けれますし、無料(地域により有料)で行ってくれるのが消防署の救命講習です。
成人における救命処置を教えてくれる講習は以下の3つです。
- 普通救命講習
- 普通救命講習(自動体外式除細動器業務従事者)
- 上級救命講習
各講習の概要は以下の通りです。
救命講習の詳細内容
講習種別 | 講習時間 | 講習内容 | 認定証の交付 | 有効期限 | 費用 |
---|---|---|---|---|---|
普通救命講習 | 3時間 | 心肺蘇生やAED、異物除去、止血法などを学ぶコース(※小児や乳児に対する心肺蘇生を中心とした内容をご希望する場合は都内各消防署にご相談ください。) | 救命技能認定証 | 3年間 | 無料(東京は1,400円) |
普通救命(自動体外式除細動器業務従事者)講習 | 4時間 | 普通救命講習の内容に、AEDの知識確認と実技の評価が加わったコース | 救命技能認定証(自動体外式除細動器業務従事者) | ||
上級救命講習 | 8時間 | 普通救命(自動体外式除細動器業務従事者)講習の内容に加えて、小児・乳児の心肺蘇生、傷病者管理、外傷の応急手当、搬送法など学ぶコース | 上級救命技能認定証 | 無料(東京は2,600円) |
東京消防庁 「救命講習のご案内」参照
開催日および開催場所は事前に決定しており、参加者が予約をして講習会場に出向く方針をとっています。人数によっては、出張講習をしてくれるケースもあります。こちらは、各消防署へ直接お問い合わせください。
2. 消防署の救命講習のメリット
無料で受けられる(一部除く)
普通救命講習はお近くの消防署で、無料で受講することができます。東京都の場合は、テキスト代金として1,400円かかります。
また、住んでいるか働いている地域の消防署でないと受講できないという縛りや、テキスト代金や講習で使用する備品の代金だけ支払う地域もありますので、まずは受講したい消防署に問い合わせをしてみましょう。
認定証がもらえる
国内の公的な救命技能認定証が発行されます。防災士の資格を取得する際に、救命技能認定証の添付が求められることもあるほど、認定証の知名度はあります。
3. 消防署以外の救命講習とは?
消防署以外にも、救命講習を行っている企業や団体があります。団体毎に特徴がありますので、目的に沿った講習を受講することが重要です。
3-1. 日本赤十字社
日本赤十字社で受講できる救命講習ですが、今回は「救急法 基礎講習」について取り上げます。
救急法 基礎講習の詳細内容
受講対象 | 満15歳以上の者 |
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講習時間 | 4時間 |
講習内容 | 傷病者の観察の仕方および一次救命処置(心肺蘇生、AEDを用いた除細動、気道異物除去)等救急法の基礎 |
交付される証 | 全課程修了者に受講証、検定合格者に赤十字ベーシックライフサポーター認定証 |
受講費 | 1,500円(教材費、保険料等の実費) |
日本赤十字社ホームページ:救急法参照(2020年3月24日現在)
日本赤十字社講習の特徴
基礎講習では、手当の基本、人工呼吸や心臓マッサージの方法、AEDを用いた除細動に加えて、気道異物除去や傷病者の観察の仕方、体位変換を学べます。
傷病者の観察の仕方や体位変換は、消防署の普通救命講習では教えていない内容ですので、より詳しい内容を学びたい人にはメリットになります。
申し込みは、2か月程前から受け付けています。直近の講習は、満員で申し込みができないことがあります。早めに申し込みをすることをお薦め致します。
出張での講習は、日本赤十字社では「依頼講習」と呼び、対応が可能です。最少催行人数は、10名程となります。その場合、受講費に加えて、講師の派遣手数料5,000円(1名あたり)が加算されます。
3-2. AEDメーカーや販売会社の講習
AEDのメーカーや販売店が行っている救命講習もあります。AEDの導入時に講習を行ったり、訪問講習会を行ってくれるところなどさまざまです、講習会を開催しているところがあります。
AEDのメーカーである日本光電工業株式会社では、公開講習会と訪問講習会の2種類を用意しています。今回は日本版救急蘇生ガイドラインに準拠した180分コースを取り上げます。
基本!180分講習会の詳細内容
受講対象 | 小学校高学年以上、心肺蘇生とAEDに興味のある方 |
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講習時間 | 3時間 |
講習内容 |
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交付される証 | 修了証(1人あたり別途500円) |
受講料 | 公開講習会 1人あたり 5,000円(税別)、訪問講習会 1開催あたり 40,000円(税別) |
AED販売店で講習会を行うメリットは、職場などで導入するAEDの訓練機を使用して講習を受講できることでしょう。音声ガイダンスやAED本体やパッドにある表示案内など、本物と同等のもので講習ができると、実際に使用する場面でも慌てることがなくなるかもしれません。
また、日本光電の公開講習会ではバーチャル講習体験ができます。道路や駅、空港等での救助を想定し、大型スクリーンで臨場感のある講習を体験できるのも特徴です。実際に起こりうる状況を想定できると、行動に移しやすくなります。
訪問講習会とは、職場などにインストラクターが訪問し、講習会をひらいてくれます。180分の講習受講者には、希望に応じて修了証も発行してくれます。
3-3. MFAジャパンの講習
MFA(メディック・ファーストエイド)は、国連の関連組織である世界安全機構(WSO)の公認のもと、世界の信頼を得て幅広い実績をあげている応急救護プログラムです。
今回は、心肺蘇生法とAEDを短時間で習得できるケアプラス・コースをご紹介します。突然の心停止のための対処法の訓練だけでなく、日常生活で家族や同僚を守る必要最低限度の救命情報を含んでいるコースになります。
各トレーニングサイトにより受講時間や料金が多少異なるため、ある団体における料金を参考として記載します。
NFAジャパンの講習会の詳細内容(例)
受講対象 |
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講習時間 |
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講習内容 | 心肺蘇生法、人工呼吸、AED使用法(「成人」「成人と小児」「小児と乳児」そして「全年齢」の4つのパターンを選択可) |
交付される証 | 認定カード(有効期間2年間) |
受講料 | 15,800円 |
MFAの特徴の一つとして、ストレスの低い、受講者志向の学習環境の中でトレーニングを受けることができ、楽に知識や技術を習得できるといわれています。
また、習得時間の大半を実際の訓練に費やすことで、習得したスキルの記憶時間が最大限になるよう工夫されています。
講習会場は、各インストラクターが各自で設立しているトレーニングセンターで受講ができます。出張講習を受け付けているところもありますので、料金含め問合せをしてみましょう。
3-4. アメリカ心臓協会の講習
日本にはいくつかの、アメリカ心臓協会(American Heart Association、以後AHAと記載します)の心肺蘇生法・救命処置講習を提供するトレーニング組織があります。
医師や医療スタッフ、救命救急士など救命のプロ向けの救命処置コースが中心ですが、一般市民向けのコースも「質」を重視した救命法トレーニングが受けられるのが特徴です。
今回は、一般市民でも受講できるAHAハートセイバーCPR AEDコースを取り上げます。各トレーニングサイトにより、受講時間や料金が多少異なるため、一般的なものを記載します。
AHAの講習会の詳細内容
受講対象 | 緊急時への対応責務のある市民、厚生労働省が定める一定頻度者(業務の内容や活動領域の性格から一定頻度心停止者対し応急の対応を行うことがあらかじめ想定される者) |
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受講時間 | 約2.5時間 |
講習内容 | 成人傷病者への心肺蘇生法・気道異物除去、口対マスク人工呼吸、AED使用法 (小児・乳児はオプション) |
交付される証 | 修了カード(有効期限2年間) |
受講料 | 10,000円前後(別途テキスト代) |
アメリカ心臓協会講習の特徴
介護・福祉職、旅行添乗員、施設職員、ホテル従業員、ホテル・宿泊施設従業員、スポーツトレーナーなど、保育士、学校教職員など、職業上、緊急対応が求められる方向けのコースです。
世界で認められたAHA国際ライセンスが発行されますので、外資系に勤める方には魅力的な資格かもしれません。
また、一般市民の方にとっても、口対口人工呼吸だけではなく、感染予防と効果的な人工呼吸器であるポケットマスク使用法を含めた日本では数少ない講習が受講できます。
ポケットマスクの使用法をはじめ、心肺蘇生法の「質」に着目したAHAの講習。せっかくお金と時間をかけて受講するのであれば、しっかりとした知識と質の高い技術を身に着け、自信にしたいところです。
講習の場所ですが、基本は各トレーニングセンターでの開催となります。出張講習が対応可能かどうかは、各トレーニングセンターに確認する必要があります。
4. 救命講習を受ける際の注意点
参加日が限られている
救命講習を行う日があらかじめ決まっており、その日にスケジュールを合わせる必要があります。地域によっては、月に1度の開催しかないところもありますので、事前に日程を調べておくことが必要です。
訪問依頼をする場合には、人数をそろえる必要がある
消防署の救命講習などで勤務先や、自治会などで訪問をしてもらう場合には、10~15名ほど、受講者を集める必要があります。
人数の基準や、訪問を行っているかなどは事前に問い合わせて確認をしましょう。
講習で使う人工呼吸の補助器具が何か確認する
人工呼吸の練習ではアルコール消毒をして、ガーゼなどで簡易的に行う場合や、人工呼吸補助器具であるフェイスシールドを配布される場合、少し高度なポケットマスクと呼ばれる補助器具を使うケースなどさまざまです。
筆者の職業上、とくに救護義務がある方については、ポケットマスクを用いた講習の受講をお薦めしています。これは、ポケットマスク(人工呼吸用マスク)は、直接口を付けず傷病者との距離が離れるため心理的ハードルが下がるためです。
人工呼吸用のマスクの使い方については、人工呼吸用マスクの使い方知っていますか?の記事で詳しく解説しています。
まとめ
国内の公的な認定証をもらえる講習や、海外でも認められている救命講習を日本で受講できることを解説しました。
救命講習は、受講者の目的に合わせて、受講する団体やコースを選ぶ必要があります。厚生労働省が定める一定頻度者に該当する方は、さまざまなケースを想定して複数の講習を受講されるがよいのではないでしょうか。