ここ数年で急激に耳にするようになった熱中症。消防庁の調べでは、2018年の5月~9月までに熱中症で救急搬送された人数は、なんと9万5137人。そのうち、死亡したのは160人に上ります。
死に至る熱中症。その症状と応急処置をまとめました。様子を見るべきか?119番通報するべきか?判断材料にしてもらえたらとおもいます。
1. 熱中症とは?
熱中症は、体温が上昇して臓器が高温になることで発症する暑熱障害の総称です。
暑熱環境(夏の暑さ・炎暑)にいて具合が悪くなった、もしくは、暑熱環境にいた後の体調不良は、すべて熱中症の可能性があります。
欧米では、症状と体温によって4種類に分類されています。軽傷なものから順に、「熱けいれん」、「熱失神」、「熱疲労」、「熱射病」とされています。熱けいれんと熱失神の方が重症な感じに見えますが、多臓器障害に陥る熱射病が一番重症です。
日本救急医学界では、分類をせず「熱中症」という呼称で統一しています。これは、現場には体温計がないことを前提として、2000年に呼称を統一されました。
2. 熱中症の症状と分類
2-1. 熱中症の分類
熱中症は、その重症度に応じてⅠ度、Ⅱ度、Ⅲ度という分類に分かれています。その症状もめまいや立ちくらみといった軽度なものから、意識障害、内蔵の機能障害に至る重度のものまであります。
重症度は、刻々と変化します。一般人として見るポイントは、Ⅰ度の症状が徐々に改善が見られる場合、現場での応急処置して様子を見るのですが、Ⅱ度以降の症状が出た場合は、医療機関での対応という点です。
表1. 日本救急医学会による熱中症分類と対応
分類 | 症状 | |
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Ⅰ度 | 応急処置と見守り |
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Ⅱ度 | 医療機関へ |
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Ⅲ度 | 入院加療 | 下記の3つのうち、いずれかを含む
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※日本救急医学会熱中症分類2015より引用・改変
2-2. 熱中症で救急車を呼ぶチェックポイント
熱中症の危険信号としては、以下の症状が挙げられます。特に、熱中症の中でも重症であると疑うべきです。
熱中症を疑う症状のチェックポイント
- 体温が高い
- 赤い
- 熱い
- 汗をかかない
- 皮膚が乾いている
- 頭痛(ズキンズキン)
- めまい
- 吐き気
- 受け答えが異常などの意識障害
- 呼びかけに反応しないなどの意識障害
また、症状の他に、環境因子についても注目しましょう。
環境
- 気温が高い
- 湿度が高い
- 風が弱い
- 日差しが強い
- 照り返しが強い
- 輻射熱(道路や壁からの放射によって伝わる熱)
熱中症の症状が重症で、救急車を呼ぶ判断のチェックポイントは、以下の通りです。
救急車を呼ぶ判断のチェックポイント
- 意識がしっかりしているか?
- 傷病者が自分で水を飲めるか?
- 症状が改善したか?
軽症の立ちくらみ、こむら返りの場合は意識がはっきりしています。Ⅱ度になると倦怠感・吐き気・脱力・頭痛・下痢などが見られます。Ⅲ度になるとけいれん、肝・腎臓の障害を合併し死亡する可能性があります。
軽度の症状をいち早く認識し、涼しい場所で身体を冷やし、症状に応じて119番通報をしましょう。
119番通報する場合、伝えたい情報については、「4. 救急車を呼んだときに、伝えたいこと」でまとめています。
3. 熱中症が起きた場合の応急処置
一般市民が出来る傷病者への対応方法です。倦怠感、頭痛、吐き気があるときには、医療機関へ行きましょう。意識が朦朧としている、極端に身体が熱いときは119番通報です。
涼しい場所に移動させる
風通しのよい日陰や、できればクーラーが効いている室内へ避難しましょう。
安静にさせる
塩分を含んだ飲み物を飲ませる(経口補水液、スポーツドリンクなど)
意識がはっきりしているならば、水分を口からどんどん飲んでもらいましょう。意識がない場合や呼びかけや刺激に対する反応がおかしい場合は、誤嚥の危険性があるため、医療機関での点滴にて水分補給をします。
服を脱がせ、体を冷やしましょう。
衣服を脱がせ、体の熱を放散させましょう。きついベルトやネクタイなどはゆるめて風通しをよくします。体の冷やし方のポイントについては、以下でまとめます。
ポイント:身体の冷やし方
救急隊が到着するまで冷やし続けましょう。体温の冷却はできるだけ早く行う必要があります。
1. 衣服を脱がせて、身体を濡らし、うちわや扇風機で風を当てましょう。
2. 冷却パックなどを使う場合は、脇の下、太ももの付け根、首に当てましょう。
4. 救急車を呼んだときに、伝えたいこと
熱中症の疑いがある場合に、医療機関が知りたいことがあります。もし搬送される場合や、病院に行った際には伝えられる範囲で情報を伝えるといいと思います。
表2. 医療機関が知りたいこと
1.様子がおかしくなるまでの状況 |
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2. 不具合になった時の状況(どんな症状があったか) | 以下の項目についてなるべく詳しく伝えましょう。
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3. 最近の状況 |
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4. その他 |
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※「熱中症環境保健マニュアル2018」環境省環境保健部環境安全課(2018年3月改訂)p.26「医療機関が知りたいこと」より改変して引用。
まとめ
熱中症の症状やポイントいかがでしたでしょうか。熱中症の予防は、服装などの涼しい環境作りや、体調管理、こまめな水分補給です。そのほかにもみんなで意識するという共助など、さまざまな対処方法があります。
熱中症の予防については、次回の記事で詳しくまとめたいと思います。
参考文献
- 「平成30年版消防白書」消防庁
- 「熱中症ガイドライン2015」日本救急医学会 熱中症に関する委員会(2015年3月31日発行)
- 「熱中症環境保健マニュアル2018」環境省環境保健部環境安全課(2018年3月改訂)
- 「救急診療指針 改訂第5版」へるす出版(2018年4月発行)
- 「熱中症のための救急・集中治療領域標準テキスト改訂第2版」へるす出版(2018年5月)
注意事項
本コンテンツの掲載情報は、医師の診断に代わるものではありません。症状や治療に関しては、必ず主治医の診断を受けてください。