AEDの適正配置に関するガイドラインが2013年に公開されてから、5年ぶりにガイドライン更新となりました。「AEDの設置基準は? 」、「うちの会社って置かないといけないの? 」という質問が多く、更新を望む関係者の声は多かったと思います。
今回は、新しくなった設置のガイドラインを引用しながら、変更点など気になったポイントをまとめています。
1. AEDの適正配置に関するガイドラインとは
AEDの適正配置に関するガイドラインは、AEDの設置場所や、AEDの配置の指標になるガイドラインです。特に、一般人が使用するAEDの設置場所を提示して、AEDの効率的な使用や救命の促進を目的に作られています。
今回の更新は、2020年のオリンピックなどの大規模イベントを意識して、日本の最新動向を盛り込んだ形で通知されました。
ガイドラインの発表までの流れは、一般財団法人日本救急医療財団を中心に作成されています。パブリックコメントを募集し、意見を反映したうえで、2019年5月17日に厚生労働省から各都道府県に通知されました。
2. AEDの設置が推奨される施設
ガイドラインに記載されているAED設置が推奨される施設の一覧です。具体的にどのような施設にAEDを置くのが推奨されるか、記載されています。
- 駅・空港・長距離バスターミナル・高速道度サービスエリア・道の駅
- 旅客機、長距離列車・長距離旅客船等の長距離輸送機関
- スポーツジムおよびスポーツ関連施設
- デパート・スーパーマーケット・飲食店などを含む大規模な商業施設
- 多数集客施設
- 市役所、公民館、市民会館等の比較的規模の大きな公共施設
- 交番、消防署等の人口密集地域にある公共施設
- 高齢者のための介護・福祉施設
- 学校(幼稚園、小学校、中学校、高等学校、大学、専門学校等)
- 会社、工場、作業場
- 遊興施設
- 大規模なホテル・ コンベンションセンター
- その他
- 一次救命処置の効果的実施が求められるサービス
- 島しょ部および山間部などの遠隔地・過疎地、山岳地域など、救急隊や医療の提供までに時聞を要する場所
※AEDの適正配置に関するガイドラインp6表2より引用
表1. AEDの設置が推奨される施設の具体例のまとめ
ポイント
たとえば、サービスエリアや道の駅など前回に比べてより具体的に施設が指定されていると感じます。学校に幼稚園が加わった点もポイントです。
3. AEDの設置が考慮される施設
上記以外に、以下がAEDの設置を考慮される施設として挙げられています。
3-1. 地域のランドマークとなる施設
郵便局、銀行、コンビニエンスストア(24時間営業)、ガソリンスタンド、ドラッグストアなど救助者が分かりやすい目印として、利用しやすい施設への設置が考慮されています。
特に、コンビニエンスストアは、地方の自治体が主となってAEDの設置が広がっています。たとえば、千葉県の柏市(135店舗)や群馬県の前橋市(153店舗)、愛知県大府市(43店舗)のコンビニではAEDの設置が進んでいます。現にコンビニで設置したAEDでの救命事例もあります。(例:2015年8月尾張旭市60代男性)
AEDのコンビニ設置の参考事例
3-2. 保育所・認定こども園
0歳に対してもAEDが使えることが強調されており、保育所やこども園のほかに、学童保育も記載されています。
また、設置の補助金制度が充実することを望まれる声や、未就学児に対しての対応方法(小児用モードの使用や、年齢に迷ったら成人モード)も提言されています。
3-3. 集合住宅
日本では、心臓突然死の約7割は住居・自宅であり、集合住宅が多いため、人口が密集した環境ではAED設置の効果が期待されます。
ただし、自宅での心停止は睡眠中、入浴中など目撃されるケースが少なく、同居者も高齢者である場合が多いという側面もあり、適切かつ迅速な救助が得られないなどの理由から自宅へのAED設置の有効性は未定と言及しています。
周囲に救助を行う人がいる場合は、自宅等への設置を考慮に入れてもいいとされています。
4. 施設内のどこにおくべきか
AEDの施設内で配置にあたって考慮すべきこととして、以下の記載があります。
AEDを購入する前に、配置する場所をある程度決めている人が多い印象があります。ただ、買う事が目的となってしまい安易に決められる方も中にはいらっしゃいますので、AEDをどこに置くと良いのか参考にしてください。
- 心停止から5分以内に電気ショックが可能な配置
‒ 現場から片道1分以内の密度で配置
‒ 高層ビルなどではエレベーターや階段等の近くへの配置
‒ 広い工場などでは、AED 配置場所への通報によって、AED 管理者が現場に直行する体制、自転車やバイク等の移動手段を活用した時間短縮を考慮- 分かりやすい場所(入口付近、普段から目に入る場所、多くの人が通る場所、目立つ看板)
- 誰もがアクセスできる(カギをかけない、あるいはガードマン等、常に使用できる人がいる)
- 心停止のリスクがある場所(運動場や体育館等)の近くへの配置
- AED 配置場所の周知(施設案内図への AED 配置図の表示、エレベーター内パネルに AED 配置フロアの明示等)
- 壊れにくく管理しやすい環境への配置
※AEDの適正配置に関するガイドラインp7表3より引用
表2. AEDの施設内で配置にあたって考慮すべきことのまとめ
ポイント
「1.心停止から5分以内に電気ショックが可能な配置」のポイントは、電気ショック(除細動=ボタンを押す)までの時間です。AEDを取りに行って、電源を入れパッドを貼り、電気ショックを行うまでとなります。
そのため、現場から片道1分以内という点が実際の設置で考慮するべきポイントだと思います。まとめると、危険だと思われる場所に、誰もが、分かりやすく、すぐに取りにいけるところに設置(管理)しましょう。
他にも、個人的に付け加えるポイントして、「頻繁に場所を変えない」という点があります。記憶していた設置場所にAEDを取りに行ったらなかったということがないよう、しっかりと周知しましょう。
5. AEDの効果的・効率的設置に当たって考慮すべきこと
ガイドラインでは、AEDの効果的・効率的設置にあたって考慮すべきこととして、以下の記載があります。
- 心停止(中でも電気ショックの適応である心室細動)の発生頻度が高い(人が多い、ハイリスクな人が多い)
- 心停止のリスクがあるイベントが行われる(心臓震盪のリスクがある球場、マラソンなどリスクの高いスポ―ツが行われる競技場など)
- 救助の手がある/心停止を目撃される可能性が高い(人が多い 、視界がよい)
- 救急隊到着までに時間を要する(旅客機、遠隔地、島しょ部、山間等)
※AEDの適正配置に関するガイドラインp3表1より引用
表3. AEDの効果的・効率的設置に当たって考慮すべきことのまとめ
まとめ
人が多い施設ではAEDの設置が望ましいと思います。また、必要な台数も施設の広さや心停止のリスク、取りに行くまでの距離(階数や移動手段、施錠の有無など)も考慮して検討されるといいでしょう。
スポーツでは、サッカーが特にAEDの意識が高く、次いでマラソンだと思いますが、その他にも接触が多いコンタクトスポーツでも適切な配置を心掛けたいですね。
AEDを設置する側だけでなく、施設に足を運ぶ個人としても、初めて行く場所や普段から通う会社や学校などで、AEDがどこに置いてあるか確認されるのがいいと思います。
参考文献
- 「自動体外式除細動器(AED)の適正配置に関するガイドラインの公表について」厚生労働省(令和元年5月17日)
- 「自動体外式除細動器(AED)の適正配置に関するガイドライン(平成30年12月25日)について」一般財団法人日本救急医療財団(令和元年5月17日)
- 「AEDの適正配置に関するガイドライン(案)」に関する意見募集の結果について」一般財団法人日本救急医療財団(平成30年12月25日)