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狭心症の原因とは。発症リスクを高める5つの要因のまとめと詳しい解説

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狭心症や心筋梗塞は、総患者数が約80万人といわれる、患者人口の非常に多い病気です。発作などの症状が出ている時でないと発見が困難なため、たとえ健康診断で大きな問題がなくても起こる可能性のある病気です。

健康診断の結果がよかったからと言って100%安心できる病気ではないことも特徴です。心筋梗塞に発展した場合は命にかかわる可能性もあるので、悩ませられることのないよう、日々の生活で予防をしておくに越したことはありません。

当記事では、狭心症の原因や発症リスクを高める5つの事柄(高血圧・糖尿病・脂質異常症・肥満・喫煙)について詳しくまとめました。予防等の参考になれば幸いです。

1.狭心症の原因

血管の内側が狭くなることにより、心筋に十分な血流・酸素が送り込めなくなった時に狭心症は起こります。血管が狭くなる原因は、動脈の中にできる「粥腫(じゅくしゅ)」とよばれる、お粥のような塊や、「血栓」により狭くなります。

「動脈硬化」は、動脈の血管の内側にコレステロールが付着して、血管の弾力性がなくなるなどして、血管がもろくなる病気です。

狭心症の原因となる動脈硬化

血管も年を取り、それに伴い柔軟性が下がっていくので、動脈硬化は年を取るとともに進行してしまいますが、高血圧や糖尿病、脂質異常症、肥満などの生活習慣病をもっていると進行しやすくなり、狭心症や心筋梗塞になるリスクが高まります。これらの狭心症の原因となる事柄について、下に詳しく記載していきます。

その他、血管けいれんによって血管が狭くなって狭心症となる場合(冠攣縮性狭心症)がありますが、当記事ではそちらの内容については記載しません。

2.高血圧

高血圧になると、高い血圧が血管に掛かり動脈硬化を促進します。血圧が高いということは、血管に必要以上の圧力がかかっているということです。

風船も空気を沢山いれて圧力が高まると割れやすくなりますが、血管も高い圧を受けるとより血管の壁が伸びたり、「動脈瘤」と呼ばれるコブができ破裂する危険性が出てきます。

血管はそうならないように、より硬くより厚くなろうとして動脈硬化を起こしていくのです。また圧力が高まると血液による摩擦も大きくなるので、それによってもダメージを受けることになります。

2-1.高血圧になる仕組み

「血圧」は、心臓が血液を送り出すときに血管にかかる圧力です。

「高血圧」とは、血管がしなやかさを失い硬くなったために抵抗が大きくなり、大きくなった抵抗のなかで血液を送り出すために心臓がより強い圧力で血液を送り出すために起こります。

2-2.血管の硬化

本来、動脈の血管には弾力がありますが、強い圧力を受け続けると、その圧力に耐えられるように血管の壁が厚くなり、弾力がなくなります。

また、圧力が高いために内壁が傷ついて、古くなったゴムのホースのように、硬くなってしまいます。

2-3.血圧が上がる原因と対策

血圧が上がる原因には、遺伝や病気と、環境的な要因があります。

遺伝

遺伝や病気が原因の場合は、なぜそれが起こるのかは、根本的には分かっていません。

ただし、両親ともが正常血圧の場合よりも、どちらかが高血圧の場合は子供が高血圧になりやすい傾向があることがわかっているので、遺伝的影響があることは間違いないと考えられています。

一方で、遺伝的に高血圧になりやすい人でも、必ずしも高血圧になるわけではありません。

塩分

食事の塩分が血圧に最も大きな影響を与えます。塩分が増えると体液が貯まり(貯留)、血圧が上昇するためです。

食塩をあまり使わない食生活の人は、高齢になっても高血圧がほとんどみられません。一方、食塩の多い食事をしていると、年齢を重ねるにつれ、高血圧になることが分かっています。

日本食は食塩が多いものが多いですから、気にせずに食べていると塩分の取りすぎになってしまう可能性が高いです。塩分は男性1日8gまで、女性は1日7gまでが目安といわれていますが、それに準じた摂取量にすることが望ましいです。

その他環境的な要因

その他、気候や食事、飲酒や喫煙、職業、ストレスなども高血圧に影響を与えるといわれています。悪影響を与えている要因は人それぞれなので、症状が発症している場合は医師等に相談し、適切な対応をするようにして下さい。

3.糖尿病

糖尿病も動脈硬化の危険因子の1つです。

3-1.糖尿病になる仕組みと動脈硬化

インスリンの働き

糖尿病には、インスリンというホルモンが大きな影響を与えます。人間の体は、食事で吸収した糖質をブドウ糖に分解して吸収して筋肉や脳などを動かすエネルギーとして使用します。

このブドウ糖を細胞や筋肉に取り込むときや、使い切れなかったブドウ糖を肝臓でグリコーゲンに合成して蓄えたり、脂肪細胞にとりこんで脂肪として蓄えるときに、インスリンが働きます。

また、食事の直後にあがった血糖値を正常に戻すのもインスリンの働きです。

インスリン不足

食べ過ぎて血液中のブドウ糖が増えると、これに対応してインスリンも大量に分泌されます。

この状態が続くと、インスリンを分泌するすい臓が疲れてインスリンが十分に分泌されなくなり、処理されないブドウ糖が血液中に残ります。この結果、慢性的に血糖値が高くなり、糖尿病の状態になります。

インスリン抵抗

インスリンの不足以外にもインスリン抵抗性というインスリンが分泌されても効きにくくなるものがあります。

これは高血圧の約50%に見られるもので、十分なインスリンが分泌されているのにも関わらずインスリン作用が低下し糖の取り込みが低下します。

3-2.糖尿病の原因と対策

糖尿病には、もともとインスリンの分泌が少ない1型と、食事や運動、ストレスなどの環境要因によっておきる2型があり、日本人の糖尿病はほとんど2型です。

2型の糖尿病の原因になるのは、食べすぎや飲みすぎ、運動不足、肥満、ストレスなどがあります。これらの要因が重なることで発症のリスクが高まります。

糖尿病の予防として気をつけること

  • 食べすぎ
  • 脂肪の多い食事
  • 甘いもののとりすぎ
  • 肥満
  • 運動不足

4.脂質異常症(高脂血症)

4-1.脂質異常症とは

脂質異常症は、以前は高脂血症と呼ばれていた症状です。血液中の脂質の量に異常がある状態で、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症、高トリグリセリド血症の3種類に分けられます。

はじめの2種類はコレステロールに関する異常で、高トリグリセリド血症は中性脂肪(トリグリセリド)の異常です。

コレステロールについてはいわゆる悪玉コレステロールといわれるLDLが多すぎる場合(高LDLコレステロール血症)、善玉コレステロールといわれるHDLが少なすぎる場合(低HDLコレステロール血症)にわけられています。

これらに加えて、中性脂肪が多すぎる場合が高トリグリセリド血症です。これらコレステロールの異常、中性脂肪の異常を併せて脂質異常症といいます。

4-2.脂質異常症になる仕組み

コレステロールや中性脂肪は「リポタンパク」の形で血液中を運ばれます。※リポタンパクについては下記で説明します。

このリポタンパクはたんぱく質と脂質の割合や、比重によって分類されますが、悪玉と呼ばれるLDLと、善玉と呼ばれるHDLもその一つです。

4-3.LDLとHDL

LDLは全身にコレステロールを配る働きをし、必要以上のコレステロールがあった時には、HDLがこれを回収して肝臓に戻す働きをします。

コレステロールを配る働きが、現在の栄養過多の状況では悪影響を及ぼす場合があるのでLDLは「悪玉コレステロール」と呼ばれます。

一方余計なコレステロールを回収する働きがあるので、HDLは「善玉コレステロール」と呼ばれます。HDLは血管壁にたまったコレステロールの回収もし、動脈硬化の予防をします。

LDLが増えすぎると・・

LDLが増えすぎると、酸化などにより変性したLDL由来のコレステロールが血管の壁にくっついて動脈硬化を引き起こします。

変性したLDL由来のコレステロールは傷ついた動脈の内壁にくっつきやすく、「粥腫(じゅくしゅ)」になる場合があります。これが冠動脈にでき、徐々に大きくなって血管を狭くしていくと、狭心症や心筋梗塞の原因になります。

図1.LDL由来のコレステロールが狭心症を引き起こすまでの流れ cholesterol-damage-the-blood-vessels

コレステロール値が高いと狭心症や心筋梗塞のリスクが高まりますが、「LDLコレステロールの増えすぎ」と、「HDLコレステロールの不足」が特に影響が大きいです。

図2.狭心症や心筋梗塞と中性脂肪値、LDLの関係を示すグラフ angina-pectoris-or-myocardial-infarction-and-neutral-fat-value-and-ldl

※リポタンパクとは

コレステロールや中性脂肪は油です。油はそのままでは水に溶けにくいので、血液中では脂質の周りをリン脂質やタンパク質で囲み、血液に溶けやすい形にしています。この状態を「リポタンパク」といいます。

4-4.脂質異常症の原因と対策

血液中のコレステロールの量は、健康な状態であれば一定になるようにコントロールされています。そのため健康な人であれば、コレステロールを少々とりすぎても血液中のコレステロールが急に増えることはありません。

しかし、コレステロールが多い食事を長い間続けていたり、肝臓で合成されるコレステロールが増えすぎるなど、体内で使用されなかったコレステロールが血液中に取り残されることになります。こうして脂質異常症が起こります。予防のためには食生活の改善と、適度な運動が必要です。

脂質異常症にならないための注意点

食習慣の欧米化や運動不足、肥満などが脂質異常の要因と言われています。そのため、糖分やアルコールの取りすぎや、過剰なストレスなど複合的に絡んでいますので、これらを総じた生活習慣に注意が必要です。また、糖尿病、甲状腺機能低下症でもコレステロールが増えることが知られています。

4-5.コレステロールと中性脂肪の役割

ここまでを読むと、コレステロールや中性脂肪は人体に有害なものと感じる人もいるかもしれませんが、両方とも、人体には必要なものです。これらのバランスが崩れると体に悪影響を与えますが、本来は有用なものです。それぞれの役割について記載します。

コレステロールの役割

  • 細胞膜の原料となる
  • 胆汁酸(脂質の消化・吸収に必要)の原料となる
  • 体の機能を整えるホルモン、男性ホルモン、女性ホルモンの原料となる

中性脂肪の役割

  • 予備のエネルギーとして蓄えられる
  • 皮下脂肪として体温を保つ
  • 内蔵を衝撃から守る

5.肥満

「肥満」は病状とはとらえられにくい言葉だと思いますが、あらゆる生活習慣病の原因になる状態です。生活習慣病の人は太っていることが多く、肥満を解消するだけで病気が改善できるケースも多いのが実状です。肥満を自覚している場合は、まず肥満を改善する取り組みを始めて下さい。

5-1.肥満の原因と対策

肥満の原因は、言わずとしれた所だとは思いますが、主に食べすぎや飲みすぎ、運動不足です。食事でとるエネルギーは生きていくために必要ですが、消費される以上の栄養をとった場合は、それが体内に蓄積されます。この状態が続くと体内にじわじわと蓄積されていき、気付いたら肥満になっている、という状況に陥ります。

消費する以上の栄養を食事で取らないことや、とりすぎてしまった場合は運動などでその分を消費する必要があります。

5-2.メタボリックシンドロームについて

これまでの肥満、脂質異常症、高血糖、高血圧は、それぞれが動脈硬化を促進させる危険因子ですが、これらのうち複数をあわせもつ状態を「メタボリックシンドローム」といいます。一つ一つの症状が軽くても、複数の要因が重なることで動脈硬化の進行が早まるといわれています。

メタボリックシンドロームは自覚症状がほとんどないのも特徴です。健康診断で血圧やコレステロール値がやや高めと言われるくらいであれば、あまり気にならない人が多いのではないでしょうか。またちょっと太り気味くらいで体調も悪くなければ危機感を感じません。そのため放置してしまい、そのうちに病気が進行し、ある日突然発作におそわれる、ということが起こります。

メタボの傾向があった場合、このくらいなら大丈夫だろう、と思ってしまいがちですが、対策をせずに放置しておくことは危険です。今は大丈夫でも放置して進行すると取り返しの付かない事態が起こりうることを認識し、危機感をもって改善に努めるようにしていただけたらと思います。

6.喫煙

タバコは動脈硬化に悪影響を与えることが知られており、タバコの本数が多いほど、また喫煙の期間が長いほど、動脈硬化によっておこる病気のリスクが高まるといわれています。

また、喫煙に糖尿病などの別の危険因子が加わると、動脈硬化の危険性が一層高まるとも言われています。喫煙は体に様々な悪影響を与えますが、動脈硬化にも悪影響を与えるので注意が必要です。

タバコによる動脈硬化への影響は、高齢者よりも、若年者においてより強いことが知られています。

6-1.タバコが害を与える仕組み

コレステロールへの影響

タバコを吸うと、血液中の脂質に悪影響が及びます。喫煙者は喫煙しない人と比べて善玉コレステロールが低くなり、悪玉コレステロールと中性脂肪が高くなります。この状況は、動脈硬化を促進する状態です。

血管内皮細胞の障害

喫煙は、直接、血管内皮細胞を傷つけるので、動脈硬化を促進します。

また、喫煙は血小板の機能を高めます。血小板は血栓をつくる原因となります。血栓ができるとそれによって血管がつまると心筋梗塞が引き起こされる可能性があります。喫煙は動脈硬化と別の角度でも、不整脈のリスクを高める働きをします。

6-2.喫煙のその他の悪影響

ニコチンによる興奮作用

喫煙をすると体内にニコチンが入りますが、ニコチンはアドレナリンを分泌させます。

アドレナリンは興奮するときに血液中にでてくるホルモンで、心拍数を増加させたり、血管を収縮されて血圧を上昇させる動きがあります。これは心臓に負担をかけます。喫煙は様々な角度から心臓に悪影響を与えるのです。

7.狭心症にならないために

動脈硬化は年齢とともに進むものである程度は仕方のないもので、狭心症や心筋梗塞症の治療も動脈硬化を完治させられるわけではありません。

完治を目的とするのではなくて、狭心症や心筋梗塞の発作や再発予防をすることとなります。予防のためには当記事でこれまで述べてきた狭心症の原因となる要因の除去に努める必要があります。

特に血縁者に狭心症や心筋梗塞の患者がいる場合は、遺伝的にこれらの病気にかかりやすい可能性が高いので、生活習慣に特に注意をしてください。

また、狭心症や心筋梗塞症は、過度の疲労や緊張、暴飲暴食、天候の急変などをきっかけに生じることが多いので、それらを避けることも大切です。

万が一発作が起こった場合、迅速に治療を受けることによって被害を最小限に抑えることができます。強い胸痛を感じたときは、すぐに病院へ行くようにして下さい。

狭心症・心筋梗塞の予防

  • 塩分・糖分・脂肪分を取り過ぎない
  • バランスのよい食事をとる
  • 適度な運動をする(毎日適当な距離を歩くなど)
  • 規則正しい生活を送る
  • ストレスを避ける
  • 禁煙する
  • 高血圧・糖尿病・高脂血症の早期発見と対策をする

まとめ

狭心症のリスク要因についてまとめてきました。これら狭心症の原因は生活習慣によって起こるものがほとんどで、すぐに体調が悪くなったりするものではありません。

そのためなんの対策もせず放置してしまう人が多いのが実状だと思います。だからこそ、本当に多くの人が悩まされることになるのがこの病気の怖いところだと思います。

たとえ今健康だとしても、それを維持できるように日々健康的な生活週間の維持に取り組んでいただけたらと思います。

参考文献

  • 厚生労働省 H20年 患者調査の概況 主要な傷病の総患者数の「虚血性心疾患」:
    https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/08/dl/05.pdf
  • 「虚血性心疾患の一次予防ガイドライン(2012年改訂版)」日本循環器学会
  • 「専門医のための循環器病学」医学書院(2014年4月発行)
  • 「わかりやすい内科学 第4版」文光堂(2014年2月)
  • 「動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症治療ガイド 2013年版改訂版 第3版」日本動脈硬化学会(2017年3月発行)
  • 「粥状動脈硬化症」アトムス(2016年7月発行)
  • 「糖尿病治療の手びき2017 改訂第57版」日本糖尿病学会・南江堂(2017年6月)

注意事項

本コンテンツの掲載情報は、医師の診断に代わるものではありません。症状や治療に関しては、必ず主治医の診断を受けてください。

この記事を書いた人

清水 岳

清水 岳

株式会社クオリティー AED事業部 部長 : AEDコム・AEDガイド責任者、AED+心肺蘇生法指導者、高度管理医療機器販売・貸与管理者、防災士、上級救命講習修了。 専門店AEDコムを運営し、日本全国に年間2,000台を販売、導入企業数は14,000社を突破。心肺蘇生ガイドライン、AEDの機器に精通している。

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