救急車の到着まで平均約9.8分。自宅での心肺停止で家族ができること
「もし、家族が突然家で倒れたらどうしよう」と考えたことはありませんか?
総務省消防庁がまとめている「救急・救助の現況」の最新版(2025年版)によると、2024年に救急搬送された心肺停止の傷病者のうち、67.3%が住宅で発生しています。また、119番通報から救急車が現場に着くまでの時間は、救急出動全体の平均で約9.8分でした。(※1)
この記事では、自宅での心肺停止に関するデータを解説します。あわせて、救急車を待つ間に家族ができることや、普段からできる備えもお伝えしますので参考にしてください。
1. データで見る自宅での心肺停止
はじめに、心肺停止がどこで起きていて、誰が居合わせることが多いのかをデータから見ていきます。
1-1. 救急搬送された心肺停止の約7割は住宅で起きている

2024年に救急搬送された心肺機能停止の傷病者は、140,088人でした。人数の多かった発生場所は、次のとおりです。
- 住宅:94,233人(67.3%)
- 公衆出入場所(老人ホームや旅館・ホテルなど):33,247人(23.7%)
- 道路:6,252人(4.5%)
上記の割合は、いずれも心肺機能停止の傷病者全体(140,088人)に対するものです。
住宅の中では、居室(居間や寝室などの部屋)が65,156人でもっとも多くなっています。居室だけでも、心肺機能停止で救急搬送された傷病者の46.5%を占めています。
所見
心肺停止というと、道路や駅など街中で起きているイメージがあるかもしれません。しかし、実際には居室や浴室など、生活の場での発生が多くを占めていました。
1-2. 自宅の心停止に居合わせた人の多くは家族
2018年に実施された研究によると、自宅で心停止の場面に居合わせた人の93.8%は、倒れた人の家族でした。(※2)対象集団は、5年以内に救急現場に居合わせた経験のある中で、医療系の国家資格を持たない一般市民を対象にした調査です。
1,194人の調査対象者のうち、自宅で救急現場に居合わせたのは101人で、心停止の場面に限るとさらに少なくなります。人数が限られるため、このデータが一般市民全体を代表する数値ではない点には注意が必要です。
所見
限られたデータではありますが、自宅での急変に立ち会う人の多くが家族でした。心肺停止の発生場所が住宅でもっとも多かったことを踏まえると、他人事にはできないと考えます。
1-3. 救急車の到着までは全国平均で約9.8分

119番通報を受けてから救急車が現場に着くまでの時間(現場到着所要時間)は、2024年の全国平均で約9.8分です。平均時間は心肺停止に限った数値ではなく、すべての救急出動が対象です。
所見
自宅で発生した心肺停止の場合、救急隊が到着するまでの間に対応するのは家族になるケースが多くなります。そこで、救急車が来るまでの約10分間、家族の対応で何が変わるのかを次に解説します。
2. 救急車を待つ間の行動の重要性
救急車が来るまでの間に、その場に居合わせた人が実施する救命行動には、どのような意味があるのでしょうか。ここでは、心肺蘇生とAEDによる電気ショックが行われた場合の、1か月後の生存率・社会復帰率をデータで紹介します。
2-1. 心肺蘇生法が行われた場合の1か月後生存率・社会復帰率

2024年に、一般市民が目撃した心原性(心臓が原因)の心肺機能停止傷病者は27,769人でした。そのうち、一般市民が心肺蘇生を行ったのは16,728人(60.2%)、行わなかったのは11,041人(39.8%)となります。
1か月後の生存率は心肺蘇生が行われた場合で15.3%、行われなかった場合は7.9%です。また、1か月後の社会復帰率は、心肺蘇生が行われた場合が10.4%、行われなかった場合は3.7%でした。心肺蘇生が行われなかった傷病者には、適応でなかったケースも含まれます。
所見
対象となる状況が異なるため単純な比較はできませんが、一般市民による心肺蘇生が行われた場合の1か月後生存率は約1.9倍、社会復帰率は約2.8倍でした。救急現場では、その場に居合わせた人の行動が重要というのがデータでもわかります。
2-2. AEDで電気ショックが行われた場合の1か月後生存率・社会復帰率

2024年に、一般市民が目撃した心原性の心肺機能停止傷病者のうち、一般市民によってAEDによる電気ショック(除細動)が行われた傷病者は1,449人です。この1,449人の1か月後の生存率は53.6%、社会復帰率は44.4%でした。
この1,449人は、心肺蘇生が行われた人数に含まれています。また、電気ショックが行われたのは、AEDが適応と判断した人に限られます。
所見
その場に居合わせた一般市民によって、AEDによる電気ショックが行われた人の生存率・社会復帰率は、いずれも5割前後でした。
使用するのが遅れたケースや、もともと心臓が弱っている人に使ったケースなど、AEDを使っても救命できない場合はあります。しかし、電気ショックが適応の人にAEDを使わなければ、助かる可能性はずっと低くなってしまいます。
一概に比較はできないものの、心肺蘇生が行われた16,728人に対して、AEDで電気ショックが行われたのは1,449人と明らかに少ないのが現状です。また、自宅の心停止では、AEDを使用した割合が特に低いという研究結果もあります。その背景を次の項で解説します。
2-3. 自宅でAEDの使用率が低い理由
研究データによると、自宅で心停止の場面に居合わせた人のうち、胸骨圧迫(心臓マッサージ)を行った割合は87.5%でした。比較として職場は78.8%、公共施設では100%となります。
一方で、AEDを使った割合は自宅では6.3%であり、職場の72.4%や公共施設76.9%と大きく差がありました。「AEDを使った」割合には、電気ショックボタンを押した、もしくはAEDパッドを貼り付けたケースが含まれます。
AEDを探しに行ったり、運んだりした割合も自宅は12.5%で、職場の85.1%や公共施設の84.6%よりも低い結果でした。
自宅での心停止でAEDを使わなかった人に理由を聞く(複数回答)と「AEDを調達できる状況ではなかった(自分以外に人がいなかったなど)」が46.2%で最多でした。次に「AEDがどこにあるかわからなかった」が15.4%で続いています。
また、心理的なためらいも影響している可能性があります。同研究で救命行動の実施に対する心理的障壁への質問を行った結果、割合が高かったのは次の項目です。
- 正しく実施できる自信がなかった(44.3%)
- 行ってよいかわからなかった(36.3%)
- 倒れている人へ近づくことへの恐怖(34.1%)
上記は救命行動全般についての回答で、居合わせた場所・状況を問わないものとなります。
所見
研究対象者のうち、自宅で心停止の場面に居合わせたのは少人数です。加えて心肺蘇生講習会の受講経験者も含まれているため、割合は幅をもって読む必要があります。
それでも、自宅での救命行動には環境面や心理面など多くの壁があるといえます。次の章では、いざというときのための備えも解説しますので、参考になれば幸いです。
3. 自宅で家族が倒れたときに備えて知っておきたいこと
ここでは、自宅で家族が倒れた現場に居合わせた場合を想定した、対応の流れを紹介します。あわせて、いざというときに動けるように普段からできる備えも解説します。
3-1. 家族が倒れたときの対応
家族が倒れるところを目撃した場合も、寝ているのか迷った場合も、最初にすることは反応(意識)の確認です。大きな声をかけて肩を軽くたたき、反応(意識)があるかを確認します。
反応がない、または判断に迷う場合は協力者を求めます。協力者がいる場合は、119番通報とAEDの手配を依頼してください。
協力者がおらず1人のみの場合は、ただちに119番に通報します。すぐ近くにAEDがあるとわかっている場合は、AEDを取りに行きます。
わからない場合や遠い場合はAEDを取りに行かず、心肺蘇生を続けながら救急隊を待ちましょう。電話機のスピーカー機能(ハンズフリー)を使うと両手が空き、通信指令員の指示を受けながら対応しやすくなります。
次に、胸とおなかの動きを見て、普段どおりの呼吸があるかを確認してください。確認に10秒以上かけないよう注意します。
普段どおりの呼吸がない、または判断に迷う場合は、胸骨圧迫(心臓マッサージ)を開始します。
しゃくりあげるような不規則な呼吸(死戦期呼吸)がみられる場合も、胸骨圧迫を開始してください。死戦期呼吸の見分け方を詳しく知りたい方は、死戦期呼吸とは?普段どおりではない呼吸の見分け方の記事をご覧ください。
人工呼吸の技術を身につけていて実施の意思がある場合は、胸骨圧迫30回と人工呼吸2回を交互に繰り返します。難しい場合は、胸骨圧迫だけでも構いません。
AEDがある場合や到着した場合は、音声ガイドに従って使用します。胸骨圧迫はできるだけ絶え間なく実施し、人工呼吸やAEDを使用するときの中断は最小限にします。
AEDを用いた一次救命処置フローチャート(ガイドライン2025対応)がダウンロードできます
一次救命の流れについて、PDFで無料配布しています。印刷・掲示・手順のご確認などご活用いただけたらと思います。
補足:救急車を呼ぶか迷ったときの窓口
救急車を呼ぶか迷ったときの窓口を2つ紹介します。ただし、反応がない・普段どおりの呼吸がない(判断に迷う場合も含む)場合は、すぐに119番通報と心肺蘇生を行ってください。
- #7119
- 急な病気やけがで救急車を呼ぶ・病院に行くかどうか迷ったときに、医師・看護師・救急救命士に電話で相談できる窓口です。全国42地域で実施されています。(※3)
- 全国版救急受診アプリ(Q助)
- 症状を画面で選んでいくと、緊急度に応じた必要な対応が表示されるアプリです。WEB版と、スマートフォンやタブレット端末で使用できるアプリ版があります。(※4)
3-2. 普段からできる備え

普段からできる備えとしておすすめするのが、定期的な救命講習の受講です。所感ですが、救急現場に居合わせたとき、焦ったり慌ててしまったりする人は珍しくありません。本やWebサイトなどで手順を調べるだけでは、いざというときに実践するのはなかなか難しいものです。
特に、質の高い胸骨圧迫を行えるようになるには、定期的なトレーニングが重要と考えます。AEDも同じで、電源を入れて電極パッドを貼るまでの一連の流れを経験しておいた方が動きやすくなります。
救命講習は、消防署や日本赤十字社などで受講が可能です。具体的な内容や費用を知りたい方は、【救命講習】一般向け講習から、有料講習まで。どんな内容? いくらなの?の記事をご覧ください。
また、自宅近くのAEDの設置場所を、家族で確認しておくのも効果的です。もし不整脈などの持病がある方の場合は、主治医と相談して自宅にAEDを設置するケースもあります。AEDの個人購入については、AEDを個人で購入する前に知っておきたい7つのことで詳しく解説しています。
4. まとめ:いざというときに迷わず動けるよう家族みんなで備えよう
救急搬送された心肺停止の約7割は住宅で起きており、自宅で居合わせるのは多くが家族です。
もし、反応や普段どおりの呼吸がないときや判断に迷うときは、ためらわずに119番通報と心肺蘇生を行い、必要に応じてAEDを使用するのが重要になります。
今日からできる備えとして、近くのAEDの場所の確認と救命講習の受講を、家族で話し合うのをおすすめします。
引用・参考リンク
- ※1. 参考・引用:総務省消防庁「令和7年版 救急・救助の現況」
- ※2. 参考・引用:厚生労働科学研究成果データベース「意識調査にもとづく一般市民によるAEDの積極的な活用を阻害する因子の調査に関する研究」
- ※3. 参考:総務省消防庁「救急安心センター事業(♯7119)ってナニ?」
- ※4. 参考:総務省消防庁「全国版救急受診アプリ(愛称「Q助」)」






