歯科医院のAEDは施設基準に必要?外安全1・2・口管強・歯特連を解説
歯科医院では、診療中の患者さんの体調変化や万が一の緊急事態に備えて、AEDを設置している医院もあります。また、AEDは一部の歯科関連の施設基準において、必要な設備として記載されています。
本記事では、2026年10月時点の診療報酬制度をもとに、AEDが施設基準に記載されている「歯科外来診療医療安全対策加算1・2(外安全1・2)」「口腔管理体制強化加算(口管強)」「歯科診療特別対応連携加算(歯特連)」について、AEDに関係する施設基準を中心に解説します。
あわせてAEDの販売店として、歯科医院での院内掲示や設置・管理のポイントについても紹介します。
診療報酬や施設基準は改定等により変更される場合があります。実際の届出・算定については、最新の厚生労働省通知や管轄の地方厚生(支)局の資料をご確認ください。
1. 歯科医院のAEDは施設基準とどう関係する?

歯科医院にAEDを設置すること自体は、すべての歯科医院に一律に義務付けられているわけではありません。
一方で、診療報酬制度における一部の施設基準では、患者さんに安心・安全な歯科医療を提供するための設備として、AEDが明記されています。
2026年10月時点では、AEDが施設基準に記載されている歯科関連の加算として、次のものがあります。
- 歯科外来診療医療安全対策加算1(外安全1)
- 歯科外来診療医療安全対策加算2(外安全2)
- 口腔管理体制強化加算(口管強)
- 歯科診療特別対応連携加算(歯特連)
ただし、これらの施設基準はAEDだけを条件としているわけではありません。人員配置、研修、医療安全管理、緊急時の連携体制、診療実績など、それぞれに複数の要件が定められています。
そのため、AEDを設置しただけで、外安全1・2や口管強、歯特連を算定できるわけではありません。
ここからは、それぞれの施設基準においてAEDがどのように位置付けられているのかを見ていきましょう。
2. 歯科外来診療医療安全対策加算(外安全1・2)とAED
歯科治療では、患者さんの治療に対する不安や緊張、持病などによって、治療中に体調が悪くなるなど、予期せぬ緊急事態が起こる可能性があります。そのため、外安全1・2の施設基準では、AEDなどの装置・器具や、緊急時に対応するための他の保険医療機関との連携体制などが定められています。
2-1. 外安全1の施設基準とAED

外安全1には、歯科医療における医療安全の確保に必要な、さまざまな施設基準が定められています。(※1)
その中の「患者にとって安心で安全な歯科医療環境の提供を行うにつき十分な装置・器具等を有していること」という基準では、次の装置・器具等を有していることが定められています。
- 自動体外式除細動器(AED)
- 経皮的動脈血酸素飽和度測定器(パルスオキシメーター)
- 酸素(人工呼吸・酸素吸入用のもの)
- 血圧計
- 救急蘇生セット
また、この基準では、AEDを保有していることが分かる院内掲示を行っていることも定められています。
つまり、外安全1では、AEDを保有していることに加えて、AEDを保有していることが分かる院内掲示を行うことも施設基準の一つとなっています。
2-2. 外安全2の施設基準とAED

外安全2についても、医療安全に関するさまざまな施設基準が定められています。(※2)
その中には、外安全1と同様に、「患者にとって安心で安全な歯科医療環境の提供を行うにつき十分な装置・器具等を有していること」が含まれており、AEDもその一つとして定められています。
- 自動体外式除細動器(AED)
- 経皮的動脈血酸素飽和度測定器(パルスオキシメーター)
- 酸素(人工呼吸・酸素吸入用のもの)
- 血圧計
- 救急蘇生セット
また、外安全2についても、AEDを保有していることが分かる院内掲示を行うことが定められています。
なお、外安全1・2では、AEDを保有していることが分かる院内掲示だけでなく、緊急時における連携保険医療機関との連携方法やその対応など、歯科診療に係る医療安全管理対策を実施している旨の院内掲示も施設基準に定められています。また、この掲示事項は原則としてウェブサイトにも掲載することが求められています。
2-3. 「外安全1」と「外安全2」は何が違う?

外安全1と外安全2は、どちらも歯科外来診療における医療安全対策を評価する施設基準です。AEDをはじめとする緊急時に対応するための装置・器具等についても、共通して定められています。
外安全1と外安全2では、対象となる医療機関が異なります。
外安全1は、地域歯科診療支援病院歯科初診料に係る施設基準の届出を行っている医療機関を除く歯科医療機関が対象です。いわゆる一般的な歯科医院、歯科クリニックです。
一方、外安全2は、地域歯科診療支援病院歯科初診料に係る施設基準に適合するものとして届け出た保険医療機関が対象です。こちらは、地域の歯科医院から患者さんの紹介を受け、専門的な歯科治療などを行う病院の歯科部門になります。
なお、AEDについては、外安全1・外安全2のどちらにも必要な設備として定められています。
2-4. 「外来環」と「外安全1・2」は何が違う?
歯科医院のAEDについて調べていると、「外来環」という言葉が出てくることがあります。
これは、以前の「歯科外来診療環境体制加算」の通称です。2024年度(令和6年度)の診療報酬改定で、従来の歯科外来診療環境体制加算(外来環)が廃止され、医療安全対策については「歯科外来診療医療安全対策加算1・2(外安全1・2)」、感染対策については「歯科外来診療感染対策加算(外感染)」へ再編されました。
そのため、現在の制度について確認する場合は、「外来環」ではなく「外安全1・2」「外感染」の施設基準を確認する必要があります。
※1.※2 参考:基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省
3. 口腔管理体制強化加算(口管強)とAED
口管強は、歯科疾患の重症化予防や口腔機能の管理など、継続的な歯科医療を行う体制を整えている歯科医療機関を評価する加算です。
3-1. 口管強の施設基準とAED

口管強には、歯科疾患の重症化予防や口腔機能の管理、在宅歯科医療、緊急時対応などに関する複数の施設基準が定められています。(※3)
その中には、診療における偶発症などの緊急時に対応するための設備に関する基準もあり、次の装置・器具等を有していることが定められています。
- 自動体外式除細動器(AED)
- 経皮的動脈血酸素飽和度測定器(パルスオキシメーター)
- 酸素供給装置
- 血圧計
- 救急蘇生セット
- 歯科用吸引装置
また、AEDについては、保有していることが分かる院内掲示を行っていることが望ましいとされています。
※3 参考:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省
4. 歯科診療特別対応連携加算(歯特連)とAED
歯特連は、特別な対応が必要な患者さんの診療について、他の医療機関との連携体制などを整えている歯科医療機関を対象とする加算です。
4-1. 歯特連の施設基準とAED

歯科診療特別対応連携加算(歯特連)では、歯科診療特別対応加算1・2・3の算定実績に関する要件に加え、緊急時に対応するための設備や医療機関との連携体制が定められています。(※4)
歯特連では、緊急時に対応するための設備として、次の装置・器具等を有していることが定められています。
- 自動体外式除細動器(AED)
- 経皮的動脈血酸素飽和度測定器(パルスオキシメーター)
- 酸素(人工呼吸・酸素吸入用のもの)
- 救急蘇生セット
このように、歯特連でもAEDは、施設基準に定められた設備の一つです。
※4 参考:基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省
5. AEDの院内掲示は必要?掲示方法とステッカーを紹介
ここまで、AEDに関係する施設基準について解説してきました。ここからは、施設基準にも関係するAEDの院内掲示について、必要性や掲示方法を詳しく紹介します。
5-1. 施設基準に記載のAED院内掲示
施設基準では、AEDの院内掲示についても定められているものがあります。加算ごとの扱いを以下にまとめました。
施設基準におけるAED院内掲示の取り扱い
| 施設基準 | AEDの院内掲示 |
|---|---|
| 外安全1 | 必要 保有していることが分かる院内掲示を行うことが施設基準に定められています。 |
| 外安全2 | 必要 保有していることが分かる院内掲示を行うことが施設基準に定められています。 |
| 口管強 | 望ましい 保有していることが分かる院内掲示を行うことが望ましいとされています。 |
| 歯特連 | 記載なし AEDを有することが定められていますが、AEDの院内掲示について明記されていません。 |
このように、外安全1・2では、AEDを保有していることが分かる院内掲示を行うことが施設基準に明記されています。口管強では、同様の掲示が望ましいとされています。
5-2. AEDステッカーで設置場所を分かりやすくする
では、AEDの院内掲示は、どのように行えばよいのでしょうか。
受付など、来院者からも見えやすい場所にAEDを設置している場合は、AEDを設置していることが分かるステッカーなどを入口や受付に掲示する方法があります。
一方、診療室など外からはAEDの設置場所が分かりにくい場所に設置している場合は、AEDが院内のどこにあるのかも表示しておくと、設置場所を確認しやすくなります。
AEDコムでは、AEDの設置場所を知らせるためのAEDステッカーテンプレートを無料で提供しています。AEDを設置している施設であることを知らせるタイプのほか、院内のどこにAEDがあるのかを記入できるタイプもご用意しています。
院内掲示用のステッカーをお探しの方は、ぜひご活用ください。
ダウンロード用ステッカーテンプレートデザインサンプル



※サイズはA4です。印刷するだけでそのままご使用できます。
6. 歯科医院でAEDを設置するときに確認したいポイント
院内掲示のほかにも、AEDを歯科医院へ設置する際に気を付けたいポイントがあります。
6-1. AEDの状態を定期的に確認する

AEDは「設置すること」だけでなく「使える状態を維持すること」が重要です。
厚生労働省からも、AEDの設置者等に対して、日常点検や消耗品の管理など、適切な管理を行うよう呼びかけています。(※5)
AEDの日常点検では、まずインジケータを確認し、AEDが正常な状態であることを確認しましょう。
また、AEDには電極パッドやバッテリーなどの消耗品があります。これらには使用期限があるため、定期的な交換が必要です。AED本体にも耐用期間(寿命)があるため、あわせて確認しておきましょう。
日常点検の具体的な方法については、AEDの日常点検の方法はこちらをご覧ください。
※5 参考:AEDを点検しましょう!|厚生労働省
6-2. 訓練やシミュレーションを行う
AEDの使用方法を知っていても、実際の緊急時には慌ててしまう可能性があります。定期的に訓練やシミュレーションを行い、誰が119番通報をするのか、誰がAEDを取りに行くのかなど、院内での役割分担や対応手順をあらかじめ決めておくことも大切です。
6-3. 導入後の管理・サポート体制を確認する
AEDは長期間使用するものだからこそ、導入後の管理やサポート体制についても事前に確認しておくことが大切です。
例えば、消耗品の交換時期の案内や定期的な点検、故障や使用後の対応など、導入後にどのようなサポートを受けられるのかを事前に確認しておくと安心です。
また、万が一の際にすぐ問い合わせができるよう、販売店やメーカーなどの連絡先、AEDの製造番号などをスタッフ間で共有しておきましょう。
7. 歯科医院のAEDについてよくある質問
歯科医院のお客様からよくいただくご質問を、FAQ形式でまとめました。AEDの導入を検討する際の参考にしていただけたらと思います。
8. まとめ
歯科医院へのAEDの設置は、すべての歯科医院に一律で義務付けられているわけではありません。
一方で、2026年10月時点では、歯科外来診療医療安全対策加算1・2(外安全1・2)、口腔管理体制強化加算(口管強)、歯科診療特別対応連携加算(歯特連)の施設基準にAEDが記載されています。
ただし、これらの加算はAEDを設置するだけで算定できるものではなく、人員配置や研修、医療安全管理、緊急時の連携体制など、それぞれの施設基準に定められた要件を満たす必要があります。
また、AEDは設置することだけでなく、いざというときにすぐ使用できる状態を維持しておくことも重要です。設置場所を分かりやすく表示し、定期的に本体やバッテリー、電極パッドなどの状態を確認するとともに、スタッフが緊急時の対応を身につけておくことも大切です。
患者さんやスタッフの万が一に備え、歯科医院の環境に合ったAEDを選び、適切に設置・管理できる体制を整えておきましょう。







