AED設置の基準と適切な場所は?企業の義務や導入後の管理方法も解説
企業や施設における安全管理の重要性が高まるなか、AEDの設置を検討している担当者の方も多いのではないでしょうか。
AEDは突然の心停止から命を救うために欠かせない医療機器ですが、ただ施設内に置けばよいというものではありません。いざというときに確実に機能し、誰でもすぐに使える状態にしておくことが求められます。
本記事では、AEDを設置する際の適切な場所やガイドラインに基づく基準、企業における法的義務の有無、そして導入後の適切な管理方法について詳しく解説します。施設を利用するすべての人々の安全を守るための参考としてご活用ください。
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1. AEDの設置はなぜ重要なのか?

AEDの設置が社会全体で求められている背景には、急な心疾患によるリスクの高さが関係しています。突然人が倒れた際、周囲の人が迅速に救命処置を行える環境を整えることが、生存率を大きく左右します。
そのため、学校やオフィス、商業施設など、多くの人が利用する場所では、AEDを迅速に使用できる環境を整えることが重要です。
ここでは、AEDが果たす役割と、心疾患リスクに対する備えの重要性について解説します。
1-1. 急な心停止から命を守る役割
AED(自動体外式除細動器)は、心室細動や心室頻拍といった致死的な不整脈によって、全身へ血液を送り出せなくなった心臓に電気ショックを与える医療機器です。
2004年からは医療従事者だけでなく一般市民も使用できるようになり、救命現場で広く活用されています。
心停止では時間の経過とともに救命率が低下し、何も処置を行わなければ1分ごとに約10%ずつ救命率が下がるとされています。
119番通報から救急車が現場に到着するまでの全国平均は約9.8分です。(※1)そのため、救急車が到着するまでの間に、現場に居合わせた人がAEDを使って初期対応を行うことが、傷病者の命を救い、社会復帰の可能性を高める最大の鍵となります。
※1 参考:総務省消防庁:令和7年版 救急救助の現況
1-2. 心疾患による死亡リスクへの備え
日本国内において、心疾患は悪性腫瘍に次いで死因の上位を占めており、年間で非常に多くの方が命を落としています。健康そうに見える人であっても、突然心停止を起こすリスクはゼロではありません。
そのため、多数の人が集まる場所や日常的に長時間過ごすオフィスなどにAEDを設置し、いつ誰に心疾患が起きてもすぐに対応できる体制を構築しておくことが極めて重要です。
2. 企業や施設にAEDの設置義務はある?
自社や管理する施設にAEDを設置する際、法律で義務付けられているのかどうかは多くの方が疑問に感じるポイントです。現時点での法的な位置づけや、自治体独自の取り組み、そして企業に求められる責任の観点から解説します。
AEDの設置に関する法的義務と企業の責任
| 観点 | 設置義務・推奨の概要 |
|---|---|
| 法律上の義務 | 現在、国が定める法律による一律の設置義務はない |
| 自治体の条例 | 一部の自治体で大規模施設等への設置を義務化または推奨 |
| 安全配慮義務 | 労働契約法に基づく従業員の安全確保の一環として推奨される |
2-1. 法律上の設置義務について
日本において、すべての企業や施設に対してAEDの設置を義務付ける国の法律は現在のところ存在しません。したがって、法律違反を理由に罰則を受けることはありません。
しかし、2004年に一般市民によるAEDの使用が解禁されて以来、国や関連機関は公共空間や人が多く集まる施設への設置を強く推進しています。法律上の義務がないからといって設置が不要というわけではなく、社会的な要請としてAEDの普及は急速に進んでいます。
2-2. 自治体の条例による義務づけ
国レベルの法律での義務はありませんが、自治体によっては独自の救急条例を制定し、一定の基準を満たす施設に対してAEDの設置を義務付けている場合があります。
例えば横浜市では、救急条例第6条および安全管理局告示第1号に基づき、劇場・映画館・百貨店・ホテル・病院・福祉施設など、不特定多数の人が利用する施設のうち、一定の規模要件を満たす施設にAEDの設置を義務付けています。(※2)
また、茨城県や千葉県でも、県民の救命率向上を目的としてAEDなどの救急資器材の設置促進に取り組んでいます。このように自治体によって方針や要件が異なるため、自社施設が所在する地域の条例やガイドラインを事前に確認することが重要です。
※2 参考:横浜市:AED設置義務化のお知らせ
2-3. 企業の安全配慮義務という観点
企業には、労働契約法第5条に基づき、従業員が安全かつ健康に働ける環境を整備するための安全配慮義務が定められています。(※3)
AEDの設置は、企業の安全配慮義務を果たすための有効な取り組みの一つと考えられています。 AEDを設置することで、心停止が発生した際に迅速な救命処置を行える体制を整えられるほか、従業員や来訪者の安全意識向上にもつながります。
また、AEDの導入に加えて、定期的な救命講習の実施や緊急時対応マニュアルの整備などを行うことで、より実効性の高い安全管理体制を構築することができます。
※3 参考:e-Gov法令検索 労働契約法
3. AEDの適正配置に関するガイドラインの基準

どこにどれだけのAEDを配置すべきかについては、一般財団法人日本救急医療財団などが示しているガイドラインが参考になります。救命率を最大化するための具体的な設置基準について解説します。
AED設置ガイドラインの主な基準
| 項目 | 基準・目安 |
|---|---|
| ガイドラインの基準項目 | 心停止発生リスクが高い場所 |
| 目標とする処置時間 | 心停止の発生から5分以内にAEDによる処置を実施できること |
| 設置間隔の目安 | 現場から片道1分以内でAEDを持ち出せる配置(距離の目安は約300m) |
AEDの適正配置に関するガイドラインについて詳しく知りたい方は、【2019年】AEDの適正配置に関するガイドライン公表。5年ぶりに何が変わった?をご覧ください。
3-1. 心停止発生の可能性が高い場所
ガイドラインでは、心停止が起こるリスクが高い場所への優先的な設置を推奨しています。
具体的には、多くの人が利用する施設や、心停止が発生した際に迅速な救命処置が求められる場所が設置の検討対象となります。大勢の人が行き交うターミナル駅、激しい運動が行われるスポーツ施設、高齢者が多く利用する施設などは、優先的な設置が推奨される代表的な場所です。
自社の事業内容や施設の利用者の特性を踏まえ、リスクの度合いを評価することが第一歩となります。
3-2. 心停止から5分以内に処置できる配置
救命率を高く保つためには、心停止から遅くとも5分以内に最初の電気ショックを与えられるかどうかが非常に重要です。
心停止後は時間の経過とともに救命率が大きく低下するため、AEDを使用できるまでの時間をできる限り短縮しなければなりません。そのため、AEDは傷病者の発生場所から迅速に持ち出せる位置に配置し、救命処置を速やかに開始できる環境を整えることが重要です。
3-3. 現場から片道1分以内でAEDを持ち出せる配置(距離の目安は約300m)
5分以内の除細動を実現するためには、AEDを現場から片道1分程度で持ち出せる範囲に配置することが望ましいとされています。施設の構造や動線にもよりますが、距離に換算すると水平移動距離では約300メートル以内が一つの目安です。
広大な施設や複数階の建物では、1台だけではすべてのエリアをカバーできない場合があります。そのため、施設の規模やレイアウトに応じて複数台の設置を検討し、どの場所でも迅速にAEDを使用できる環境を整えることが求められます。
大阪・関西万博でのAED配置事例
2025年大阪・関西万博では、「大阪・関西万博での心臓突然死ゼロ」を目標に、会場内へ計150台のAEDを配置しました。心停止から3分以内にAEDを使用できる体制を目指し、1台の活用範囲を直径150mとして配置するとともに、「AED GO」による位置情報の共有や救急ボランティアへの通知機能を導入し迅速な救命活動を支援する体制が整備されました。この事例からも、AEDは設置台数だけではなく、迅速に持ち出して使用できる配置計画が重要であることが分かります。(※4)
※4 参考:公益社団法人2025年日本国際博覧会協会:2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)における医療救護対策実施計画
AED GOについて詳しく知りたい方は、【アプリ】消防の119番通報と連携したAEDアプリ「AED GO」のまとめをご覧ください。
4. AEDの効果的な設置場所とポイント

基準を満たすエリア内にAEDを配置する際、建物内のどの場所に置くかが緊急時の初動に大きく影響します。一刻を争う事態において、誰でも迷わず迅速にAEDを活用できるための効果的な設置ポイントを解説します。
AEDを設置する際のポイント
| 設置場所のポイント | 理由と効果 |
|---|---|
| 人目につきやすい場所 | 緊急時に場所を思い出せ、探す時間を大幅に短縮できる |
| 誰でもアクセス可能な場所 | 特定の部屋を避け、関係者以外も自由に使用できる |
| 階層移動しやすい場所 | エレベーターホールなど、別フロアへの移動が容易になる |
| 適切な保管環境 | 極端な温度変化や多湿を避け、機器の故障を未然に防ぐ |
4-1. 人目につきやすく分かりやすい場所
AEDは、緊急時にすぐに存在を認識できる場所に置くことが大原則です。建物のメインエントランス、受付カウンターの横、多くの人が利用する食堂や休憩室の入り口など、日常的に従業員や来訪者の視界に入る場所が最適です。
さらに、AEDが収納されていることを示す専用の立体ステッカーや案内標識を掲示し、遠くから見ても一目でわかる工夫を施すことで、緊急時の混乱状態でも迷わず探し出すことができます。
4-2. 誰でもすぐに取りに行ける場所
心停止の現場に居合わせた人は、必ずしもその施設の職員とは限りません。そのため、特定の人物しか入れない関係者専用の部屋や、セキュリティゲートの内側、営業時間外は施錠されてしまう場所への設置は避けるべきです。
防犯を気にして収納ボックスに鍵をかけてしまうと、肝心なときに取り出せず手遅れになる恐れがあります。誰でも自由にアクセスできる開かれた空間に設置することが重要です。
4-3. 階層移動しやすいエレベーターや階段付近
複数階にまたがるビルや施設の場合、すべてのフロアにAEDを設置するのが理想的ですが、予算の都合で難しいこともあります。
すべてのフロアへの設置が難しい場合は、エレベーターホールやメインの階段のすぐそばに配置してください。これにより、AEDがないフロアで緊急事態が発生した際にも、上下の移動を最短経路で行うことができ、機器を素早く現場に運ぶことが可能になります。
4-4. 適切な温度と湿度が保たれた保管環境
AEDは精密な医療機器であり、保管環境の温度範囲が定められています。取扱説明書に記載された保管条件を守らなければ、いざというときに正常に作動しない危険があります。
直射日光が強く当たる窓際、極端に高温になるボイラー室の近くは避け、年間を通じて環境が安定している場所に設置してください。屋外に設置する場合には専用の収納ケースを使用してください。
屋外設置について詳しく知りたい方は【屋外設置】AEDを屋外に設置するには。問題点と設置方法のまとめ。をご覧ください。
5. AEDの設置が推奨される代表的な施設

社会全体で心停止による死亡者を減らすため、厚生労働省が公表しているAED配置に関する指針(※5)ではAEDの設置が望ましい施設や環境が示されています。ここでは、その中でも特に代表的な施設を紹介します。
なお、AEDの設置が推奨される場所はこれらに限らず、人が多く集まる場所や心停止発生リスクが高い施設なども対象となります。
AEDの設置が推奨される代表的な施設
| 推奨される主な施設 | 設置が求められる主な理由 |
|---|---|
| 医療・福祉・介護施設 | 高齢者や基礎疾患を持つ人の利用が多くリスクが非常に高い |
| 学校などの教育施設 | 運動中の事故や、生徒と教職員の安全確保のため |
| 駅・空港・交通機関 | 不特定多数の人が集まり、救急隊の到着に時間を要する |
| スポーツ関連施設 | 激しい運動により心臓への負担が急激に高まるため |
| 大規模な商業施設 | 幅広い年代の利用者が多く訪れ、突発的な事態が起こる |
※5 参考:一般財団法人日本救急医療財団:AEDの適正配置に関するガイドライン
5-1. 病院や介護施設などの医療・福祉施設
病院、診療所、特別養護老人ホーム、デイサービスセンターなどの医療・福祉関連施設は、持病を抱える方や高齢者が多く集まる場所です。体調の急変が起こりやすい環境であるため、AEDの設置が推奨されています。
施設内には医師や看護師が常駐していることが多いですが、すべての場所に常に医療従事者がいるわけではありません。一般の介護スタッフや事務職員が第一発見者となった場合でも、すぐに初期対応ができるようにAEDの使用訓練を定期的に実施するとともに、施設規模に応じて迅速に持ち出せる場所へ適切に配置することが重要です。
5-2. 学校や幼稚園などの教育施設
幼稚園から大学に至るまでの教育施設では、子どもたちや教職員の命を守るためにAEDの設置が強く推奨されています。
学校では、体育の授業や部活動中などに突然心停止が発生するケースが報告されています。そのため、職員室や保健室だけでなく、体育館、グラウンド、プールといった運動施設の近くにも優先的に配置することが望まれます。
学校のAEDの設置について詳しく知りたい方は、学校での突然死は防げる?子どもの命を守る「使えるAED」とはをご覧ください。
5-3. 駅や空港などの公共交通施設
多くの人々が日常的に利用する鉄道の駅、長距離バスターミナル、空港、高速道路のサービスエリアなどは、それだけ心停止の事案が発生する確率が高くなります。
こうした場所では、通勤通学客から旅行者まで幅広い年齢層が交差するため、わかりやすい案内表示とともに設置することが重要です。
5-4. 体育館やフィットネスジムなどのスポーツ関連施設
運動時は心臓への負荷が増加するため、心停止が発生するリスクが高まります。
フィットネスクラブ、市民体育館、テニスコート、プールなどでは、年齢や体力にかかわらず急な心停止が起こり得ます。施設のどの場所からでも速やかにAEDを持ち出せるように配置し、スタッフ全員が救命処置の手順を熟知しておくことが施設運営者の責任となります。
5-5. デパートやショッピングモールなどの商業施設
ショッピングモールや百貨店、大型スーパーマーケット、ホテル、テーマパークといった商業・レジャー施設は、休日を中心に大勢の来場者で混雑します。
広大な敷地や複雑なフロア構造を持つ施設が多いため、傷病者が発生した際に救急隊が現場に到着するまでに想定以上の時間がかかることがあります。そのため、施設内のスタッフや居合わせた一般客がすぐにAEDを使えるよう、施設規模に応じた十分な台数を適切な間隔で配置することが推奨されます。
6. AEDの設置後の適切な管理とメンテナンス方法

AEDは設置して終わりではなく、常に使える状態を維持するための継続的な管理が不可欠です。メンテナンスを怠ると、いざという時に救命の機会を逃すことになります。
ここでは、導入後に必ず行うべき管理業務について解説します。
AED導入後に必要な管理・メンテナンス項目
| 管理・メンテナンス項目 | 実施内容と目的 |
|---|---|
| 日常点検と消耗品管理 | インジケータの確認と、電極パッド・バッテリーの使用期限管理を行う |
| AEDマップへの登録 | 日本救急医療財団のマップへ登録し情報を共有する |
| 従業員教育と訓練 | 心肺蘇生法とAEDの正しい使い方を定期的に学ぶ機会を作る |
6-1. 日常点検と消耗品の定期交換
AEDが正常に作動するかどうかを確認するため、点検担当者を決めて日常的な点検を行う必要があります。
多くのAEDにはセルフテスト機能が備わっています。本体のインジケーターで正常な状態か目視で確認する作業を定期的に行ってください。
また、電極パッドとバッテリーには使用期限があります。期限が切れた状態で使用するとトラブルにつながるため、期限を管理し、適切な時期に新しいものと交換してください。
日常点検について詳しく知りたい方は、AEDの日常点検方法をご覧ください。
6-2. 全国AEDマップへの設置者登録
AEDを設置した際は、一般財団法人日本救急医療財団が運営する「財団全国AEDマップ」への登録が推奨されています。(※6)
登録を済ませることで、インターネット上の地図にAED設置場所が表示されるようになります。これにより、近隣で心停止の傷病者が発生した際に、周囲の人がスマートフォンなどで検索してAEDを借りに来ることが可能になり、地域全体の救命率向上に貢献できます。
また、近年ではAEDの設置場所をより身近に知ってもらう取り組みも進められています。例えば、位置情報ゲーム「Pokémon GO」では、日本AED財団との連携により、一部のAED設置場所がゲーム内の「ポケストップ」として登録され、AEDの認知向上につなげる取り組みが行われています。詳しくは、AEDがポケモンGOのポケストップに。広がるAED認知の新しいかたちをご覧ください。
※6 参考:一般財団法人日本救急医療財団:財団全国AEDマップ
6-3. 従業員への救命教育と訓練の実施
どんなに高性能なAEDを最適な場所に設置していても、現場にいる人が使い方を知らなければ宝の持ち腐れとなってしまいます。
万が一の事態に直面した際、パニックにならず冷静に行動できるよう、従業員に対して定期的な救命講習を実施することが大切です。胸骨圧迫などの心肺蘇生法と、練習用AEDを使用した実践的な訓練を定期的に実施することで、組織全体の安全意識と対応力が高まります。
7. まとめ
AEDの適切な設置は、従業員や施設利用者の命を守るための重要な備えです。
ガイドラインに基づいた分かりやすく取り出しやすい場所への配置と、日々の点検による維持管理が救命の鍵を握ります。本記事が、AEDの導入や設置場所の見直しを検討する際の参考になれば幸いです。
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