正常な呼吸があっても、意識がない人への応急処置ってどうするか知っていますか?
たとえば、AEDの使用後に、呼吸は戻ったけれど、呼びかけても意識がないときってどうすればいいのでしょうか?また、救急車が到着するまでの間、仰向けのままでいいのでしょうか? 今回、そんな場合に使える【回復体位】についてまとめます。
補足
回復体位の実施については、JRC蘇生ガイドライン2015では、訓練を受けた人が行うファーストエイドとして推奨しています。ただし、「救急蘇生法の指針2015(市民用・解説編)」には、訓練を受けた人への推奨という記述はなく、一般向けに紹介されています。いざという時のために覚えておくといいのではないでしょうか。
1. 回復体位とは
反応はないが、正常に呼吸をしている傷病者に対してとらせる姿勢で、横向きの姿勢で寝かせた体位を「回復体位(recovery position)」といいます。
回復体位にすることで、嘔吐した胃の内容物などで喉が詰まったり、気道が詰まったりするのを予防できます。
2. 回復体位の姿勢
まず、回復体位を取る前に、安全な場所に傷病者を移動させます。道路の真ん中であったり、線路に近い場合などは安全な位置に移動させましょう。
回復体位では、傷病者を横向き(側臥位)にします。
傷病者の下になる腕を前に伸ばし、上になる腕を曲げ、その手の甲に傷病者の顔を乗せるようにします。横向きに寝た姿勢を安定させるために、上になる膝を90度曲げ前方に出します。
言葉で説明すると分かりにくいですので、イラストでも説明します。傷病者の手の位置と膝の角度がポイントです。
回復体位の姿勢における注意点
- A.横向き状態を支えるように、上腕の手の甲は顎の下に入れる
- B.上側の膝を約90度に曲げる
救急車を呼んでおよそ30分経っても到着しない場合には、体位を反対向きにしましょう。長時間、同じ姿勢にすると、傷病者の下になっている側の神経が圧迫され障害をきたす可能性があるためです。
3. どういう状況で回復体位にするの?
3-1. どういう状況で回復体位をとるの?
傷病者が、正常な呼吸をしているけれど、意識がないときです。
そして、呼吸をしていない場合や死戦期呼吸など正常な呼吸ではない判断した場合には、すぐに心肺蘇生とAEDを実施しましょう。心肺蘇生を行う場合は、仰向けにします。この時、頚椎がねじれないように頭を支えながら仰向けにします。
心肺蘇生法やAEDを使った一次救命処置については、「【解説】一次救命処置の手順。心肺蘇生法ガイドライン2015版 」の記事をあわせてご参照ください。JRC蘇生ガイドライン2015対応です。
AEDの使用方法については、ポスターで無料配布も行っています。よろしければ、下記ボタンからダウンロードください。
3-2. 救急車を待っている間は回復体位?
救急車を待っている間は、傷病者に楽な姿勢を聞き、望む姿勢にして安静を保ちましょう。
「3-1. どういう状況で回復体位をとるの?」にも書きましたが、正常な呼吸で意識がない場合は、回復体位にします。呼吸が正常でない場合は、心肺蘇生を行いながら救急隊の到着を待ちます。
表. 傷病者の意識・呼吸と取らせる姿勢
傷病者の状態 | 取らせる姿勢 |
---|---|
意識があり、呼吸も正常な場合 | 傷病者に楽な姿勢を聞き安静を保つ |
意識はないが、呼吸が正常な場合 | 回復体位 |
呼吸が正常でない場合 | 心肺蘇生法の実施 |
4. 回復体位のポイント
回復体位を行う際のポイントをまとめます。
回復体位のポイント
- まずは、傷病者に普段どおりの正常な呼吸があるかを確認。
- 正常な呼吸+意識がない=回復体位を実施。
- 普段どおりの呼吸ではない=心肺蘇生法を実施。
- 寝かせた側の腕を前に伸ばす。
- 上側の腕を曲げて、手の甲を頭の下に入れる。
- 姿勢を安定させるため、上側の足のひざを90度に曲げる。
まとめと所感
回復体位いかがでしたでしょうか。ポイントは呼吸と意識です。
なお、あまり関係ない話なのですが、赤ちゃんや子どもが寝ているとき、自然と回復体位になっていることってありませんか? うちの子が小さいときには、よくやっていました。「呼吸がしやすくて楽な姿勢なんだろうなぁ」と見ていた記憶があります。
誰でもできるような応急処置ですので覚えておくのはいかがでしょうか。
参考文献
- 「JRC蘇生ガイドライン2015」監修;一般社団法人日本蘇生協議会・発行:株式会社医学書院(2016年2月15日発行第1版第1刷)
- 「救急蘇生法の指針2015(市民用・解説編)」株式会社 へるす出版(2016年3月31日)