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【公表】JRC蘇生ガイドライン2020を読み解く。一次救命処置の重要ポイント。

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2021年3月31日に、日本蘇生協議会からJRC蘇生ガイドラインが公表されました。

JRC蘇生ガイドラインは、小児・成人の心停止、応急処置のやり方など、救命の指針になるガイドラインです。皆さんが受ける消防署の救命講習や、AEDの音声ガイダンスなどもこのガイドラインに沿って作られます。

私たち一般人に関わる一次救命処置に注目しながら、蘇生ガイドライン2020を読み解いていこうと思います。何が変更になったのでしょうか?

JRCって何?

まずは、「JRC蘇生ガイドラインのJRCって何?」という方は、本記事でも軽く触れますが、「【図で紹介】JRCガイドラインの基礎知識。世界の蘇生委員会との関係など。」の記事から読んでいただけると分かりやすいかと思います。

本記事の内容

専門用語が多いガイドラインを一般の方が要点を簡単に抑えられるように、一次救命を中心に重要だと思われる変更点、注目ポイントをまとめています。

また、当記事はオンライン版の内容になります。過去の流れではオンライン版ののち、修正が入った完全版が書籍として出ますので、内容や表現に修正が入る可能性があります。

1. JRC蘇生ガイドラインとは

JRC蘇生ガイドラインとは?

国際蘇生連絡協議会[通称 ILCOR(イルコア)]が作成した心臓救急に関する国際コンセンサス[通称CoSTR(コースター)]をベースに、各国・各地域事情に適した救急、蘇生のガイドラインを策定しています。

筆者注記1:イルコア? コースター?

簡単にいうと、世界の心臓・救急の専門家が「今の救命処置はこんな手順がいいのではないか?」、「前回のガイドラインからこう変えたらどうか?」という話し合いを専門家の知識や根拠に基づいてガイドラインをまとめます。その後、各地域の特徴にあった内容に変えて、さらにはおおやけにコメントも集めながらガイドラインを作っていきます。

たとえば、海外だと病院から救急車が出動する国もあります。地域によって救急の体制や、AEDの普及率も異なるわけです。

CoSTRをもとに日本蘇生協議会(JRC)と呼ばれる団体が、日本版に作成したガイドラインがJRC蘇生ガイドラインです。

筆者注記2:ガイドラインは5年ごと。5年って遅くない?

2021年4月現在の救命講習やAEDはJRC蘇生ガイドライン2015を基にしています。「5年の更新って遅くないですか?」とか「ガイドライン2020に準拠したAEDが欲しい」と問い合わせを受けることがあります。

この5年のスパンを救命講習を例に挙げて説明すると、

  1. 公表
  2. 救急蘇生法の指針
  3. 救命講習の内容決定
  4. 各消防署へ
  5. 講習を通して浸透
  6. 検証
  7. 次のガイドラインへ

といった流れを有するため、それなりの時間が掛かります。

AEDももちろん同じで、ガイドラインが公表されてから、今のAEDの音声ガイダンスを変える必要があるかなどを検討し、ガイドライン準拠と各メーカーが表記するまでは、新しいガイドラインにのものになりません。

余談ですが、この5年に特段の決まりがあるわけではないとJRC蘇生ガイドラインの作成に参加された方から聞いたことがあります。上記の流れや分かりやすさなどを考慮してたまたま5年のスパンになっているそうです。

2. ガイドライン2020一次救命処置の重要ポイント

JRC蘇生ガイドラインの一次救命で重要なポイントは以下です。

2-1. 反応がない、または反応の有無について判断に迷った場合は119番して指示を仰ぐ

傷病者(倒れた人)に反応がない場合、判断に迷った場合でも、バイスタンダー(救助者)は119番通報をして、電話口の指令員の指示を仰ぎます。

ポイント:口頭指導が受けられます

119番通報をすると、地域の指令センターに繋がります。そこで、救急車の手配を行うのですが、まず指令員の人から、「火事ですか?救急ですか?」と聞かれます。

人が倒れているので、「救急です」と答えます。ここで胸骨圧迫(心臓マッサージ)や人工呼吸、AEDの使い方を指令員から口頭で指導を受けることができます。

指令員から口頭で指導を受けることができます。

2-2. 反応なし、普段通りの呼吸なし、呼吸の判断に迷ったら胸骨圧迫

傷病者に反応が見られず、普段通りの呼吸ではない、もしくは呼吸の状態に迷ったら、すぐに胸骨圧迫から心肺蘇生を開始します。

ポイント:胸骨圧迫から開始

人工呼吸やAEDから開始するのではなく、まずは胸骨圧迫から開始します。

2-3. 胸骨圧迫は非常に重要。胸骨圧迫のポイント

胸骨圧迫を行う場合、「押す位置」、「押す深さ」、「押す速さ」、「圧迫の解除」、「中断時間」に注意します。下表で詳しくまとめましたので、それぞれ確認しましょう。

ポイント:胸骨圧迫のポイント

胸骨圧迫のポイント

3. 人工呼吸とAEDの使用について

次は人工呼吸とAEDの使用についてです。

3-1. 訓練を受けていて、技術と意思がある場合は人工呼吸を

訓練を受けていて、人工呼吸を行える技術とその意思がある場合には、胸骨圧迫とあわせて人工呼吸を行います。

このときの胸骨圧迫と人工呼吸の比率は、30:2です。30回胸を押したら、2回息を吹き込みます。特に小児の心停止では人工呼吸を組み合わせた心肺蘇生が望ましいです。

3-2. 人工呼吸中の胸骨圧迫の中断は10秒以内

人工呼吸を2回行うときに胸骨圧迫を中断してる時間10秒以内です。心肺蘇生全体の時間を100とした場合、その60%は胸骨圧迫に使います。

救命講習などで人工呼吸の訓練を受けていない場合は、胸骨圧迫のみの心肺蘇生を行います。ただし、小児の心停止では,人工呼吸を組み合わせた 心肺蘇生を行うことが望ましいとされています。

3-3. AEDが到着したら電源を入れて、音声ガイダンスに従う。

AEDはすぐに電源を入れて、AEDから流れる音声メッセージに従って電気ショックを行います。電気ショックを行った後、または「電気ショックは不要です。」とガイダンスした後は、すぐに胸骨圧迫を再開しましょう。

筆者注記3:心停止しているのに、電気ショックが不要?

AEDの電源を入れたのに、電気ショックが不要だとアナウンスされる場合があります。

この場合も胸骨圧迫などの心肺蘇生は続ける必要があり、電気ショックが出なかったから心臓が動いている!という意味ではありません。

これは、AEDが何をするための機械か、そして心停止の種類を知ることでその理由が分かります。気になった方は、AEDが適応可能な症状とは。心電図で見る4種類の心停止。を併せてお読みください。

3-4. 心肺蘇生とAEDは救急隊に引き継ぐまで

救急隊が到着するまで、心肺蘇生とAEDによる除細動を繰り返します。

救急隊や、医師などの医療従事者に引き継ぐか、明らかに普段通りの呼吸や目的のある仕草(胸骨の圧迫の手を払ったり、受け答えするなど)が出るまで繰り返し続けます。

4. ガイドライン2015との違い

JRC蘇生ガイドライン2015と2020で一次救命の違いはあるのでしょうか?

オンライン版の段階では、大きな変更が入ってはいない印象ですが、筆者が注目したのは、「判断に迷った場合」という表現が追加された点です。

ガイドライン2015の呼吸の確認では、「呼吸なし・または死戦期呼吸」という記載に、注意書きで分からないときは胸骨圧迫を開始するという流れになっていました。

ガイドライン2020では、死戦期呼吸の文言が消え、「呼吸なし・判断に迷う」場合は、ただちに胸骨圧迫を開始という流れになっています。

意識の確認についても、「反応なし」であれば大声で助けを呼び、119番とAEDの手配となっていましたが、2020では、「反応なし・判断に迷う場合」という判断基準になっています。

表. ガイドライン2015とガイドライン2020の違い

ガイドライン2015 ガイドライン2020
呼吸なし・死戦期呼吸の判断 注意書きで呼吸なし・死戦期呼吸か分からないときは胸骨圧迫を開始するという記載 呼吸なし・判断に迷う場合は、ただちに胸骨圧迫を開始という記載
意識の確認 「反応なし」であれば大声で助けを呼び、119番とAEDの手配という記載 「反応なし・判断に迷う場合」であれば大声で助けを呼び、119番とAEDの手配という記載

有事の現場は、いつもと違う特異な状況です。救命講習を受けている人であっても、正確な判断をすることが難しいことを想定して、より一般人に分かりやすい判断基準に変えている印象です。

※死戦期呼吸:しゃくりあげるような呼吸で正常な呼吸ではなく、心停止の際に見られる呼吸。

5. 新型コロナウィルスの影響とその他の項目

ガイドライン2020では、コロナウイルスが流行した状況での対応についても加わっており、第1章の一次救命処置とは別の章でまとめられています。

今回まとめた一次救命処置のポイントには入っていませんが、今だ続くコロナ禍での状況を想定した一次救命の流れについてもガイドラインに入っています。

このほか、ファーストエイド(応急手当)や普及・教育の方策などもガイドラインにはありますので、後日、別記事でまとめる予定です。

参考文献

この記事を書いた人

清水 岳

清水 岳

株式会社クオリティー AED事業部 部長 : AEDコム・AEDガイド責任者、AED+心肺蘇生法指導者、高度管理医療機器販売・貸与管理者、防災士、上級救命講習修了。 専門店AEDコムを運営し、日本全国に年間2,000台を販売、導入企業数は10,000社を突破。心肺蘇生ガイドライン、AEDの機器に精通している。

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コメント(2件)

  • アバター ソメカワナオヒロ より:

    今晩は清水さま。はじめまして応急手当指導員の染川と申します。2020年ガイドライン大変わかりやさすく良かったです。そしてファ-ストエイドも楽しみにしてます。今後とも宜しくお願い致します。

    • 清水 岳 清水 岳 より:

      ソメカワナオヒロさん 大変うれしいコメントありがとうございます。
      ご期待に応えられるように頑張ります。今後ともよろしくお願いします!

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