あなたの会社に設置義務はある? AEDの設置基準まとめ。

最終更新日:2026年10月19日公開日:2015年8月9日

AEDの設置は、すべての施設に全国一律で義務付けられているわけではありません。ただし、自治体の条例によって設置が義務となる施設があるほか、学校や商業施設、スポーツ施設などではガイドラインにより設置が推奨されています。

「自社にAEDの設置義務はあるのか」「何人以上なら必要なのか」と疑問に思う方に向けて、法律と条例の違い、施設別の設置目安、配置方法、設置後の管理や登録について解説します。

1.AEDの設置義務はある?法律・条例の基本

AEDの設置を判断する際は、法令・条例による義務と、ガイドラインによる推奨を区別することが重要です。まずは施設が所在する地域の規定と、施設の用途・規模を確認しましょう。

1-1.AEDの設置は全国一律の法律で義務付けられている?

国の法律によってすべての学校、会社、店舗などにAEDの設置が一律に義務付けられているわけではありません。一方、法律上の一律の義務がないことと、AEDを設置する必要性が低いことは別です。

多くの人が利用する施設や、運動中の心停止が想定される場所などについては、日本救急医療財団の「AEDの適正配置に関するガイドライン」で設置が推奨されています。また、施設に適用される個別の規定や契約上の条件がないかも確認が必要です。

1-2.自治体の条例でAED設置が義務になる場合

自治体によっては、条例などで特定の施設へのAED設置を義務付けています。例えば横浜市では、一定規模以上の建物や、指定された駅舎・スポーツ施設などにAEDを含む救急資器材の整備が求められます。

対象となる施設や条件は自治体ごとに異なります。設置義務の有無を確認する際は、施設の所在地、用途、階数、延べ面積などを整理し、自治体の公式情報を確認してください。横浜市の具体例は「4.横浜市のAED設置義務」で紹介します。

1-3.自施設に設置義務があるか確認する方法

まず、施設が所在する自治体の公式サイトで「AED 設置義務 条例」などの情報を調べます。次に、対象施設の用途や規模に関する条件を確認しましょう。

判断が難しい場合は、施設の用途・所在地・階数・延べ面積を伝え、自治体の担当部署や消防機関に確認すると確実です。施設の新設・増改築・用途変更を行った際にも、適用される条件が変わっていないか確認しましょう。

2.AEDの設置基準と推奨施設|人数・利用者数の目安

法律による設置義務がない場合、設置の必要性を判断する参考となるのが、日本救急医療財団の「AEDの適正配置に関するガイドライン(2018年12月補訂版)」です。これは設置を推奨する場所や効果的な配置を示した指針であり、法的な設置義務を定めるものではありません。

2-1.ガイドラインでAEDの設置が推奨される施設

ガイドラインでは、人が多く集まる場所、心停止の発生リスクが高い場所、救急隊の到着に時間を要する場所などを考慮し、AEDの設置を検討する考え方が示されています。

主な施設の例は、次のとおりです。

  • 駅・空港・長距離バスターミナルなどの公共交通機関
  • スポーツジム、体育館、プール、競技場などのスポーツ関連施設
  • 大規模な商業施設、多数の来場者が集まる施設
  • 市役所、公民館、市民会館などの公共施設
  • 高齢者のための介護・福祉施設
  • 学校、大学、専門学校などの教育施設
  • 会社、工場、作業場
  • 大規模なホテル、コンベンション施設
  • 島しょ部・山間部など、救急隊の到着に時間がかかる場所

上記は主な例です。ガイドラインには長距離輸送機関、遊興施設、人口密集地域の公共施設なども挙げられています。

参考:AEDの適正配置に関するガイドライン(2018年12月補訂版)

2-2.何人以上ならAEDが必要?施設別の具体的な目安

AEDの設置について、すべての施設に共通する「何人以上なら義務」という人数基準はありません。ただし、ガイドラインには施設別に設置を検討する際の具体的な目安が示されています。

施設・業種 ガイドラインに示された目安
駅 1日の平均乗降者数が1万人以上の駅では設置が望ましい
大規模商業施設 1日の利用者数が5,000人以上、または常時成人が250人以上いる規模を目安に、複数台の計画的配置が望ましい
高齢者のための施設 50人以上の高齢者施設などでは設置が望ましい
会社・工場・作業場 例えば50歳以上の社員が250人以上働く施設では設置が望ましい
ゴルフ場 5分以内の電気ショックを目指し、コース内への複数台の配置が望ましい

出典:AEDの適正配置に関するガイドライン(2018年12月補訂版)。上記は推奨の目安であり、法的な設置義務の判定基準ではありません。

人数の目安を下回る施設でも、運動・入浴を行う場所や、救急隊の到着までに時間がかかる場所などでは設置を検討する意義があります。

2-3.AEDの設置台数はどう決める?

設置台数は、利用者数だけでなく、施設の広さ、フロア構成、移動経路、利用できる時間帯などを踏まえて検討します。例えば、工場の事務所と作業現場が離れている場合や、学校の校舎と体育館が離れている場合は、1台だけでは取りに行くまでに時間がかかることがあります。

複合施設やイベント会場では、時間帯によって出入口や人の流れが変わる場合もあります。通常時だけでなく、混雑時や休日などの利用状況も想定し、必要に応じて複数台の配置や一時的な増設を検討しましょう。

3.AEDの適正配置と設置後の管理方法

AEDは設置台数を確保するだけでなく、緊急時に短時間で使用できる場所に配置することが重要です。ガイドラインでは、心停止から5分以内に電気ショックを実施できる配置が目標として示されています。

3-1.5分以内の電気ショックを目指す配置の考え方

心停止が起きた際には、倒れた人の発見、119番通報、AEDの手配、電極パッドの装着などに時間がかかります。そのため、AEDを取りに行く時間だけでなく、使用するまでの一連の流れを考慮する必要があります。

受付やロビー、エレベーターホール付近など、初めて訪れた人でも見つけやすく、取り出しやすい場所が設置候補になります。体育館や運動場など、心停止のリスクが想定される場所からのアクセスも確認しましょう。

3-2.片道1分・約300m間隔はどう考える?

配置を考える際の一つの目安として、心停止の現場からAEDまで片道1分以内という考え方があります。関連資料では、時速9kmで移動できると仮定した場合、片道1分で約150m、直線上では約300m間隔で配置できるという試算が示されています。

ただし、約300mはすべての施設に当てはまる一律の設置基準ではありません。時速9kmは速い移動を想定した計算であり、実際には曲がり角、階段、扉、混雑などによって移動時間が長くなります。施設内では直線距離だけでなく、AEDを取りに行って戻るまでの実際の経路を確認しましょう。

参考:AEDの戦略的配置にむけて

3-3.高層ビル・広い敷地での配置のポイント

高層ビルでは、上下階への移動にかかる時間を考慮する必要があります。エレベーターや階段の近くなど、複数のフロアからアクセスしやすい場所を候補にし、必要に応じて複数台の配置を検討しましょう。

広い工場や敷地では、管理担当者がAEDを現場へ運ぶ体制を整える方法も考えられます。実際の動線を使って所要時間を確認し、移動に時間がかかる場所がないか見直すことが大切です。

3-4.AEDを使用できる状態に保つ点検・周知

AEDは、緊急時に取り出せることと、正常に作動する状態を維持することの両方が重要です。施錠された場所への設置はできるだけ避け、館内図や案内表示などで設置場所を周知しましょう。夜間や休日に利用する施設では、その時間帯の取り出し方法も確認しておきます。

また、AEDのインジケーター(状態表示)を毎日確認し、電極パッドやバッテリーの使用期限を管理しましょう。管理担当者や異常時の連絡先を決め、担当者が変わった際にも点検を継続できるようにしておくことが大切です。

参考:厚生労働省「自動体外式除細動器(AED)の適切な管理等の実施について」

4.横浜市のAED設置義務|条例の対象施設と条件

自治体による設置義務の具体例が横浜市です。横浜市救急条例第6条では、一定の防火対象物にAEDなどの救急資器材の整備を義務付けています。以下は横浜市の制度であり、全国共通の基準ではありません。

4-1.横浜市救急条例の概要

横浜市救急条例は2008年10月1日に施行され、AEDなどの救急資器材の整備義務は2009年4月1日から適用されました。対象施設では、AEDのほか、担架や毛布などの整備が求められます。また、傷病者が発生した際に応急手当を行える体制の整備も求められています。

4-2.設置義務の対象となる施設・規模の例

対象施設の条件には、次のような例があります。

施設の区分 対象となる条件の例
劇場、集会場、商業施設、ホテル、病院など、条例で定める一定の防火対象物 階数11以上かつ延べ面積10,000㎡以上、または階数5以上かつ延べ面積20,000㎡以上
地下街 延べ面積1,000㎡以上
駅舎・屋内プール・スポーツクラブなど 別途告示で指定される施設・規模に該当する場合

建物の用途によって対象条件が異なるため、この表だけで設置義務の有無を確定することはできません。詳細は横浜市の条例と関連告示で確認してください。

参考:横浜市救急条例(横浜市公式サイト)

4-3.横浜市で設置義務を確認するには?

まず施設の用途、階数、延べ面積を確認し、横浜市救急条例と関連告示の対象条件を照合します。複数の用途が入る建物や、用途変更を行った施設など、判断が難しい場合は横浜市消防局の担当部署へ確認しましょう。

すでにAEDを設置している場合も、必要な救急資器材や応急手当の体制が整っているか、併せて確認しておくとよいでしょう。

5.AED設置場所の公開とよくある質問

AEDを設置したら、周囲の人が設置場所を把握できるようにすることも大切です。日本救急医療財団の「全国AEDマップ」などに登録すると、公開に同意した設置情報を一般の利用者が確認できるようになります。

5-1.AEDの設置場所登録は義務?

日本救急医療財団の全国AEDマップへの登録は、義務ではありません。ただし、設置場所の周知に役立つため、財団では登録への協力を呼びかけています。自治体などに独自の届出制度がある場合は、別途その規定を確認してください。

なお、全国AEDマップに登録した情報が、すべての地域で必ず119番通報時の案内に利用されるとは限りません。

5-2.登録に必要な情報と手続き

全国AEDマップへの登録には、原則としてAEDに付属する登録書を使用します。登録書が見当たらない場合は、購入先や製造販売業者などに確認しましょう。リース・レンタルのAEDも登録できます。

登録の際は、施設名・住所に加え、「1階受付横」などの具体的な設置場所や利用可能時間を正確に伝えることが重要です。登録先によって入力項目や公開範囲は異なります。

参考:日本救急医療財団「全国AEDマップ登録のご案内」

5-3.移設・撤去・管理者変更時はどうする?

AEDを移設した場合や利用可能時間が変わった場合は、登録先の手続きに従って情報を更新しましょう。撤去や廃棄を行った場合は、古い設置情報が残らないよう削除手続きを確認します。

管理担当者が変わった際は、登録情報の確認に加え、日常点検の方法や消耗品の交換時期も引き継ぎましょう。登録情報、館内の案内表示、実際の設置状況を一致させておくことが重要です。

参考:日本救急医療財団「全国AEDマップ 登録に関するQ&A」

まとめ:AEDの設置義務を確認し、適切な配置と管理を行おう

AEDはすべての施設に全国一律で設置が義務付けられているわけではありませんが、自治体の条例によって設置義務が生じる場合があります。まずは施設の所在地や用途・規模に応じて、適用される規定を確認しましょう。

設置義務がない場合も、ガイドラインに示された施設別の目安や、心停止から5分以内の電気ショックを目指す配置の考え方が参考になります。設置後は、案内表示や日常点検、消耗品の期限管理、AEDマップへの登録などを通じて、必要なときに使用できる状態を維持することが大切です。

この記事の著者:清水 岳

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株式会社クオリティー AED事業部 部長 清水岳 : AEDコム・AEDガイド責任者、AED+心肺蘇生法指導者、高度管理医療機器販売・貸与管理者、防災士、上級救命講習修了。 AED専門店「AEDコム」を運営し、日本全国に年間3,000台以上を販売、導入企業数は16,000社を突破。心肺蘇生ガイドライン、AEDの機器に精通。

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「あなたの会社に設置義務はある? AEDの設置基準まとめ。」へのコメント

  1. 山部敏明 2022年12月27日 at 12:19 - Reply

    AEDを設置するにあたりAEDの取り扱いの責任者や管理責任者等の配置は必要ですか又、従業員等に取り扱いの講習などはどうすれば良いのでしょうか

    • アバター画像
      AEDコム 2023年1月4日 at 10:44 - Reply

      山部敏明さん コメントありがとうございます。
      はい。メーカーさんによりそれぞれですが、操作説明実施記録表というような名前の紙をメーカーに提出する必要がありまして、
      その中に、設置者や、設置管理担当者の記入欄がございます。主にメーカーからの不具合の連絡や設置場所の把握に使用されます。
      講習については消防署の救命講習をおすすめします。コロナ禍で数は減っておりますが、無料で受けることが可能です。