学校での突然死は防げる?子どもの命を守る「使えるAED」とは

Last Updated: 2026年3月4日Published On: 2026年3月4日

学校で子どもが突然倒れる——それは、どの学校でも起こり得ることです。

学校へのAED設置に法的義務はありませんが、現在ではほぼすべての学校にAEDが設置されています。しかし、重要なのは設置されていること自体ではなく、いざというときに確実に使える状態にあることです。

多くの学校で日頃から安全対策に取り組まれていることと思いますが、あらためて子どもの命を守るために確認しておきたいポイントがあります。

この記事では、学校での心停止の現状と、命を守る鍵となる「使えるAED」という考え方を解説します。学校のAED体制を見直し、いざという場面で迷わず行動できる備えにつなげていきましょう。

1. 学校でも起こり得る突然死と心停止の現実

学校の様子

突然死とは、急に倒れ、原則として24時間以内に回復しないまま亡くなる場合を指します。

突然死というと大人の病気を想像しがちですが、実は子どもにも起こることがあります。学校生活の中でも例外ではありません。

独立行政法人日本スポーツ振興センターによると、学校等の管理下の死亡事例の中で突然死は例年50~70%を占めています。その多くは心臓が原因の「心停止」によるものです。小・中・高校の児童生徒では年間およそ50~60件の心停止が発生しています。(※1)また、体育活動中の死亡事故の70%以上が突然死であるという調査もあり、学校生活の中で決して無視できないリスクです。

突然の心停止は、どの学校でも起こる可能性があります。だからこそ、まずは「起こるかもしれない」という認識を持つことが大切です。

緊急時に慌てず対応できるよう、一次救命処置の流れをまとめたフローチャートを更新しました。ガイドライン2025の変更点を反映した内容ですので、下記よりダウンロードのうえ、日頃の確認にお役立てください。

※1 参考:独立行政法人日本スポーツ振興センター:学校等の管理下の突然死

2. なぜ学校で突然の心停止は起きるのか

子どもの心停止の原因は一つではありません。ここでは、日本小児循環器学会の資料(※2)をもとに代表的なものを紹介します。

※2 参考:日本小児循環器学会:学校管理下AEDの管理運用に関するガイドライン

2-1. 先天性心疾患

先天性心疾患は、生まれつき心臓の構造に異常がある病気で、約100人に1人の割合でみられます。

学校で実施される心臓検診は、心疾患の早期発見につながり子どもの突然死を防ぐうえで重要な役割を果たしています。実際に、検診をきっかけに疾患が見つかり、適切な治療や生活管理につながるケースも少なくありません。

現在は医療の進歩によって、多くの子どもが治療を受け、普段の生活を送れるようになっています。しかし、検診ですべての心疾患が見つけられるわけではありません。また、疾患の種類や術後の状態によっては不整脈のリスクが残る場合もあります。そのため、心疾患のない子どもと比べて注意が必要なケースがあることを理解しておくことが大切です。

2-2. 心臓震盪など外的衝撃による不整脈

心臓震盪(しんぞうしんとう)は、胸に強い衝撃が加わることで心臓のリズムが乱れ、心停止に至ることがある現象で、スポーツ中の事故などで発生することが知られています。

若い男性に多く見られ、サッカー、フットサル、野球、ソフトボール、ラグビーなどのスポーツで発生しています。

心臓震盪について詳しく知りたい方は、心臓震盪(心臓しんとう)とは。スポーツ現場での心停止を知ろう。をご覧ください。

2-3. その他の主な原因

  • 冠動脈起始異常、川崎病後の冠動脈障害などの冠動脈疾患
  • 肥大型心筋症、拡張型心筋症、急性心筋炎、拘束型心筋症、左室緻密化障害などの心筋疾患
  • T延長症候群、カテコラミン誘発多型性心室頻拍(CPVT)、WPW症候群などの不整脈疾患
  • マルファン症候群、特発性肺動脈性肺高血圧症などその他の疾患

3. データで見る 学校とAEDの現状

データで見る 学校とAEDの現状

もし学校で心停止が起きた場合、救命の可能性はどの程度あるのでしょうか。その結果を大きく左右するのがAEDの存在です。学校とAEDを取り巻く現状をデータから見ていきましょう。

3-1. 最初の数分が命を分ける

心停止が起きた場合、救命は時間との戦いになります。何も処置をしないまま時間が経過すると、1分ごとに生存率は約10%低下するといわれています。

しかし、119番通報から救急車が現場に到着するまでの全国平均は約9.8分です。(※3)救急隊の到着を待つだけでは、救命の可能性は大きく下がってしまいます。

この空白の時間に命をつなぐ鍵となるのが、バイスタンダー(その場に居合わせた人)による一次救命処置とAEDの使用です。

※3 参考:総務省消防庁:令和7年版救急・救助の現況

3-2. AEDの普及が学校の救命率を高めている

2004年に一般市民によるAEDの使用が認められて以降、学校への設置は急速に進み、現在ではほぼすべての学校にAEDが設置されています。学校で心停止が起こった場合は目撃者が多いため、迅速な一次救命処置とAEDの使用が可能です。

実際に、AEDの普及に伴い学校管理下で心停止が発生した際の救命率は大きく向上しています。バイスタンダーのAED使用によって救命された事例は毎年20〜40例ほど報告されており、適切な対応によって救える命が確実に増えていることがわかります。

独立行政法人日本スポーツ振興センターによると、2016年には死亡9件に対して蘇生数は45件にのぼり、蘇生率は83.3%に達しました。(※4)

学校は目撃者が多く、AEDも設置されているため、他の発生場所と比べて救命率が高いとされています。教職員が日頃から一次救命処置(BLS)やAEDの操作について理解を深めていること、さらにAEDを適切な場所に設置し、いつでも使用できる状態を維持していることが、救命率の向上につながっているといえるでしょう。

※4 参考:独立行政法人日本スポーツ振興センター:学校等の管理下の突然死

4. 学校で起こりやすいAED運用の課題とは?必要なのは「使えるAED」

学校で起こりやすい課題とは?必要なのは「使えるAED」

AEDは、突然の心停止から命を救うための医療機器です。多くの学校で設置が進んでいますが、運用面での課題が残るケースもあります。

重要なのは「置いてある」だけではなく「使える」ことです。命を守る「使えるAED」のために、学校が整えておきたいポイントは次の5つです。

4-1. 子どもの命を守る 学校のAED設置基準

AEDの設置基準として、心停止から5分以内に電気ショックを行える配置が重要とされています。そのため、現場から片道1分以内で取りに行ける配置を目安に設置することが推奨されています。(※5)

心停止リスクの高いグラウンド(運動場)や体育館の近くに設置されているか、校内の動線も含めて確認しておきたいポイントです。学校の規模や校舎の広さによっては、迅速に対応できるAEDの台数が確保されているかを確認し、不足している場合は複数台の設置を検討することも一つの方法です。

また、グラウンドや体育館は夜間や休日に地域へ開放されることも多いため、時間帯を問わず使用できる場所に設置することが望まれます。周囲の地域住民が使用する可能性も踏まえ、施錠された職員室などは避け、屋外設置も含めて検討しましょう。

※5 参考:一般財団法人日本救急医療財団:AEDの適正配置に関するガイドライン

4-2. 学校のAEDの日常点検・管理を行う

AEDはいつでも使用できるよう、日頃からステータスインジケータ(使用できるかどうかを示す表示)や消耗品の有効期限を確認することが重要です。点検を確実に実施するため、担当者を定め、年度が変わる際にも管理体制が途切れないよう引き継ぎを行いましょう。このような管理体制が整っていることは、子どもを預ける保護者にとっても大きな安心につながります。

バッテリー切れや電極パッドの期限切れが起これば、緊急時にAEDを使用できません。電極パッドは経年劣化によって身体に正しく貼り付かなくなるため使用期限が設けられています。日常点検タグなどを活用し、交換時期を把握しておきましょう。

4-3. 学校で定期的な訓練を実施する

緊急時には強い緊張や混乱が伴い、普段どおりの判断や行動が難しくなることがあります。だからこそ、誰か一人に任せるのではなく、チームで対応できる体制を整えておくことが重要です。

養護教諭など一部の教職員だけが対応方法を知っている状態では、迅速な救命につながらない可能性があります。職員全体で定期的に訓練を行うことで、その場に居合わせた誰もが迷わず行動できる学校づくりにつながります。

4-4. 心停止か迷った時はAEDを使用する

心停止直後には「死戦期呼吸」と呼ばれる、呼吸しているように見える動きが現れることがあります。しかしこれは普段どおりの呼吸ではなく、極めて危険な状態です。実際に学校現場では、この死戦期呼吸が見逃されたことで適切な対応が遅れ、命が失われた事例も報告されています。

使用するべきか迷った場合は心肺蘇生を開始し、AEDを使用してください。AEDは胸にパッドを貼るだけで心電図を解析し、電気ショックの必要性を判断します。ショックが不要な場合は電気ショックを行わない仕組みになっていますので間違ったらどうしようとためらう必要はありません。早い対応が、命を救う可能性を高めます。

死戦期呼吸について詳しく知りたい方は、死戦期呼吸とは?普段どおりではない呼吸の見分け方をご覧ください。

4-5. 子どもへの周知と救命教育の取り組み

心停止は、必ずしも大人が近くにいる場面で起こるとは限りません。周囲に子どもしかいない状況も考えられます。児童生徒自身がAEDの場所を知っておくことは、救命率を高める大切な備えのひとつです。

小中学生でも、大声で助けを呼ぶ、先生に知らせる、AEDを取りに行くなど、状況に応じてできる行動があります。

そうした行動を子どもにも伝えやすいよう、弊社ではAEDや心肺蘇生について学べる資料やスライドを提供しています。授業などでのご活用をご検討の際は、お気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。

子ども向けの一次救命の手順紹介ポスターは下記よりダウンロードいただけます。ふりがな有り・無しの2種類をご用意していますので、学年や目的に応じてご活用ください。

あえだちゃんポスターのサムネイル

5. あなたの学校は大丈夫?突然の事態に備える〇✕チェック

ここまでお伝えしてきた内容の中から、大切なポイントを〇✕問題にしました。学校の備えを見直すきっかけとして、ぜひチェックしてみてください。

→ × AEDは音声ガイドに従えば誰でも使用できます。救急車の到着前に電気ショックを行えるかどうかが、生存率を大きく左右するといわれています。

→ × 心停止はいつ起こるか分かりません。誰でもすぐに取りに行ける場所に設置されていることが重要です。鍵の管理が必要な場所では、到着が遅れる可能性があります。

→ × 校舎が広い場合、取りに行くまでに時間がかかります。グラウンドや体育館など、リスクが高い場所からの距離も考えて配置することが重要です。片道1分以内で取りに行ける配置が難しい場合には複数台の設置も検討しましょう。

→ × 突然の心停止は、これまで心疾患を指摘されていない子どもにも起こることがあります。誰にでも起こり得るからこそ、学校における備えが重要です。

→ 〇 心停止後、電気ショックまでの時間が短いほど生存率は高くなるとされています。近くにいる人が迅速に行動することが命を守ります。

いかがでしたか?正しい知識を持っておくことが、いざというときの落ち着いた行動につながります。子どもたちの命を守るために、日頃から備えを整えておきましょう。

6. まとめ

学校での突然の心停止から命を守る鍵は、「設置されているAED」ではなく「すぐに使えるAED」です。

学校における突然の心停止リスクをゼロにすることはできません。しかし、備えることで救える命があります。AEDをいつでも使える状態にし、誰もが行動できる環境を整えること。それが、子どもたちの未来を守る大きな一歩になります。

学校のどこにAEDがあるのか、すぐに使える状態か、職員間で共有できているか。この機会にぜひ一度、確認してみてはいかがでしょうか。

7. 参考リンク

About the Author: 山田 歩美

山田
山田 歩美。株式会社クオリティーAED事業部に2025年4月入社。上級救命講習修了。心電図検定3級取得(日本不整脈心電学会)。AEDの仕組みや正しい使い方、心肺蘇生法などの知識を深めるため、日々研鑽を重ねています。自らの体験を通じて、皆さまに正確でわかりやすい情報をお届けできるよう努めています。

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