赤ちゃんのうつぶせ寝はなぜ危険?窒息やSIDSのリスクと対策について【助産師解説】
「ちょっと目を離した隙にうつぶせになっていた」、「ぐっすり寝てくれるけれど、うつぶせ寝のままにしていいのかな?」と赤ちゃんが眠っている最中の姿勢が気になっているお母さんは少なくありません。
うつぶせ寝は赤ちゃんの窒息やSIDS(乳幼児突然死症候群)のリスクを高めるため、大変危険です。
この記事では、赤ちゃんのうつぶせ寝が危険な理由と、SIDSから赤ちゃんを守るための正しい知識と対策について解説します。
1. 赤ちゃんのうつぶせ寝が危険な理由
赤ちゃんのうつぶせ寝が危険な理由として、SIDSのリスクと体の未熟性があげられます。以下に詳しく解説します。
1-1. SIDS(乳幼児突然死症候群)のリスクが高まる
うつぶせ寝が危険な最大の理由は、SIDSのリスクが高まるためです。
- SIDSとは
-
乳幼児突然死症候群(Sudden Infant Death Syndrome)の略で、それまで健康だった1歳未満の赤ちゃんが、眠っている間に突然亡くなってしまう病気のことです。
SIDS(乳幼児突然死症候群)のはっきりとした原因はまだ解明されていません。ただし、うつぶせ寝はSIDSのリスクを高めることがわかっているため、特別な医療上の理由がない限り、生後1歳までは仰向けで寝かせることが推奨されています。(※1)
※1. 参考:睡眠中の赤ちゃんの死亡を減らしましょう(厚生労働省)
1-2. 赤ちゃん特有の体の構造によるもの
赤ちゃんは、まだ首の筋肉が十分に発達していないため、うつぶせ寝になったときに顔が布団や柔らかいマットレスに埋もれてしまっても、自力で顔を上げたり布団を払いのけたりすることができません。
特に、寝返りができるかできないかの生後5~6カ月頃は、自分で寝返りを打っても元に戻れないこともあるため窒息する危険性が高まります。また、うつぶせ寝を経験していない赤ちゃんがうつぶせ寝をしても、慣れていない影響で対応できず窒息のリスクが上がるという研究結果が出ています。(※2)
そのため、私たち大人がしっかりと見守ってあげることが大切です。
2. 窒息やSIDSから赤ちゃんを守るための安全な寝かせ方と環境の整え方
赤ちゃんの命を守るために最も大切なのは、安全な睡眠環境を整えてあげることです。ここでは、具体的な対策方法について解説します。
2-1. 仰向け寝を徹底する
1歳になるまでは、どんなときでも仰向けで寝かせることを徹底しましょう。「うつぶせ寝の方がよく寝る」と感じる赤ちゃんもいますが、一時的なものです。SIDSの予防のためにも、仰向けで寝かせるようにしましょう。
もし、赤ちゃんが寝返りでうつぶせ寝になってしまった場合は、そっと仰向けに戻してあげましょう。赤ちゃんが起きてしまっても、安全が優先です。
2-2. 赤ちゃんの窒息事故を防ぐために避けたい寝具や服
赤ちゃんが寝る場所は、できる限りシンプルな環境にしましょう。具体的には、以下のものを避けてください。
柔らかすぎるマットレスや布団
顔が埋もれてしまう危険性があります。固めのベビー用マットレスや敷き布団を使いましょう。
枕や分厚い掛け布団
枕は不要です。掛け布団は窒息の原因となるため使用せず、スリーパーやベビー用パジャマ、綿毛布などで温度調節をしましょう。
ぬいぐるみやタオル
赤ちゃんの顔を覆ってしまう可能性があるため、置かないようにしましょう。
ひも付きの服
寝ている間に首にひもが絡まる危険があるため、避けましょう。
このような対策を行って、あらかじめリスクとなるものを避けることが大切です。
2-3. 赤ちゃんの安全な睡眠のために、ベビーベッドがおすすめ
ベビーベッドは、大人用ベッドや布団に比べて安全な睡眠環境を作りやすいです。ベビーベッドを使用する際は、以下の点に注意しましょう。
- 赤ちゃんの頭や体が挟まらないように、ベッド柵とマットレスの隙間をなくすこと
- ベッド柵を常にあげるようにすること
赤ちゃんが安全に眠るための専用スペースを作り、正しい使い方をすることで、より安心して見守れます。
3. 赤ちゃんはいつからうつぶせ寝でも大丈夫? 安心できる時期の目安
米国小児科学会では、1歳になるまでは仰向け寝を推奨しており、赤ちゃんがうつぶせ寝でも安心するのは1歳を過ぎてからといえるでしょう。(※3)
個人差はありますが、寝返りを自由自在にできるようになり、自力で仰向けに戻れるようになれば、窒息のリスクは低くなると考えられます。しかし、それでもSIDSのリスクがなくなるわけではありません。
まずは、安全な睡眠環境を整え、万が一うつぶせ寝になってしまっても、窒息の危険性がないようにしてあげることが大切です。
4.【対策方法】赤ちゃんがうつぶせ寝で窒息したら
万が一、赤ちゃんがうつぶせ寝で窒息していたら迅速な対応をしなくてはなりません。いざというときにすぐに対応できるように、以下のことについて知っておきましょう。
4-1. そもそも、赤ちゃんが窒息したときのサインとは
窒息が疑われる場合の主なサインは以下のとおりです。
- 呼吸が止まっている
- 顔色が青白い、または紫色になっている
- 意識がない、ぐったりしている
- 声を出せない、泣けない
もし、このような状態に気付いたら、落ち着いて、次に解説する対処法を迅速に行ってください。
4-2. 呼吸や意識がない|心肺蘇生法を行う
うつぶせ寝で窒息してしまった場合、呼吸ができなくなり、前述したような窒息したサインが出ていると考えられます。
もし、赤ちゃんに呼吸や意識がない場合は、すぐに119番通報し、心肺蘇生法(胸骨圧迫と人工呼吸)を開始してください。
その後に続く対処方法について下にまとめました。
赤ちゃんに行う胸骨圧迫
赤ちゃんの両乳頭を結ぶ胸の真ん中を、指2本で押します。速さは、1分間に100~120回のペースで、深さは胸の厚みの約1/3程度沈むくらい圧迫します。
人工呼吸
救助者が訓練を受けていて行う意思があれば、人工呼吸も併用しましょう。難しい場合には、胸骨圧迫を優先して継続してください。
人工呼吸を行う際は、顎先を上げ、頭の方を下げる「頭部後屈あご先挙上法」を行い、胸骨圧迫30回に対し、人工呼吸2回を繰り返します。
心肺蘇生法は、ご自身のお子さまに限らず、街中で倒れた人がいる場合でも役立ちます。地域でも心肺蘇生法の講習を行っている場合があるため、いつでもすぐに対応できるようにしておきたい方は参加するといいでしょう。
小児・乳児の救命手順、小児一次救命処置(PBLS)【特に乳児の保護者様へ】の記事でも詳しく解説していますので、あわせてご確認いただけたらと思います。
また、AEDと心肺蘇生の年齢別対応表も無料で配布していますので、よろしければ下記よりダウンロードしてご活用ください。
5. まとめ
赤ちゃんは体が未熟なため、うつぶせ寝で呼吸が苦しくなっても自分で対処することができません。また、SIDSのリスクが高まり大変危険です。そのため、1歳になるまでは仰向けで寝かせるのと同時に、寝具や環境を整え、大人が見守ることが大切です。
さらに、万が一窒息したときのために事前に心肺蘇生法について学んでおくのもいいでしょう。
6. 参考文献・参考リンク
6-1. SIDS(乳幼児突然死症候群)に関する資料
- 睡眠中の赤ちゃんの死亡を減らしましょう(厚生労働省)
- Changing infants’ sleep position increases risk of sudden infant death syndrome: New Zealand Cot Death Study(Mitchell EA et al. / PubMed)
- Vol.607 就寝時の窒息事故に気を付けましょう(消費者庁)
- 乳幼児突然死症候群(SIDS)について(こども家庭庁)
- Sleep-Related Infant Deaths: Updated 2022 Recommendations for Reducing Infant Deaths in the Sleep Environment(Moon RY et al. / Pediatrics)