AEDの自主回収とは?リコールとの違いと対象製品・理由・対応方法を解説

Last Updated: 2025年11月17日Published On: 2025年11月17日

AEDは、もしものときに命を救う医療機器です。そのため製造販売業者(以下、メーカー)は、不具合の可能性が見つかった場合、迅速に自主回収を実施し、健康被害を未然に防止・拡大しないよう努めています。

2025年8月、3社のメーカーよりAEDの自主回収が発表されました。発表時点で健康被害の報告はなく、各メーカーは安全を最優先に順次対応を進めています。なお、現在販売されているAEDは自主回収の対象ではありません。

本記事では、2025年8月発表のAED自主回収対象製品や回収理由、対応方法を解説するとともに、設置者が知っておくべきポイントをまとめています。安心してAEDを設置いただけるよう、必要な情報をわかりやすくお伝えします。

1. 自主回収とリコールの違いとは?

自主回収とリコールの違い

「自主回収」と聞くと、車や家電のニュースでよく耳にする「リコール」と何が違うの?と思う方も多いのではないでしょうか。そこで、自主回収とリコールに違いがあるのか、調べてみました。

1-1. 自主回収とリコールの用語の違い

自主回収とは、行政の命令を受ける前に、企業が自らの判断で回収を決定、実施することを指します。(※1)一方、リコールは、製造事業者などが製品を無償で修理または回収することを意味します。(※2)つまり、自主回収と自主的に行われるリコールは、実質的に同じ意味で使われています。

日本では製品ごとに担当省庁や制度が異なります。たとえば、車は国土交通省の「リコール制度」、食品は厚生労働省の「自主回収報告制度(リコール)」です。こうした制度の違いによって、ニュースでは「リコール」と「自主回収」が使い分けられています。

※1. 参考:自主回収報告制度説明会資料|内閣府

※2. 参考:「リコール」ってご存知ですか?|内閣府

1-2. AEDは自主回収とリコールのどちらで呼ぶ?

では、AEDにはどちらの言葉を使うのが適切なのでしょうか?

AEDを管轄する厚生労働省に確認したところ、「(自主)回収」と「リコール」は基本的に同義語として扱われており、特に意味や用法の区別はしていないとのことでした。ただし、法令に基づく文書や厚生労働省の通知などでは「(自主)回収」という表現を用いることが望ましいとされています。

本記事では、こうした公的情報に合わせ自主回収という表現を使用します。

2. AEDの自主回収とは?

AEDの自主回収とは

AEDは医療機器に分類され、回収は厚生労働省が「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下、薬機法)」に基づき、「医薬品等回収関連情報」で公表しています。

2-1. 自主回収の目的と販売店の役割

薬機法では、健康被害の発生や拡大の恐れがある場合、メーカーは自主回収や情報提供など必要な措置を講じることが義務づけられています。また、販売業者等もメーカーが迅速に対応できるよう協力することが求められています。

AEDは命に関わる重要な機器です。不具合の可能性が見つかれば、メーカーは自主回収を行い、健康被害を防ぐ取り組みを行っています。私たち販売店も、設置場所の情報を確認するなどして、回収がスムーズに進むよう協力しています。

2-2. 行政による回収命令とは?

不適切な医療機器に対しては、厚生労働大臣や都道府県が回収命令を出すことができます。命令に従わなかった場合や緊急時には、行政職員が代わりに回収や廃棄を行うことも可能です。回収命令に従わなかった場合は罰則が科されます。

AEDはこれまでメーカーによる自主回収が行われており、2025年11月時点で回収命令が出された事例はありません。

2-3. 回収の報告と情報公開について

医療機器の自主回収を行う場合、メーカーは厚生労働大臣に対し、回収開始・回収状況・回収終了を報告する義務があります。これらの情報は独立行政法人 PMDA(医薬品医療機器総合機構)の公式サイトで公開され、誰でも確認できます。

今回発表されたAEDの自主回収についても、PMDA公式サイトで情報を確認できます。

3. 医療機器の自主回収におけるクラス分類

医療機器の自主回収は、製品がもたらす健康への危険度に応じてクラス分類されています。このクラス分類を見ると、危険度が一目で分かります。自主回収のお知らせを見たら、まずクラスを確認してみてください。

クラス 説明
クラスI クラスIとは、その製品の使用等が、重篤な健康被害又は死亡の原因となり得る状況をいう。
クラスⅡ クラスⅡとは、その製品の使用等が、一時的な若しくは医学的に治癒可能な健康被害の原因となる可能性がある状況又はその製品の使用等による重篤な健康被害のおそれはまず考えられない状況をいう。
クラスⅢ クラスⅢとは、その製品の使用等が、健康被害の原因となるとはまず考えられない状況をいう。

クラス分類は厚生労働省 医薬品等回収関連情報より引用

8月に発表されたAEDの自主回収は、クラスⅠとクラスⅡに該当します。命に関わるのではないかと不安に思う方もいるかもしれませんが、PMDA登録時点で健康被害の報告はありません。

AEDは、過去にもクラスⅠやクラスⅡの自主回収がありましたが、大きなトラブルなく対応されました。今回は万が一に備えるための回収なので過度に心配する必要はありません。ただし、AEDは命に関わる医療機器ですので情報をしっかり確認して対応しましょう。

4. 自主回収の概要(2025年8月)

2025年8月に発表されたAED自主回収の概要をメーカー別にまとめました。対象製品や回収理由、問い合わせ先など、必要な情報をご確認ください。

問題のあったロット(同じ条件でまとめて生産された製品の単位)はすでに特定されており、対象となるシリアル番号(製品ごとに付いている識別番号)も全て確認されています。

お手持ちのAEDが自主回収の対象か確認したい場合は、AED本体の裏面に記載してあるシリアル番号をご確認ください。自主回収対象のシリアル番号はPMDAの公式サイトで確認できます。該当するAEDをお持ちの場合は、メーカーより順次ご連絡が入りますので、連絡をお待ちくださいますようお願いいたします。

4-1. サマリタンPAD 350P、サマリタンPAD 450P、サマリタンPAD 360P(日本ストライカー株式会社)

サマリタン3機種

回収理由

環境規制に対応するため製造工程を変更した結果、内部部品が故障し、まれに電気ショックが作動しない可能性があることが確認されました。発生率は非常に低く、実際の使用でこの不具合が起きた報告はありませんが、安全を最優先に回収を行います。(※3)

対応方法

対象製品をお持ちのお客様には「自主回収のお知らせ・回収確認書」および「代替品を受領されるまでの対処方法」が郵送されています。内容確認後に回収確認書のご返送が必要です。また、「自主回収のお知らせ」を対象製品の取扱説明書と一緒に保管、「代替品を受領されるまでの対処方法」は、対象製品と一緒にキャリングケース内に保管となっています。(※4)

  サマリタンPAD 350P サマリタンPAD 450P サマリタンPAD 360P
クラス分類 クラスⅠ
医療機器承認番号 22800BZI00030000 23000BZI00009000 30300BZX00190000
対象製品の数量 4590台 1033台 3530台
出荷時期 2023年3月28日~2024年8月30日 2023年7月14日~2025年2月14日 2023年5月24日~2025年2月20日
回収開始年月日 2025年8月6日
問い合わせ先 日本ストライカー株式会社
電話:0120-400-951

※3. 参考:2025年度クラスI(医療機器)|独立行政法人 医薬品医療機器総合機構

※4. 参考:サマリタンPAD 350P/450P/360P自主回収に関するFAQ

4-2. レスキューハート HDF-3500(オムロンヘルスケア株式会社)

回収理由

環境規制に対応するため製造工程を変更した結果、内部部品が故障し、まれに電気ショックが作動しない可能性があることが確認されました。発生率は非常に低く、実際の使用でこの不具合が起きた報告はありませんが、安全を最優先に回収を行います。(※5)

対応方法

メーカーより本件及び注意喚起に関する情報提供のお知らせを出荷先及び設置先にお送りし、準備出来次第交換品を発送の上、対象製品を回収予定です。(※6)

  レスキューハート HDF-3500
クラス分類 クラスⅠ
医療機器承認番号 22700BZI00047000
対象製品の数量 18245台
出荷時期 2023年7月7日 ~ 2025年5月13日
回収開始年月日 2025年8月7日
問い合わせ先 オムロンヘルスケア株式会社
電話:0120-400-185
オムロン公式案内(PDF)

※5. 参考:2025年度クラスI(医療機器)|独立行政法人 医薬品医療機器総合機構

※6. 参考:オムロン 自動体外式除細動器レスキューハートHDF-3500 自主回収のお知らせ

4-3. シーユーSP1、ジェイパッドCU-SP1(株式会社CU)

シーユーSP1

回収理由

製造元による解析の結果、日本向けの一部製品において、1日1回の自己診断が正常に行われず、繰り返し実行される不具合が確認されました。この現象により、バッテリーの消耗が早まる可能性があるため、安全を確保するためにメイン基板の交換を伴う自主回収を実施します。(※7)

対応方法

メーカーより順次連絡、代替機を送付し該当機をお預かりし、点検・処置後に返却予定です。(※8)

  シーユーSP1 ジェイパッドCU-SP1
クラス分類 クラスⅡ
医療機器承認番号 22500BZX00338000 22500BZX00338A01
対象製品の数量 5300台 400台
出荷時期 2020年3月18日~2021年9月21日 2020年6月17日~2021年5月26日
回収開始年月日 2025年8月29日
問い合わせ先 株式会社CU
電話:03-6205-7385(平日:9:00~17:00)

※7.参考:2025年度クラスⅡ(医療機器)|独立行政法人 医薬品医療機器総合機構

※8.参考:「シーユーSP1」、「ジェイパッドCU-SP1」一部製品の自主回収に関するお知らせ

5. AmazonでAEDをご購入されたお客様へ

AmazonでAEDをご購入されたお客様

Amazonで購入した商品にリコールが発表された場合、メールにリコール情報と個別ページへのリンクが記載され、そのページで詳細を確認できます(※9)

今回のAED自主回収についても、Amazonで対象製品をご購入のお客様全員にご案内が配信されています。そのため、対象シリアル番号以外の製品をお持ちの場合でも案内が届く場合があります。誤って回収手続きを行わないようご注意ください。連絡を受けた方は、まずお手元のAEDのシリアル番号(本体裏面に記載)から対象かどうかを確認してください。対象製品であった場合には、案内に記載された情報をご確認のうえ、メーカーからの連絡をお待ちくださいますようお願いいたします。

※9アマゾンジャパンの取り組みより引用

6. AEDの設置先確認の重要性

AEDコムでは販売に際して、お客様に設置先のご登録をお願いしています。これは、消耗品や本体の期限管理だけでなく、今回のような自主回収が発生した場合に、メーカーと情報を共有して対応できるようにするためです。

そのため、設置後に住所や連絡先が変わった際は、お手数ですが弊社までご連絡をお願いいたします。

7. AEDの日常点検のお願い

ステータスインジケータ

AEDは救命のための医療機器です。設置後は、いつでも使用できるように、日頃からステータスインジケータ(使用可否の表示)や消耗品の有効期限を確認しましょう。今回の自主回収のように、万一の不具合を早期に発見し、迅速に対応するためにも、日常点検は大切です。

AEDは、毎日自動でセルフテストを行います。セルフテストの結果は、AEDのステータスインジケータに表示されます。弊社で取扱いのあるAEDの日常点検方法はこちらにまとめてあります。点検していただき、疑問や分からないことがあれば、ご連絡ください。

8. まとめ

2025年8月に発表されたAEDの自主回収について、対象製品や回収理由、対応方法をご紹介しました。自主回収は不具合を知らせるだけでなく、製品をより安全に使用していただくための改善措置をお伝えするものです。

まずは落ち着いて情報を確認し、対象のAEDを使用中の方は、日常点検を続けながらメーカーからの案内に従って手続きを行ってください。

現在販売されているAEDは今回の自主回収の対象ではありません。ご導入や入替をご検討の際も、引き続き安心してお使いいただける体制を整えております。

9. 参考文献・参考リンク

9-1. AEDの自主回収に関する参考資料

9-2. 自主回収・リコールに関する行政情報

About the Author: 山田 歩美

山田
山田 歩美。株式会社クオリティーAED事業部に2025年4月入社。上級救命講習修了。AEDの仕組みや正しい使い方、心肺蘇生法などの知識を深めるため、日々研鑽を重ねています。自らの体験を通じて、皆さまに正確でわかりやすい情報をお届けできるよう努めています。

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