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バイスタンダーとは。救命における役割と制度や法的責任のまとめ。

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バイスタンダーという言葉を聞いたことはあるでしょうか?救急の現場に居合わせた人のことを「バイスタンダー」といいます。

いつ・どこで・だれが・心停止するか分かりません。もしかしたら、同僚、友人、家族が目の前で倒れるかもしれません。そのとき、現場に居合わせた場合、あなたはバイスタンダーとなります。

2004年7月、厚生労働省から非医療従事者によるAEDの使用を認められ、(※)医師免許を持たない人でもAEDを使用できるようになり、一般の人が救急の現場で活躍する機会も増えてきました。

参考:非医療従事者による自動体外式除細動器(AED)の使用について

本記事では、もしもバイスタンダーになったとき、どうしたらいいのか、また、居合わせた後のことについてまとめたいと思います。

目次

1. バイスタンダーとは

AEDを用いた救命処置

冒頭でも触れましたが、バイスタンダーとは、「心停止などの救急の現場に居合わせた人・発見した人」を指します。英語にするとbystander。筆者も驚いたのですが、直訳だと「傍観者」という意味です。

ただ傍で見ている見物人となるか、勇気を出して救命を行うかで、倒れたその時の救命率はもちろん、社会復帰までの時間にも大きな差が出てきますので、少しの勇気を持って欲しいと思います。

では、あなたがバイスタンダーになったとき、何をすればよいのか、次項にその役割をまとめます。

2. バイスタンダーの役割「救命の連鎖」

傷病者(倒れた人)を救命し、社会復帰できるようにするまでの、一連の流れを「救命の連鎖」といいます。

救命の連鎖の流れ(心停止の予防→早期認識と通報 → 1次救命処置(心肺蘇生とAED) → 二次救命処置と集中治療)を図で示したものが、下記です。

救命の連鎖の流れ

救命の連鎖

救命の連鎖については、救命の連鎖とは。覚えておきたい救命効果を高める4つの取り組み。で解説していますので、あわせてお読みいただけたらと思います。

救命の連鎖の中で、バイスタンダーに期待される役割は、「早期認識と通報」と「1次救命処置」です。この2つに注目して見ていきましょう。

2-1. バイスタンダーの役割「早期認識と通報」

早期認識と通報

早期認識とは、意識がない人や倒れた人を発見したら、「心停止ではないか?」と疑うことから始まります。そして駆け寄り、声を掛け、心停止の可能性があると少しでも思ったら大きな声で周りに助けを求めます。

最近では、2018年4月4日に行われた大相撲舞鶴場所で、土俵上の市長が急に倒れ、駆けつけた女性が土俵に上がったことに対して、「女性は土俵から降りて下さい」とアナウンスが流れた話が話題になりました。

動画を見ると、女性は、駆けつけたのち心停止とすぐに認識して、胸骨圧迫(心臓マッサージ)を始めており、女性の状況判断がいかに早いかが分かります。

早期認識で大事なことは、「心停止ではないか?」と疑うことです。

女性は看護師だったということですが、きっと倒れたのを見たときから、心停止を疑っていたはずです。そして駆け寄り、通常通りの呼吸が確認できなかったか、意識がなかったため、胸骨圧迫を始めたのだと思います。心停止を疑って駆け寄り、反応がなければ、周りに大きな声で助けを求めましょう。

続いて、通報についてですが、言葉の通りで119番通報することです。119番に電話することは、救急車を手配して、いち早く救急隊に来てもらうことも目的ですが、電話した先の指令センターでは、心肺蘇生の方法やAEDの使い方を指導してくれます。

最近はスピーカーにできる携帯が多いですので、聞きながら処置をすることも可能です。

通報する時のポイントは、「あわてず、はっきりと」と伝えることです。119番通報すると「火事ですか?救急ですか?」と聞かれますので、はっきりと「救急です」と伝え、目印になるような建物や、傷病者の状態を具体的に伝えましょう。

通報と併せて、AEDの手配をしましょう。周囲に助けを求めた際、周りの人に119番通報とAEDの手配を頼むとスムーズです。

流れ:反応なし(早期認識) → 大きな声で助けを呼ぶ → 119番通報とAED依頼

2-2. バイスタンダーの役割「一次救命処置(BLS)」

一次救命処置は大きく分けると「心肺蘇生を行うこと」と、「AEDの使用」が主な内容です。心肺蘇生の手順ですが、まずは傷病者が正常な呼吸をしているか確認します。

呼吸の確認のポイント

呼吸は、傷病者の胸やお腹が上下に動いているかで判断します。この時、死戦期呼吸(あえぎ呼吸)と呼ばれる、しゃくりあげるようなしぐさがあった場合は、正常な呼吸ではありません。

呼吸確認のポイントは、「判断に迷ったらすぐに胸骨圧迫(心臓マッサージ)」です。呼吸がいつもと違うような気がしたり、判断に自信がない場合は、とにかく胸を押してください。

胸骨圧迫のポイント

胸骨圧迫についてですが、傷病者の横にひざをつき、肘を伸ばして胸を押します。このとき、約5センチ胸が沈むまで、1分間に100~120回のリズムで押します。

胸骨圧迫のポイントは「強く、早く、絶え間なく」です。人工呼吸はその技術と意思のある場合行えばいいので、ためらわれる場合などは省略しても大丈夫です。

AEDの使用

AEDが到着したら、AEDの電源を入れます。AEDは電源が入れば、その後は全て音声でガイダンスしてくれます。

  1. 電源を入れる
  2. 電極パッドを貼り付ける
  3. 電気ショックが必要かAEDが判断する
  4. 電気ショックのボタンを押す(必要な場合)

AEDのポイントは、「電気ショックが必要か、判断するのはAED」ですので、あなたが判断しなくても大丈夫だという点です。とにかく電源を入れて、パッドを貼ってください。

また、いつ容態が悪化するか分かりませんので、AEDを使用して意識が戻ったとしても、救急隊に引き継ぐまでは、AEDの電極パッドは貼ったままにしましょう。

電極パッドは一度限りの使い捨てです。剥がしてしまうと貼れなくなることがあります。

AEDを準備している間も胸骨圧迫を

JRC蘇生ガイドライン2015では、胸骨圧迫の中断を最小限にすることが強調されています。

AEDを使っている間や人工呼吸を行うためなど、胸骨圧迫を中断する時間を10秒以内にしましょう。

3. 救命率の実態と一次救命の注意点

救急車

3-1. 救命率の実態

まずは、1次救命処置が必要になる、心停止がどのくらいの確率で起きるのでしょうか。

平成 28 年中に救急搬送された心肺機能停止傷病者は 12 万 3,554 人で、心原性心肺機能停止数は7万5,109 件に登ります。

総務省消防庁 平成29年版 救急救助の現況 Ⅰ 救急編より引用

心原性心肺機能停止というのは、分かりやすくいうと怪我などの理由で心停止したのではなく、「心臓が原因により、心停止した。」ということです。

1年間に7万5千人が心臓が原因で倒れ、そのうち、一般市民による目撃があったのは2万5,569件です。

1年が365日ですから、25569人÷365=70.05人と、1日70人もの人が突然の心停止になり、誰かの目の前で倒れている計算です。

もし目の前で人が倒れ、救命処置を行うことになったときに気をつけることはなんでしょうか? 次の項目で注意点をまとめます。

3-2. 一次救命処置を行ううえでの注意点(感染症)

口対口人工呼吸による感染の危険性はきわめて低いといわれていますが、可能であれば人工呼吸用のマスク(感染防護具)などを使用してください。

人工呼吸用のマスクの使い方については、人工呼吸用マスクの使い方知っていますか?の記事で解説しています。

人工呼吸用のマスクは、AEDを持ち運ぶためのケースに、入っていることがあります。

人工呼吸用のマスク以外にも、感染防止のために手袋や不繊布やガーゼが入っていますので、嘔吐や吐血をしている場合などは、それらを用いて処置を行いましょう。

レスキューセット

4. バイスタンダーの心的ストレスと緩和制度

バイスタンダーの心的ストレス

あなたがバイスタンダーとなる状況は、普段とは全く違う緊迫した状況です。きっと誰もが不安や緊張、処置後には自責の念など心的ストレスを感じるはずです。

また、救命処置を行っている際にケガをする場合もあります。一般市民が行う初期対応の重要性が増してきたことにより、バイスタンダーに安心して応急手当をしてもらうためのさまざまな制度があります。

4-1. バイスタンダー保険制度

前提として、民法的に、悪意または重過失がなければ、バイスタンダーが責任に問われることはないと思いますが、万が一、損害賠償請求等がされた場合に、法律相談のお金が支給される制度です。

東京消防庁の保険制度の場合は、法律相談見舞金という名称で5万円支給されます。

保険制度の対象は条件は、バイスタンダー保険制度の創設について(東京消防庁)をご参照ください。

法律に関しては、5. バイスタンダーが法的責任を負うか否かに詳しく記載します。

4-2.バイスタンダー見舞金制度

バイスタンダーがケガをしたり、血液などに触れて感染した危険がある場合に見舞金がでる制度です。

同じく東京消防庁の場合は、感染の予防薬投与であったり、通院、後遺症が残った場合や、死亡した場合まで広く支給され、金額は1万5千円~500万円まで種別により支給額が変わります。

こちらも、4-1. バイスタンダー保険制度と同じくバイスタンダー保険制度の創設について(東京消防庁)をご参照ください。

4-3. バイスタンダーフォローアップ制度

千葉県野田市では、応急手当を行った方に、「感謝カード」を配布しています。この感謝カードは以下の内容が書かれています。

応急手当を行ってくださった方へ

救急隊が到着するまでの間、勇気をもって応急手当を行っていただき、ありがとうございました。
救急現場で対応を行ったことで、心や体に不安なことがありましたら、裏面の相談窓口にご連絡ください。
野田市消防署 救急隊

参照:野田市ホームページ:バイスタンダーフォローアップ制度について

相談の内容により、専門の窓口も案内してくれるそうです。

大事なことは、ストレス反応がおきたとき、自分だけで解決しようとせず、周りの人や、上記のような窓口に相談しましょう。

4-4. 様々な自治体でバイスタンダーの制度が始まっています

応急手当をした場合にバイスタンダーが、り患(りかん=病気にかかること)した場合に、見舞金2万5千円が支給される制度です。

神奈川県藤沢市:バイスタンダー見舞金制度について
参照:藤沢市ホームページ:バイスタンダー見舞金制度について

同様の制度が多数ありますので、その一部を掲載します。

秋田県能代市:バイスタンダーに対する見舞金制度
参照:能代山本広域市町村圏組合事務局ホームページ:バイスタンダーに対する見舞金の支給について

北海道恵庭市:バイスタンダーに対する補償制度のお知らせ
参照:恵庭市ホームページ:バイスタンダーに対する補償制度のお知らせ

千葉県柏市:バイスタンダー見舞金制度のお知らせ
参照:柏市ホームページ:バイスタンダー見舞金制度のお知らせ

青森県青森市:バイスタンダーに対する補償制度
参照:青森地域広域事務組合ホームページ:バイスタンダーに対する補償制度

5. バイスタンダーが法的責任を負うか否か

法的責任

もし訴えられたら? と心配に思う人は多いのではないでしょうか。日本にはバイスタンダーを守る(免責される)法律があります。

民法は、民法第 698 条の「緊急事務管理」に該当し、「悪意または重過失がなければ、実施者である市民が傷病者等から責任を問われることはない」と考えられています。

刑法については、刑法第37 条「緊急避難」に、「自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない」とされています。

助けた人から訴えられるということは、よほどの悪意を持って行わない限り、感謝されることはあっても、訴えられるようなことにはならないと筆者は考えていますし、3-1.救命率の実態で触れたように、1年で2 万 5,569 件でもの人が、誰かの目の前で倒れていますが、もし訴えられるようなケースが多ければ、頻繁に話題になっているはずです。

補足ですが、弊社は2018年4月現在、3,000社以上の顧客に6,000台以上のAEDを販売していますが、訴えられたという話は一度も聞いたことがありません。

日本の法律に触れましたが、海外には、「善きサマリア人の法」というものがあります。”「善きサマリア人の法」は、緊急に救助を行う人が報酬を期待せずに誠実に行った場合は責任を問わないという趣旨の法である。”緊急時に人を助けるために、善意で行った行為は、たとえ失敗しても責任にならない。という法です。

JRC蘇生ガイドライン2015にも記載がありますが、多くの人が法的な心配をされているのは、民法「緊急事務管理」と刑法「緊急避難」が日本に浸透していないためではないかと思います。

引用・参照:JRC蘇生ガイドライン2015 第8章 普及教育のための方策

救護が義務の国も

善きサマリア人の法のように、アメリカ・カナダなどは救護時の免責が主流ですが、フランス・ドイツでは救護が義務だそうです。

義務とはバイスタンダーになった場合、応急手当をしなければいけない。ということになると思います。

日本の救護は免責に該当しますが、JRC蘇生ガイドラインには心肺蘇生の手順や指針のほかに、普及や教育のための方策なども盛り込まれており、倫理観の浸透や、法の整備が求められている。と書かれています。

まとめ

バイスタンダーについてまとめました。手順や法律、救命後のアフターフォローについてなど広く書きましたが、この記事で伝えたかったことは、もし救命の現場にあなたが居合わせ、バイスタンダーになったとき、現場の対応が完璧でなくても、あなたにできることを行って欲しいということです。

倒れた人を見つけたら、心肺蘇生に自信がなくても、心停止かも?という疑いを持って駆け寄り、大声で助けを呼んで119番通報しましょう。

集まってくれた人の中に医療従事者がいるかもしれません。AEDを持って来るだけでも、消えそうな命が繋がるかもしれません。

こちらの記事で1次救命処置の手順をまとめています。併せて確認してみてください。

参考記事:【解説】一次救命処置の手順。心肺蘇生法ガイドライン2015版

参考文献

  • 改訂5版 救急蘇生法の指針2015 市民用解説編
  • JRC蘇生ガイドライン2015オンライン版及び完全版第1版
  • 各地方自治体ホームページ(各文中に記載しております)

この記事を書いた人

株式会社クオリティー AED事業部 部長 : AEDコム・AEDガイド責任者、AED+心肺蘇生法指導者、高度管理医療機器販売・貸与管理者、防災士、上級救命講習修了。 専門店AEDコムを運営し、日本全国に年間2,000台を販売、導入企業数は7,000社を突破。心肺蘇生ガイドライン、AEDの機器に精通している。

2件のコメント

  1. 三流弁護士 on

    「バイスタンダーが法的責任を負うか否か」の話ですが、
    緊急事務管理の「重過失がなければ」とか、緊急避難の「これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り」とか、結局法律でも例外が規定されている限り、その責任を問われたり、処罰されたりする可能性はあるんでしょ?
    結局、告訴や起訴される可能ある限り、率先してAED使おうとは誰も思いませんよ。

    それから、「バイスタンダー保険制度」があるということは、
    冤罪や致死罪に問われる可能性を暗に示してるですよね?
    5万円でその冤罪や損害賠償に立ち向かえと?
    裁判費用ってそんなに安いわけないでしょ(笑)

    • 三流弁護士さん コメントありがとうございます。
      緊急事務管理には、重大な過失以外に、悪意も例外として除かれていますよね。
      法律関係の話になると、海外の「善きサマリア人の法」がよく話題にでるんですが、
      あれも「善意でとった行動は(中略)失敗しても罪に問われない」となっているんですよね。これはいいなぁと思っているんですが、
      例外を付ける付けないの話ですと、悪意がある場合って救命以外でも、どうにもならない気がしていて、そのための例外かなと思っています。

      少し脱線してしまったんですが、私の解釈だと、緊急事務管理では、善意で取った行動なら多少間違えたって大丈夫。ですから、
      誰も使いたくないような法律環境では無いのかなと思っています。

      バイスタンダー保険制度は、救命時に感染や怪我を負ったときの保険的意味合いが、制度のメインかなと思っています。
      ただ、私もこの制度の訴訟の部分を見たときはすごく微妙だと思いました。

      過去に判例がないので、裁判費用がどのくらい掛かるのか分からないんですが、
      いくら過去に事例がなくて、裁判うんぬん自体の可能性が低くても、全額負担ぐらいにしてくれたら嬉しいですよね。
      訴訟の保険をおまけで入れた感が金額からも感じられて、もうちょっと他に無かったのか・・・と思ってしまいました。

      絶対にAEDをやりたくないという人を変えるのは難しいですし、少しおこがましいとも思いますから、
      その場に居合わせた人が出来る範囲で救命に協力できるといいですよね。

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