「蜂に2回刺されると危険だ」という話を聞いたことはありませんか?
アレルギー症状が全身に出るアナフィラキシー。厚生労働省が発表している人口動態統計を見ると、2017年にはアナフィラキシーショックで37人が亡くなっています。
過去の統計から見ても、年間で約50人~70人ほどがアナフィラキシーによって死亡。命の危険もあるアナフィラキシーの症状とその応急処置をまとめています。
1. アナフィラキシーとは
アナフィラキシーとは、アレルギーの原因になる物質を食べたり、吸い込んだり、蜂などに刺されるなどで、体内にアレルゲン(原因となる物質)が入り、複数の臓器にアレルギー症状があらわれることをいいます。
特にアナフィラキシーにより血圧低下や意識障害を伴う場合を「アナフィラキシーショック」といいます。
アナフィラキシーは、二度目は症状が重くなりやすいので、一度発症した人は、原因を避けることが重要です。アナフィラキシーの原因となる物質が思わぬ形で食物の中などに含まれていることもあるので注意しましょう。
2. アナフィラキシーの特徴と症状
アレルギー症状が複数みられるとアナフィラキシーの可能性が高くなります。しかし、一般人には判断が難しいように感じますので、なるべく分かりやすくまとめました。まずは症状ではなく、その特徴からです。
2-1. アナフィラキシーの特徴
特徴1:アレルギー症状が複数確認できる
たとえば、「全身にじんましんが出てさらに息切れする」、「唇や口の中が腫れ、さらに呼吸困難になる」など複数のアレルギー症状がアナフィラキシーでは確認できます。
特徴2:すぐに症状がでる
数分~数時間で症状が出ます。
2-2. アナフィラキシーの症状
続いて、症状のグループを3項目に分けて説明します。グループの一つに該当したらアナフィラキシーの可能性があります。
グループ1:A「皮膚または粘膜症状」と、少なくともB「呼吸器系症状」か C「循環器症状」の一つを伴う症状
グループ2:アレルゲンと疑われるものを食べたり、飲んだり、触れたりなどした後、すぐに以下の症状が2つ以上出た場合。
A、B、Cの詳細な症状は、上で説明した内容と同じです。A・B・C・Dの症状のうち、2つ以上を伴った場合です。
グループ3:アレルゲンと疑われるものを食べたり、飲んだり、触れたりなどした後、すぐに、血圧の低下
グループ3は、普段から血圧を測っていたり、病院などではないとわかりづらいかもしれません。
2. アナフィラキシーを引き起こす原因
アナフィラキシーの要因として、多いのは、食べ物、昆虫の毒、薬剤です。その中でも食べ物と昆虫の毒を表にまとめます。
表1. アナフィラキシーの発生機序
食物 | 小児 | 鶏卵、牛乳、小麦、甲殻類、ソバ、ピーナッツ、ナッツ類、ゴマ、大豆、魚、果物など |
---|---|---|
成人 | 小麦、甲殻類、果物、大豆(豆乳)、ピーナッツ、ナッツ類、アニサキス、スパイス、ソバ、魚など | |
昆虫 | 刺咬昆虫(ハチ、蟻など) |
この他にも、医薬品や身体的要因(運動、低温、高温、日光)、薬剤、アルコールなどがアナフィラキシーの原因となる可能性があります。
3. アナフィラキシーの応急処置
アナフィラキシーに対して一般人ができる応急処置です。
ただちに119番通報
アナフィラキシーと思われる症状がみられる場合には、すぐに救急車を呼びましょう。アナフィラキシーでは、気道が狭くなり息ができなくなったり、血圧がひどく低下したり、命に関わることがあります。
心肺蘇生とAED
呼吸をしていない、または、正常な呼吸ではない判断した場合には、すぐに心肺蘇生(胸骨圧迫と人工呼吸)を行い、AEDを使用しましょう。
アドレナリン自己注射薬の補助
過去にアナフィラキシーを発症した人の中には、アドレナリンの自己注射薬「エピペン®」と呼ばれる薬を医師から処方され、持っている人がいます。たとえば、ハチに刺される危険性の高い林業関係者や食物アレルギーのある子どもなどです。傷病者自身が使用できない場合には、エピペン®を使用できるように助けてあげます。
エピペン®を処方されている児童や生徒などが学校現場などで、アナフィラキシーに陥り、命の危機に際しやむをえない場合は、先生や保育士が使用しても医師法違反にはならないとされています。
エピペン®使用後に症状が回復しても、再発のおそれがあるので必ず医師の診断を受けてください。一般人の場合は、傷病者や周りの人が持っていたらその補助をしましょう。
まとめ
応急手当全般にいえますが、早い119番通報が大事です。また、周囲への声掛け。これは傷病者に対してエピペン®の所持を確認したり、周囲の人への協力を促すことが重要だと思います。
参考文献
- World Allergy Organization Guidelines for the Assessment and Management of Anaphylaxis:https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/62/11/62_KJ00008987946/_pdf
- 「アナフィラキシーガイドライン」https://anaphylaxis-guideline.jp/pdf/anaphylaxis_guideline.PDF一般社団法人 日本アレルギー学会(2014年11月1日)
- 「救急蘇生法の指針2015(市民用・解説編)」株式会社 へるす出版(2016年3月31日)
- 「平成29年 人口動態統計 下巻 死亡 第1表-2 死亡数,性・死因(死因基本分類)別(総数、ICD-10コード A~T)」厚生労働省
注意事項
本コンテンツの掲載情報は、医師の診断に代わるものではありません。症状や治療に関しては、必ず主治医の診断を受けてください。