日本国内では、2021年12月より、オートショックAEDの販売が開始されました。オートショックAEDは国内での販売開始に際し、非医療従事者である一般市民が安全かつ安心して使用できるよう、販売に制限がありましたが、2024年6月に、制限を緩和する動きがみられました。
本記事では、オートショックAEDとは何かということに始まり、販売開始から今までの動向についてを解説します。
1. そもそもオートショックAEDとは?
一般的なAEDは、除細動(以下、電気ショックという)を必要と判断した場合に、救助者がショックボタンを押して電気ショックを促します。対して、オートショックAEDは、電気ショックを必要と判断した場合、自動で電気ショックを実施するAEDです。
オートショックAEDでは、自動で電気ショックを行うため、傷病者にタイミングを逸することなく素早く電気ショックを行うことが可能です。電気ショックまでにかかる時間をより短くし、処置が遅れてしまうリスクを低減します。
従来の電気ショックボタンを押すという手順が減るため、救助者にとっても、精神的な負担の軽減につながります。
2. 日本国内でのオートショックAED販売までの流れ
オートショックAEDが販売されるまでに、どのような動きがあったのでしょうか?
オートショックAEDの製造販売が開始されることを踏まえて、まず2021年7月30日に厚生労働省より「ショックボタンを有さない自動体外式除細動器(オートショックAED)使用時の注意点に関する情報提供等の徹底について」が周知されました。
その中で、オートショックAEDの販売にあたり、注意点などがまとめられており、販売店は以下の注意点や必要な情報を提供する必要があります。
オートショックAEDの販売に際し、販売店が伝える必要のある情報提供項目
- オートショックAEDと一般的なAEDの違い
- オートショックAEDロゴマーク(ロゴシール)について
- 設置前のAEDを用いた心肺蘇生の講習の受講について
- 不特定多数の方がアクセスできない場所の設置とすること
- AED使用時のデータ収集についてのご協力のお願い
こうした周知があったもとで、2021年12月からオートショックAEDの販売が日本国内で始まりました。
オートショックAEDの国内販売の時系列
- 2021年7月30日
「ショックボタンを有さない自動体外式除細動器(オートショックAED)使用時の注意点に関する情報提供等の徹底について」が公表(厚生労働省) - 2021年12月
日本国内でのオートショックAED販売開始 - 2024年4月
オートショックAED 使用事例の検証結果の中間報告について(一般財団法人 日本救急医療財団) - 2024年6月
オートショックAED販売先等限定の解除(一般社団法人 電子技術産業協会)
参考
海外ではオートショックAEDが約20年以上前から販売されています。アメリカやヨーロッパなど世界70ヵ国以上で販売されています。
3. オートショックAEDの販売制限について緩和の動き
オートショックAEDが日本国内で販売されるようになり、2024年6月21日に一般社団法人電子情報技術産業協会ヘルスケアインダストリ部会(JEITA)より、「オートショックAED販売先等限定の解除と情報提供に関して」が公表され、限定の解除がありました。
要点としては、オートショックAEDを販売するにあたり、販売店がお伝えしなければならなかった情報提供項目の中の、「設置先」と「講習」について、制限が緩和されました。
この変更については、オートショックAEDの販売に対する実質的な制限の緩和です。今後はよりオートショックAEDの普及が見込まれる可能性があります。
情報提供項目の変更点
- オートショックAEDと一般的なAEDの違い
- オートショックAEDロゴマーク(ロゴシール)について
- 設置前のAEDを用いた心肺蘇生の講習の受講について
- 不特定多数の方がアクセスできない場所の設置とすること
- AED使用時のデータ収集についてのご協力のお願い
黄色下線で引いた2項目が変更され、緩和された内容です。
3-1. オートショックAEDの販売の限定解除されたポイント
今回、変更となった2点について、どのような内容に変更されたか解説します。
販売先・設置先・使用者についての変更点
オートショックAEDの販売開始に伴い、検証期間中は、販売先、設置先、使用者について条件が設けられていました。
- 販売先:一般販売に先立つ限定販売
- 設置先:不特定多数の方が使用できないと想定される設置先
- 使用者:使用訓練を実施した人に限定
ですが、2024年6月の先の報告で、2年余りの期間における使用事例について、安全性に問題のある事象が確認されなかったため、販売先・設置先・使用者について限定が解除されました。
今後は誰でもオートショックAEDを購入し、設置することができるようになりました。
オートショックAED設置前の講習受講についての変更点
オートショックAEDの設置前には、オートショックAEDの使用法の注意点などを含めた講習受講が必要とされていました。
オートショックAEDの使用や注意点を含めた講習の受講も必須ではなくなりましたが、受講することが望ましいと推奨事項として変更されています。
消防署で行われる救命講習でも、「AEDの使い方と心肺蘇生」の中で、オートショックAEDについての内容が含まれる場合もあるようです。また、一般公開されている「救急蘇生法の指針2020」の中でも、改版を通じてオートショックAEDについて記載が追加されました。
3-2. その他のオートショックAED導入時の情報提供項目について
その他の項目については、今までと変更がありませんが、それぞれどのような内容かということについて解説します。
オートショックAEDと一般的なAEDの違いについて
一般的なショックボタンのあるAEDと、オートショックAEDの違いを、販売店はお伝えする必要があります。
オートショックAEDのロゴ表示について
オートショックAEDの本体やキャリングケースには、統一のオートショックロゴマーク表示が明記されています。ロゴの表示により、オートショックAEDの認識を分かりやすいものとしています。
AED使用時の心電図データ収集についての協力について
オートショックAEDと一般的なAEDが使用された事例について、心電図データを活用して検証を行っています。
AEDが適切に作動したか、救助者によるAED使用に支障をきたさなかったかなどの検証をすすめるために、保存された心電図データの収集項目についても変更はありませんでした。
4. まとめ
オートショックAEDは、電気ショックボタンを押す手順が削減され、電気ショックまでの時間が短くなり、より効果的な救命効果も見込めます。しかし、まだまだ馴染みの薄いため、講習や認知が進むことを期待したいです。
オートショックAEDは、販売限定の解除に伴い、より一般向けとして販売されるAEDの意味合いが増しました。そのため、よりオートショックAEDの普及が進むことが予想されますが、有事の際に冷静に対処できるよう、適切な救命知識を身に着けることが大切です。
参考文献・引用元
- ショックボタンを有さない自動体外式除細動器(オートショックAED)使用時の注意点に関する情報提供等の徹底について(2021年7月30日 厚生労働省)
- オートショック AED 使⽤事例の検証体制の整備について(2021年12月28日 一般財団法人日本救急医療祭残 非医療従事者によるAED使用のあり方特別委員会)
- オートショック AED 使⽤事例の検証結果の中間報告について(2024年4月17日 非医療従事者によるAED使用のあり方特別委員会)
- オートショックAED販売先限定の解除と情報提供に関して(2024年6月21日 一般社団法人 電子技術産業協会 ヘルスケアインダストリ部会)
- 救急蘇生法の指針2020(市民用)一般財団法人 に日本救急医療財団
※リンクは2024年7月23日時点の確認内容となります。